「先取り貯蓄」は、計画的にお金を貯めるための方法の一つです。「余った分を貯めよう」と思っても、つい使い切ってしまうのが現実ではないでしょうか。この記事では、意志の強さに頼らずにお金が貯まる仕組みや、具体的な自動化の方法、無理なく続けるコツまでわかりやすく解説します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
「先取り貯蓄」とは
給料が入ったらまず貯蓄分を取り分ける。たったこれだけの順番の違いが、貯まる人と貯まらない人の差を生んでいます。ここでは先取り貯蓄の基本的な考え方を押さえましょう。
1. 貯めるお金を先に除いて生活する方法
「先取り貯蓄」とは、収入から先に貯蓄分を取り分け、残ったお金で生活するという方法です。
「余ったら貯めよう」という方法ではつい使いすぎてしまいますが、最初に貯蓄分を「ないもの」として分けることで、残額の範囲で自然にやりくりする習慣が身につきます。つまり、「収入-貯蓄=使えるお金」という仕組みに変えるのです。
そのため先取り貯蓄は、意志の強さに関係なく、だれでも毎月無理せずに確実に資産を増やせる再現性の高い貯蓄術だといえます。
2. 定期預金や貯蓄性保険、iDeCo・NISAも「先取り貯蓄」?
先取り貯蓄は、あくまで効率的にお金を貯めるための「手法(仕組み)」のことです。定期預金や貯蓄性保険、NISA、iDeCoなどは、その手法を実践するために選ぶ「道具(商品)」にあたります。まずは「貯めるお金を先によけておく」という仕組みを作り、そこにどの道具を組み合わせるかを考えていきましょう。
それぞれ特徴や性質の違いを把握したうえで組み合わせていきましょう。定期預金は安全性が高いものの、貯蓄性保険や投資と比べると大きく増やすことは難しいでしょう。貯蓄性保険は定期預金より大きく増やせる可能性は高く、投資より元本割れのリスクは低いのですが、中途解約をすると払い込んだ保険料より払戻金が下がる可能性があります。NISAやiDeCoなどの投資商品はお金が増える可能性がある反面、元本割れのリスクもともないます。また、iDeCoは原則60歳まで引き出せないといった制約があるため、通常の預貯金とは性質が異なる点にも注意しましょう。
先取り貯蓄に使う「道具」の比較
| 制度・商品 | 元本割れの可能性 | メリット | お金の引き出しやすさ |
| 定期預金 | 原則なし※ | 普通預金より高い金利が設定されることがあり、計画的に貯めやすい | ○ 期間を数ヵ月~年単位で設定できる。 満期前でも中途解約できるが、適用金利が低くなる場合があることに注意。 |
| 貯蓄性保険 | あり | 保障を確保しながら、将来に向けた資金準備ができる | △ 定期預金と比べると、長期間の積立を前提とした商品が多い。途中で解約できるが、払込保険料を下回る場合がある。 |
| iDeCo | 商品による | 掛金が所得控除の対象となり、運用益も非課税 | × 原則60歳まで引き出せない。 |
| NISA | あり | 投資による利益が非課税 | △ 必要なときに売却して現金化できるが、売却のタイミングによっては元本割れする可能性がある。 |
※預金保険制度の対象となる預金には保護範囲があります。
手法としての「先取り」を軸に、それぞれの道具の特徴を正しく理解し、自分の目的に合ったものを選んで組み合わせることが大切です。
先取り貯蓄を始めるためのステップ

ここからは、先取り貯蓄を無理なく続けられる仕組みをどう作れば良いか、5つのステップに分けて順番に紹介していきます。
1. 貯蓄用の口座を作る
先取り貯蓄の第一歩は、普段の生活費を出し入れする口座とは別に「貯蓄専用の口座」を用意することです。
