妊婦さんでも仕事は続けられる?退職を迷うときに読む記事

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働いている女性にとって、妊娠がわかったときにこのまま仕事を続けるかどうかは大きな選択になります。

内閣府男女共同参画局「共同参画(2019年5月号)」によると、第1子出産前後に女性が就業を継続する割合は53.1%に上っており、第1子出産を機に離職する女性との割合は、ほぼ半々です。正規の職員は62.1%が就業を継続し、パート・派遣などの職員は育児休業制度を利用せず、退職を選ぶ人が多い傾向にあるようです。

子どもがいる女性の再就職はめずらしいことではありませんが、ハードルが高くなる傾向があります。

母子の健康が第一なので無理して続ける必要はありませんが、妊婦さんが仕事を続けるための制度は昔と比べて整っているため、そのまま仕事を続けるか、現在の仕事から離れるかを慎重に検討しましょう。

この記事では、妊婦さんが抱える仕事への悩みや、仕事を継続するときに活用できる制度、妊婦さんにおすすめの仕事について解説します。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

妊婦さんが抱える仕事への悩みは?

働いている女性が妊娠すると、喜びの反面、今後についてさまざまな不安や悩みを抱えるようになります。

具体的にどんな問題に直面するのか、妊婦さんの仕事に関する悩み事を5つ紹介します。

1.妊娠を報告するタイミング

妊娠中は心身ともにさまざまな変化が起こるため、時には仕事中に体調を崩してしまうこともあります。

そのため、妊娠がわかったら仕事を続けるにしても辞めるにしても、職場に妊娠したことを報告しなければなりません。

しかし、妊娠初期は非常にデリケートな時期で、人によっては残念ながら流産してしまうこともあります。

職場に迷惑をかけるリスクを考えると、なるべく早めに報告しなければいけないと焦る一方、「安定期に入るまで周囲の人に妊娠を知られたくない」という気持ちも強く、妊娠を報告するタイミングに悩んでしまう方もいます。

とはいえ、産前産後休業を考えると、人員の調整が必要なため、できるだけ早めに報告することをおすすめします。

2.職場(上司)の理解がない・同僚との人間関係への影響が不安

最近は結婚・妊娠=寿退職という風潮は薄れつつありますが、その一方で、「職場で何かあったときに対処できない」「体調不良などで休みがちになられるのは困る」といった理由で、未だに妊婦さんが働くことを良しとしない職場も残念ながら存在します。

雇用機会均等法」第8条、厚生労働省「育児・介護休業法」第21条2では、妊娠や出産、育児を理由とした解雇や不利益な取り扱いを禁じているため、妊婦さんだからといって解雇を通達される心配はありません。しかし、労働政策研究・研修機構が実施した「『妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査』結果(概要)」によると、妊娠等を理由とする不利益取り扱い等の経験(いわゆるマタハラ)の割合は2割に及んでおり、退職を余儀なくされるケースも多いようです。

マタハラは許されるものではありませんが、出産を控えた女性にとっては退職を選ぶのも悩みどころです。マタハラを受けたら上司や人事などへ相談してみましょう。

もしそのような状況で仕事を続けるのであれば、次に妊娠する同僚がいたら味方になってあげられると良いですね。

3.労働時間への不安

妊婦さんの体は非常にデリケートなので、妊娠前と全く同じように仕事をするのは難しくなります。

それまで一日中バリバリ働いていた女性にとって、今までと同じ労働時間で働き続けてもいいのか、仕事をセーブすべきか、悩ましいところです。

残業が多い職場なら業務量を減らしてもらう、リモートワークへ変更して通勤時間を減らすといった工夫をしてみてはいかがでしょうか。

4. 体調(つわり、食欲がないなど)がしんどい

つわりがひどい、食欲がなくご飯が食べられない、すぐに疲れてしまう、常に倦怠感があるなど、妊娠中の体調は人それぞれです。いつどうなるか事前に想定できず、薬を飲めば治るようなものでもないため、ストレスも溜まります。とにかく体調がしんどく、思っていたよりも仕事ができずに悩むという方もいます。

