老後資金はいくら必要?年金だけでは足りない?金額の目安や備える方法について

老後資金はいくら必要?年金だけでは足りない?金額の目安や備える方法について

「老後に漠然とした不安がある」という場合、まずはもらえる年金と老後に必要な生活費の総額を比べてみると良いでしょう。
必要な資金がわかれば、目標を設定できるので安心感にもつながります。

この記事では、老後にもらえる年金はいくらなのか、老後にかかる生活費はいくらなのか、そして生活費以外に必要な老後資金などの金額の目安や備える方法について解説します。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。 法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

老後に必要な資金はいくら?

総務省の「家計調査年報(家計収支編)2021年」によると、老後に必要な生活費は夫婦ふたりの世帯で月額224,436円、単身世帯は月額132,476円です。[参考1]
上記の生活費は年金を含めた収入の金額にかかわらず、亡くなるまで毎月必要な額になります。

参考1:総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年

老後にもらえる年金の目安は22万円

日本年金機構の「令和4年4月分からの年金額等について」によると、令和4年4月からの年金額は夫婦ふたりで月額219,593円です。[参考2]
これは基礎年金と厚生年金を受給できる場合の金額で、国民年金のみの単身世帯は月額65,075円です。

上記の金額は公的年金のみの金額で、私的年金の受給額は含みません。
また、上記の金額は令和4年度の受給額ですが、今後、老後にもらえる年金が減っていく可能性は高いでしょう。

実際に令和3年度の夫婦ふたりの受給額は220,496円でした。[参考3]
令和3年と比べると令和4年の受給額は微減ですが、これからも減少傾向に進むと考えられています。

老後にもらえる年金について詳しくは「わたしが老後にもらえる年金はいくら?平均は?」でも紹介しています。
また、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」も参考にするとよいでしょう。

参考2:日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について
参考3:日本年金機構「令和3年4月分からの年金額等について

老後の生活資金をシミュレーションしてみよう

ここでは、実際のデータを使いながら、老後の生活資金のシミュレーションをしてみましょう。

厚生労働省「令和3年簡易生命表」では、日本人男性の平均寿命は81.47歳、女性は87.57歳です。[参考4]
ここでは、仮に85歳まで生存していた場合、定年退職する65歳から85歳までの20年間にかかる老後資金を算出しています。

参考4:厚生労働省 「令和3年簡易生命表

単身の場合

単身世帯の場合、総務省統計局の「家計調査年報2021年」によると1ヵ月の消費支出は132,476円です。[参考5]
これを1年に換算すると、1年間の消費支出は132,476円×12ヵ月=1,589,712円、仕事を引退する65歳から85歳までに必要な生活費は1,589,712円×20年=31,794,240円です。

夫婦の場合

総務省統計局の「家計調査年報2021年」によれば、夫婦ふたりの世帯の消費支出は1ヵ月で、224,436円でした。[参考6]
1年に換算すると224,436円×12ヵ月=2,693,232円となり、65歳から85歳までに必要となる老後の生活資金は2,693,232円×20年=53,864,640円です。ただし、もう少しゆとりを持った生活を希望する場合、これよりも多い資金が必要になる点に注意しましょう。

参考5:総務省統計局「家計調査年報2021年Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支
参考6:総務省統計局「家計調査年報2021年Ⅰ家計収支の概況(二人以上の世帯)

老後に必要な金額、結局いくら?

夫婦ふたりの世帯が令和4年度の基礎年金と厚生年金を受給できると仮定すると、20年で、約22万円×12ヵ月×20年=約5,280万円が年金の受取額となります。
老後の生活資金としては53,864,640円(約5,390万円として以下で計算します)が必要となるため、
約5,280万円-約5,390万円で約110万円の不足が生じます。

不足する約110万円ほどは、私的年金や貯蓄によってまかなう必要があります。

生活費以外にも、急にお金がかかるケースも考慮しよう

ここまで、老後に必要な生活費を紹介してきましたが、実際は生活費以外にも入院・手術などでかかる医療費や介護費などさまざまな費用が必要になります。
住宅費は持ち家の場合も固定資産税や修繕費がかかるため、老後に必要な金額に含めて計算しましょう。

しっかり備えておきたいのは、生活費以外で急に必要になるお金です。
医療費や介護費などがこれに当たります。

先に紹介した平均寿命は亡くなる年齢の平均であり、健康でいられる年齢ではありません。
健康でいられる時間が短いと、より多くの医療費・介護費が必要になります。

老後にかかる入院や医療費

厚生労働省の「年齢階級別1人当たり医療費(令和元年度)」によると、60歳以降は医科診療費における入院費の割合が急激に増加します。[参考7]
60歳以降のひとりあたりの年間医療費は、次のとおりです。