生活費と同じ口座にお金が入ったままだと、残高を見てつい「まだ余裕がある」と錯覚し、無意識のうちに使いすぎてしまうためです。お財布のなかに仕切りを作るのと同じで、貯蓄専用の場所を確保することで、そのお金を最初から「ないもの」として扱えるようになります。口座開設は無料でできる銀行がほとんどなので、まずは一つ専用口座を用意するところから始めてみましょう。
2. 毎月貯めるお金の目安を計算する
毎月いくら貯めるかは、まずは手取り収入の1〜3割程度を目標にしてみるのがおすすめです。
ここで気をつけたいのが、額面ではなく税金などが引かれたあとの「手取り額」で計算すること。額面を基準に考えてしまうと、思ったより使えるお金が少なくなって、生活にゆとりがなくなってしまいます。
例えば手取りが20万円なら、毎月2万円~6万円が貯蓄額の目標になります。もちろん、この数字はあくまで目安。家賃や食費は人それぞれ違うので、まずは「これくらいかな?」とざっくり計算してみて、実際の家計と相談しながらあなたにぴったりの金額に調整していきましょう。
3. 月々の支出から見直せそうな費目を探す
目安の金額を毎月確実に貯めていくためには、現在の支出を把握して無理なく削れる部分を考えましょう。家計簿の項目には大きく分けて「固定費」と「変動費」があり、それぞれの主な費目は次のとおりです。
| 分類 | 項目 | 内容 |
| 固定費 | 住居費 | 家賃、住宅ローン、駐車場代など |
| 水道光熱費 | 水道代、電気代、ガス代など | |
| 通信費 | スマートフォン代、インターネット代など | |
| 保険料 | 生命保険料、医療保険料、個人年金保険料など | |
| サブスクリプションサービス代 | 動画配信サービス代など | |
| 変動費 | 食費 | 食材の買い出し費、外食費、お酒代など |
| 日用品費 | トイレットペーパー、シャンプーなど暮らしに欠かせない消耗品の購入費用 | |
| 被服・美容代 | 洋服、化粧品などの購入費 | |
| 交際費 | デート代、飲み会代など | |
| 趣味費 | 書籍代、映画チケット代など | |
| 交通費 | 電車・バス代、ガソリン代など | |
| 教育費 | 子どもの学費、教材費など | |
| 医療費 | 通院代、入院代、医薬品購入代など | |
| 特別費 | 旅行、冠婚葬祭、季節のイベントなど単発で発生する費用 | |
| 雑費 | 上記のどれにも当てはまらない支出 |
こうした費目をざっと書き出してみると、見直しの余地がある項目が見えてきます。実は、一度見直すと効果が続きやすい固定費から手をつけると、貯蓄に回せるお金を増やしやすくなります。なかでもスマートフォンの通信費やサブスクリプション契約は、プランの変更や不要なサービスの解約だけで月に数千円浮くケースも珍しくないため、一度支出の見直しをするのがおすすめです。
4. 毎月貯めていく金額を決定する
理想の貯蓄の比率と現実の手取り収入を照らし合わせ、最終的に「これなら毎月無理なく続けられそうだ」と納得できる金額を確定させましょう。
生活が苦しくなる金額では途中で挫折してしまうため、実際の収支を見ながら現実的なラインで決めることが大切です。最初はやや控えめに設定し、数ヵ月試して余裕があれば金額を上げていく段階的な進め方でも問題ありません。金額の大きさよりも「毎月途切れずに続けられるか」が習慣化の大きなカギとなります。
5. 給料日に貯蓄用口座にお金を移動する
金額が決まったら、給料日当日に貯蓄用口座へお金を移して先取り貯蓄をスタートさせましょう。
給料日をそのまま移動日にすることで、毎月同じリズムが生まれ、迷ったり忘れたりしにくくなります。後回しにすると、つい気が緩んで予定外の出費をしてしまうリスクが高まります。まずは直近の給料日を「初回の移動日」と決め、口座間でお金を動かしてみてください。最初の一歩を踏み出せば手順の簡単さがわかり、翌月以降も自然と続けやすくなります。
先取り貯蓄はどんな項目で管理するとよい?