妊娠中に体調の波があるのは仕方がないことです。妊娠中の体調には個人差があることを理解してもらい、つらいときは休めるように仕事を調節しましょう。

5. 妊婦検診や急な体調不良で仕事を休まねばならない

妊娠中、特に初期段階は体調が変わりやすく、急な体調不良で休んでしまうこともあるでしょう。また、定期的に妊婦検診に通う必要があります。

厚生労働省「妊婦検診Q&A」によると、妊娠初期には4週間に1回、中期には2週間に1回、後期には1週間に1回の頻度が目安とあり、その分、仕事を休む必要がでてきます。

体調が悪いあるいは入院などで急に休んでしまったり、検診で頻繁に休むことになったりで仕事に支障をきたしてしまうのでは、と悩む方も多いでしょう。妊娠中は何があるか分からないので、仕方がないことではあります。特に検診は必ず通う必要があるものなので、事前に休みを申請し、当日は休みましょう。

仕事を続けるときに活用できる制度と注意点

妊婦さんが仕事を続けるときに活用できる制度と、職務中の注意点について説明します。

活用できる制度

働く妊婦さんが活用できる制度は、大きく分けて2つあります。

まず1つ目が「産前産後休業(いわゆる産休)」です。

労働基準」第65条では、使用者は6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者の就業を禁じています。

そのため、妊婦さんは出産予定日の6週間前(双子以上の多胎妊娠の場合は14週間前)から、勤務先に休業を請求することで、産前休業を取得することが可能です。

なお、同法では産後8週間を経過しない女性の就業を禁じているため、出産の翌日から8週間は特に請求しなくても産後休業を取得することができます。

なるべく早めに職場復帰したいと考えている方は、本人が請求し、かつ医師が認めた場合に限り、産後6週間後から就業することが可能です。

ただ、厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」によると、女性の育児休業者割合は81.6%と高く、実際には8週間の産後休業が終了したと同時に育児休業に入るケースが多いようです。

産休や育児休業について、詳しくは「産休の基本。期間や申請方法は?男性も取得できる?」で解説しています。

2つ目は、通院休暇です。

雇用機会均等法」第12条では、「事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない」と定められています

具体的には、「雇用機会均等法施行規則」にて以下のように妊娠週数に応じて必要な時間を確保できるようにすることが義務付けられています。

妊娠週数期間
妊娠23週まで4週に1回
妊娠24~35週まで2週に1回
妊娠36週~出産まで1週に1回

なお、通院休暇が有給か無給かは企業が自由に設定できますので、休暇申請を行う際は、あらかじめ給与の扱いについて人事総務や労務部に尋ねるか、就業規則を確認しておきましょう。

妊婦さんが仕事をするときの注意点

妊婦さんが仕事を続けるときは、なるべく体に負担がかからないよう配慮しなければなりません。

例えば、ラッシュ時間帯の通勤や、重いものを持つなどの肉体労働は控えた方が無難です。

もともと「労働基準法」では、妊婦さんが重量物を取り扱う業務や、有害ガスを発散する場所における業務などの有害な業務に就かせることを禁じていますが、さらに「雇用機会均等法」では、女性労働者が保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために、勤務時間の変更や勤務の軽減など、必要な措置を講じることを義務付けています。

医師等から指導を受けた場合は、時差出勤したり、体に負担のかからない業務に変えてもらったりすることも可能ですので、職場に相談してみましょう。

上司や同僚にはどう接したら良い?

妊娠がわかったら、上司には一番に、かつ早めに今後の仕事内容や休暇について相談をしましょう。同僚にいつ報告するのかや、その方法も上司と相談して決めておくとより良いです。

不妊治療をしている人、子どもを授かれなかった人や流産経験がある人などにとってはデリケートな話題です。これらの経験は内緒にしている人が多いため、配慮を忘れないようにしましょう。

妊娠からの体調不良で退職を考えるときは…?