<60歳以降の年間医療費>

年齢(歳)医療費計(万円)
60〜64 37.5
65〜6947.2
70〜7460.7
75〜7978.3
80〜8493.5
85〜89106.7
90〜94115.5
95〜99120.7
100〜118.7

年間医療費は、特に70歳を超えると急増し、80歳を超える頃には90万円以上の費用がかかります。
平均寿命である女性87歳の医療費をみてみると、年間平均106.7万円もの費用が必要です。

参考7:厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費(令和元年度)

自分や家族の介護費

また、生命保険文化センターによる調査では、過去3年間で介護サービスの利用経験のある人では、月平均8.3万円の介護費用がかかっていました。
さらに、介護のための住宅改造や介護用ベッドなど、一時的にかかる費用は平均74万円です。[参考8]

介護期間は4〜10年未満と答えた人が最も多く31.5%、次に多かったのは10年以上と答えた人でした。
つまり、10年間夫または妻の介護をした場合、介護にかかる一時金74万円と月々平均8.3万円で74万円+8.3万円×10年×12ヵ月=1,070万円ほどかかる計算になります。

もちろん、介護や入院といった費用がかからない人もいますが、将来のことはわからないため、普段の生活費以外にも医療費や介護費を用意しておく必要があるでしょう。

老後にかかる費用については「老後に不安があるなら必見!将来に向けた備えをFPが解説」でも詳しく紹介しています。

参考8:生命保険文化センター 「生命保険に関する全国実態調査

老後の資金に備える方法

ここまでの内容で、「必要な老後資金を用意できないかも」と不安になってしまうかもしれませんが、今からできる対策もあります。
老後資金を準備するための方法を紹介します。

年金の繰下げ

年金の繰下げ受給とは、現在65歳から受給できる公的年金の受給年齢を遅らせることで、受給額を増額できる制度です。
65歳の誕生日の前日から、繰下げ申請の前月までの年金額の0.7%が増額されます。[参考9]

例えば、67歳まで2年間繰下げした場合、16.8%受給額を増額できます。
ただし、増額率は最大42%までです。

参考9: 日本年金機構「年金の繰下げ受給

定年退職後の再就職・再雇用

老後資金をまかなう方法として、定年退職後に再就職・再雇用で働く方法もあります。
働いて収入を増やせるだけでなく、リタイアまでの期間が伸びた分、年金の繰下げ制度を利用して年金を増額することも可能です。

老後の再就職・再雇用に役立つ資格については「理想の老後を叶えるための、稼げる資格10選!」でご紹介しています。

iDeCoや個人年金保険など私的年金の活用

年金には大きく分けて公的年金と私的年金がありますが、公的年金だけだと前述のとおり、夫婦ふたりの世帯の場合、20年間の生活費は約5,390万円、20年分の年金の受給額は約5,280万円と、老後の生活資金が約110万円足りない計算になります。
突然の入院や介護に備える、余裕ある老後を送りたいのであれば、110万円より多くの資金を用意しておく必要があるでしょう。

そこでこの約110万円以上の足りなくなる老後の生活資金を補うために、iDeCoや個人年金保険などの私的年金を活用するのも1つの方法です。
私的年金には、企業年金(国民年金基金や厚生年金基金、確定拠出年金制度など)と、個人年金(iDecoや個人年金保険など)があります。企業年金は、勤める企業によって加入できる制度が異なることに注意しましょう。

終身保険

医療費や介護費、夫婦どちらかが先に亡くなった場合の負担に備えて終身保険に加入しておくのも、ひとつの方法です。
終身保険とは一生涯保障が続き、加入から保険料の変わらないタイプの保険です。

特約を付けると、がんや急性心筋梗塞、脳卒中などになった場合に、以後の保険料の支払いが不要になるタイプのものもあります。

老後の保険や医療費については「老後生活に備える保険は?不安の少ないセカンドライフにするために」「老後に不安があるなら必見!将来に向けた備えをFPが解説」も参考にしてください。

また、老後資金の準備方法について詳しくは「老後に必要な貯蓄額はいくら?足りない場合はどうすればいい?」「増えている老後のひとり暮らし。考えられる不安と対策とは?」でも紹介しています。
老後に必要な資金は、生活費だけでなく医療費や介護費も考えなくてはならないので、今からできる対策を取ると良いでしょう。

個人年金保険

老後資金に備えたいなら、個人年金保険への加入も検討しましょう。
個人年金保険とは、毎月支払う保険料を保険会社が積み立て、一定の年齢に達したときに積み立てたお金を年金としてもらえる仕組みの保険です。
公的年金だけでは老後資金を準備できない場合、個人年金保険を活用して準備する方法があります。

健康面でも備えておくと安心

厚生労働省の「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況 第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」によると、令和2年の死因トップ3は、1位悪性新生物(腫瘍)、2位心疾患、3位老衰でした。[参考10]
がんで亡くなる人は、老衰で亡くなる人のおよそ3倍です。(全年齢対象)