妊婦さんの一番の目的は、「母子ともに健康な状態で出産すること」です。

これまで積み上げてきたキャリアは大切ですが、無理をして体調を崩すと、母体だけでなく、お腹の子にまで影響を及ぼすおそれがあります。

また、つわりが軽くて何とも無い人もいれば、出産直前まで重度のつわりが続いたり、切迫流産で安静にしていなければならなかったり、妊娠中の体調には個人差があるものです。

妊娠中の体調不良がつらくても、出産後も働き続けたいのであれば、上司や同僚に相談してみましょう。

無理せずに、まずは休職してみるという方法もあります。

今後のキャリア・ライフプランを考えてみよう

今の仕事を続けるのと、退職とどちらが良いか考えてみることも大切です。

妊娠した場合、現在の職場ではどんな悩み・問題が発生するのかをしっかり考え、今の職場で仕事を続けていくか、転職または休職するか、慎重に検討しましょう。

求職活動において、正社員と非正規社員とを比較すると、正社員の方が希望通りの就業形態で再就職できた人の割合が大きいです。つまり、一度退職を選ぶと、正社員での勤務が難しくなると言えます。また、子どもがいると残業や休日出勤がしにくいため、業種によっては再就職自体が難しくなるかもしれません。

再就職を選んだ場合、時短勤務の適用条件を満たさないために、時短勤務を選択しにくくなることもありえます。

また、自治体によりますが、保育園への入園申請は「求職中」だと点数が低く、入園が不利になる傾向があります。

昔と比べると再就職しやすくなっているとはいえ、パートや派遣社員など非正規を選ぶ人が多いのが現実です。生涯賃金の差が出てくる可能性があります。

産後も正社員として働き続けたいのであれば、一般的にはキャリアを継続した方が有利だという事実は知っておくと良いでしょう。

もし仕事を継続する場合は、妊娠中に利用できる制度をフル活用し、無理なく働ける方法を模索しましょう。

育児と仕事の両立に自信がないのなら、「子育てと仕事を両立させたい!現役ワーママに聞いた 2つのテクニック」を参考にしてみてください。

やむを得ず退職を選ぶなら…

ここでは、やむを得ず退職を選ぶときの注意点を3つ紹介します。

1.出産手当金は条件を満たさないと受け取れない

出産手当金とは、会社員や公務員など健康保険に加入している人が産休中の生活費を補填するために受け取れるお金です。

全国健康保険協会「出産手当金について」によると、出産前に退職するとしても、以下の3つの条件を満たせば受け取ることができます。

・退職日までに継続して1年以上、健康保険に加入し続けていること
・退職日が出産手当金の受給期間(産前42日〜産後56日)内であること
・退職日当日に出勤しないこと

出産手当金を受け取るためには退職日の調整が必要なので、あらかじめ上司に相談しておくことをおすすめします。

2.育児休業給付金が受け取れない

育児休業給付金とは、育児休暇中の生活費を補填するために受け取れるお金です。出産後も同じ職場で仕事を続けることが給付金を受け取るための条件であり、出産前に退職してしまうと受け取ることができません。

育児休業給付金について、詳しくは「育児休業を取りたい!給付金額や期間、申請方法をまるっと解説」で解説していますので、気になる方はあわせて確認してみてください。

3.失業手当は求職活動を始めるまで受け取れない

失業手当とは、失業後、求職中の生活費を補填するために受け取れるお金です。

受け取るためには就職の意思と求職活動の実績が必要であり、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」には、「妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき」は受け取ることができないと明記されています。