がんは遺伝的素因が大きいと考えられていますが、国立研究開発法人国立がん研究センターは以下のとおり、遺伝以外にも生活習慣や感染も要因として挙げています。[参考11]

「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」「感染」の6つの要因を取りあげ、「日本人のためのがん予防法」を定めました。

また死因第2位の心疾患の原因となる動脈硬化について、e-ヘルスネットでは「動脈硬化は、喫煙・コレステロール・高血圧・肥満・運動不足などの危険因子が重なることによって発症しやすくなります。」としており、高血圧や肥満、運動不足などの要因が重なって発症しやすくなると考えられています。[参考12]

そのため、日頃からバランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠を取って生活習慣を整えることが重要です。

以下では、老後の健康増進に役立つ具体的な取り組みを4つご紹介します。

参考10:厚生労働省 「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況 第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合
参考11:がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防
参考12:e-ヘルスネット「動脈硬化

1.適度な運動

日頃から適度な運動を行う習慣をつけていると、血流の改善や食欲の増進、腸の活発化など、さまざまな効果を期待できます。[参考13]

ウォーキングや適度な筋トレ、ストレッチといった軽めの運動を毎日の生活に採り入れるようにしましょう。
プールの中で歩いたり、泳いだりすると、水の抵抗によって体に適度な負荷がかかり、より効率よく運動することができます。

2.暴飲暴食を控える

暴飲暴食をすると、胃や腸などの消化器系に大きな負担がかかってしまいます。

食べ過ぎ、飲み過ぎを繰り返すと栄養バランスが崩れたり、肥満リスクが上昇したりする原因にもなりますので、腹八分目の食事を意識するようにしましょう。

3.外出する

定年退職すると、毎日決まった時間に出かけたり、人と会ったりする機会がぐっと減り、生活リズムが乱れやすくなります。

また、一日中自宅で過ごすと孤独感が強くなり、心の健康が損なわれる可能性があります。

特に用事がなくても、毎日決まった時間に近くの公園まで散歩したり、近所のお店を巡ったりして外出する習慣をつけると、生活リズムが整うと同時に、心と身体のリフレッシュにもつながって一石二鳥です。

4.会話を楽しむ

認知症の発症リスクと対人的な接触頻度には密接な関係があることが明らかになっています。[参考14]

子どもが巣立ち、仕事も定年退職を迎えると、どうしても人との対面や会話が減ってしまいがちですが、まずはパートナーや身近な人と積極的に関わり合い、会話を楽しむ意識を持つことが大切です。

具体的には、共通の趣味を作ったり、地域のサークルなどに参加して交流を深めたりすると、日々の生活にほどよい刺激が加わり、脳の衰えの予防につながります。

老後の趣味づくりについて、詳しくは「気になる老後の趣味人気ランキング!それぞれの始め方・費用も解説」でご紹介しています。

参考13:公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「高齢者の身体活動と運動
参考14:厚生労働省「認知症予防・支援マニュアル(改訂版)」p2

セカンドライフを楽しむために保険を見直そう

ここまで老後に必要な費用や老後資金を備える方法についてご紹介してきましたが、老後資金を準備するためには、現在加入している保険も見直しておくとよいでしょう。
保険には、主に「万が一の保障」や「将来に備える」という役割があります。

保険の種類と目的を簡単にまとめた表が以下になりますので、保険の見直しをする際に参考にしてみてください。

保険の種類目的
定期保険一定期間の死亡保障がある
養老保険一定期間死亡があり、保障期間を終えた時点で満期保険金を受け取れる
終身保険死亡保障が一生涯続き、途中解約で解約払戻金を受け取れる
個人年金保険老後資金として積み立てたお金を年金形式で受け取れる

フコク生命では、個人年金保険「みらいプラス」をご用意しています。
みらいプラスは、セカンドライフのための老後資金準備を目的とした個人年金保険です。手続きは簡単で、通常の保険のような医師の診査は必要ありません。

個人年金保険「みらいプラス」の詳細については、下記のページよりご確認ください。
https://www.fukoku-life.co.jp/plan/lineup/insurance/pension/miraiplus/index.html

まとめ

老後にもらえる年金の目安は、夫婦ふたりで月額約22万円です。
毎月の生活費は平均で224,436円必要なため、65歳から85歳までの20年間で約110万円ほど不足すると考えられます。

また、老後に必要なのは生活費だけではありません。
年齢が上がるにつれ、医療費や介護費も必要になります。

そのため、今から老後に不足すると考えられる約110万円や、老後にかかる医療費・介護費の資金を用意しておく必要があるでしょう。

方法としては、年金の繰下げ受給や定年退職後の再就職・再雇用、iDeCo・個人年金保険といった私的年金の活用、終身保険への加入などがあります。
自分に合った方法で、老後に足りなくなる分の資金を準備しましょう。

記事提供元:株式会社ぱむ