ただし出産後、退職から3年以内に求職活動を始めると、失業手当を受け取れる場合もあります。ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」によると、失業手当を受け取れる期間は本来、退職した日の翌日から1年間ですが、「本人の病気やケガ、妊娠、出産・育児、親族等の看護・介護等のために退職後引き続き30日以上職業に就くことができない状態の場合、受給期間の満了日を延長することができます。これによって、本来の受給期間(1年)に職業に就くことができない状態の日数(最大3年間)を延長させることが可能となります。」とあります。

退職後30日経過するとこの延長手続きができるようになりますので、出産後にまた就職する可能性がある方は、忘れずにハローワークに申請しておきましょう。

転職の参考に!妊婦さんにおすすめの仕事

「今の仕事を続けるのは難しいけれど、家計のためにも仕事はしたい」という方は、思い切って転職するのもひとつの方法です。

妊娠していると転職は難しいと思われがちですが、中には健康状態に問題がなければ、妊娠中でもOKという求人も存在します。

ただし、育児休業は「週2日以上の勤務、かつ1年以上同じ事業主の下で働き、出産後も1年は引き続き雇用される見込み」でなければ取得できないことに注意しましょう。

ただ、先でも説明した通り、妊婦さんが最も重視すべきことは、母子ともに健康な状態で出産することです。

新しいことへの挑戦は大なり小なり心身に負担をかけます。転職する場合も、「激しく体を動かさないこと」「無理なくストレスフリーで働けること」などを重視して慎重に転職先を探しましょう。

主婦の再就職に活用できるサービスは「再就職したい主婦の方へ。気を付けるポイントとおすすめサービス」にまとめていますので、参考にしてみてください。

この機会に勉強をして再就職に有利な資格を取るのも良いでしょう。主婦の方におすすめの資格は「主婦におすすめの資格は?おすすめ6選を紹介」で紹介していますので、こちらもあわせて確認してみてください。

体調に合わせて無理なく働きたいのなら、派遣会社に登録して単発のアルバイトをしたり、在宅ワークしたりという方法もあります。

以下では、妊婦さんにおすすめの仕事をまとめました。

在宅ワーク 

通勤が無い在宅ワークは、体調が安定しない妊婦さんにおすすめです。

パソコンが苦手でも、内職や家でできる軽作業の募集もあります。

気になる方は「【未経験でもできる!】主婦(主夫)におすすめの在宅ワークは?」を参考にしてみてください。

座りながらの事務・パソコンを使った仕事

書類整理や帳簿付けなどの事務作業は体に負担がかかりにくいでしょう。パソコンを持っているのなら、Webページの更新やネットショップの出品といった仕事もおすすめです。

起業する

やりたいことがあるのなら、起業しても良いでしょう。起業は自分で何もかもをこなさねばならないという難しさがある反面、自分のペースで働けるのがメリットです。開業届を出すだけでスタートできる個人事業主がおすすめです。

主婦が起業をするメリット・デメリットは「主婦が起業するって実際アリ?始める前に知っておきたい4つのこと」で解説していますので、あわせて確認してみてください。

妊娠中に退職し、起業をすると、出産手当金(※)や育児休業給付金がもらえなくなります。自分のペースで働けるということは、休みなく働き続けられるという意味でもあります。

体へ負担をかけないように気を付けましょう。

※前述したように、退職のタイミングによっては出産手当金を受け取れる場合があります。体調や起業の目的に合わせて、どのタイミングで退職・起業するのが良いのかを決めましょう。

まとめ

現在は、働く女性の半数が妊娠しても仕事を続けています。

ただ、妊娠中は体の中でさまざまな変化が起こりますので、心身に負担をかける働き方を続けるのはNGです。

職場の理解が得られない、時短勤務が難しいなどの理由で、現在の仕事を続けるのが難しいと感じた場合は、思い切って転職するのもひとつの方法です。

一方、職場の理解を得られる場合は、産前産後休業や通院休暇などの制度を利用したり、軽易な業務に移してもらったりして、心身に負担のかからない状態で働く方法を模索しましょう。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

記事提供元:株式会社ぱむ