先取り貯蓄の項目は、ただ漠然と貯めるのではなく、「将来何に使うか」という目的(項目)に合わせて分けて管理するのがおすすめです。
資産形成や家計管理では、手元のお金を大きく4つの目的に分けて整理することが基本とされています。具体的には、「日常生活費」のほか、先取りの対象となる「緊急用の備え」「数年以内のイベント資金」「将来への備え」の4つです。
お金を準備する際は、まず日常生活費を確保し、そのうえで病気や失業などに備える生活防衛資金を準備します。その後、住宅購入や教育費など数年以内に使う予定のあるお金を確保し、最後に老後資金など長期的な資産形成に取り組むのが基本です。
先取りする際は、この4つの大枠をベースにしながら、使い道がはっきりしているお金には「車検代」や「進学費用」など目的をそのまま項目名にした専用枠を作りましょう。毎月の塾代などは日々の「教育費」でやりくりし、将来の大きな出費は別枠でキープするのがポイントです。また、旅行や冠婚葬祭などの「特別費」もあらかじめ独立させて先取りしておけば、急な出費で毎月の生活費が崩れるのを防げます。
【目的別】先取り貯蓄の項目(例)
| 分類 | 具体的な貯蓄項目名 | 目的・内容 |
| 日常生活費 | • 当月の生活費 | 食費、日用品費、家賃や水道光熱費など、日々の暮らしや定期的な支払いを予算内で確実にまかなうためのお金 |
| • 引き落とし用資金 | ||
| • 生活費予備金 | ||
| 緊急用の備え | • 生活防衛資金 | 万一の病気やケガ、失業などに備える「守りのお金」 |
| 数年以内のイベント資金 | • 住宅ローン頭金 | 数年以内に使うことが決まっているお金 |
| • 車検代 | ||
| • 直近の進学費用など | ||
| • 特別費 | 旅行、冠婚葬祭、イベントなど年間の大きな出費 | |
| 将来への備え | • 老後資金 | 10年先など、すぐには使わない将来のための資金 |
| • 遠い将来の進学費用など |
このように、お金の「行き先」をはじめに決めておくことで、それぞれの目標に向かって迷わず効率よくお金を準備できるようになります。
先取り貯蓄を自動化するには
先取り貯蓄を習慣にしたいなら、仕組みそのものを自動化してしまうのが近道です。こちらでは、一度設定するだけで毎月のお金の移動を任せられる代表的な制度やサービスを紹介します。
1. 財形貯蓄制度を利用する
勤務先に財形貯蓄制度があれば、一番手軽に先取り貯蓄を自動化できます。
給与から自動で天引きされて積み立てられるため、つい使い込んでしまうという心配がありません。一般財形貯蓄は使い道が自由で、給与やボーナスから定期的に積み立てられます。
手元に届く前に確実にお金が貯まっていくので、意志の力に頼らずラクに貯蓄を続けたい方におすすめの方法です。
2. 銀行で自動でお金を移すサービスを利用する
銀行で自動でお金を移すサービスを使えば、楽に貯蓄用口座への送金ができます。
定期預金で貯蓄をするなら、まずは定期預金用(ゆうちょ銀行では定期貯金)の口座を開設し、毎月の振替日を設定しましょう。給料日直後など指定した日に、普通預金(ゆうちょ銀行では通常貯金)から定期預金口座へ毎月自動でお金を移してくれる仕組みです。ただし、定期預金(ゆうちょ銀行の定期貯金も同様)は途中で引き出すと「中途解約」となり、金利が下がってしまう点に注意しましょう。
NISA、iDeCo用でお金を貯めるなら毎月一定額を専用の管理口座へ自動で移しておけば、先取りで資金を確保できます。貯蓄性保険の保険料を確保しておきたい場合も、支払いに使う口座へあらかじめ資金を移しておくとよいでしょう。
せっかく貯めたお金を取り崩さずに済むように、普段使う普通預金にも生活費+αの余裕を残しておくと、無理なく安心して先取り貯蓄を続けられます。
先取り貯蓄を継続するコツ・注意点
先取り貯蓄は、「余ったら貯める」という方法と違い、意志の力に頼らず自動でお金が貯まっていくのが一番の良いところです。ただ、無理なく長く続けるためにはちょっとしたコツがあります。
一番気をつけたいのは、目標金額を高くしすぎてしまうことです。最初から非現実的な金額を設定すると、日々の暮らしが窮屈になり挫折してしまいます。何よりも目の前の大切な生活がいちばん優先ですから、まずは無理のない小さな金額から始めましょう。
また、口座開設や自動化の設定には最初だけ少し手間暇がかかります。一気にやろうとせず、「今週は口座を開く」など、週末にひとつずつステップを踏んで進めるのが、挫折を防ぐポイントです。この最初の手間を乗り越えて、自動でお金が貯まる頼もしい仕組みを完成させましょう。
投資を始めるのは生活防衛資金を貯めてからがおすすめ

先取り貯蓄でNISAやiDeCoを活用した投資には、手元の現金が減るリスクがあります。もし十分な蓄えがないまま急な病気や失業などが起きた場合、たとえ市場が暴落している状態でも、生活費を捻出するために、投資信託や株を手放さざるを得なくなります。
そのため、まずは万一のトラブルに備える「生活防衛資金」を現金(預金)で確保しましょう。この「守りのお金」という強固な土台を築いてから、将来のための投資ステップへ進むことが大切です。
生活防衛資金については「生活防衛資金とは?金額の目安や貯め方のポイントを紹介」でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
まとめ
先取り貯蓄は、収入から貯蓄分を先に取り分けることで、意志の力に頼らず確実にお金が貯まる仕組みです。まずは「守る預貯金」と「増やす投資」の違いを正しく理解し、毎月の目標額を計算することから始めましょう。月々の支出から見直せそうな費目を探し、無理のない金額を決定していくのが大切なステップです。
先取り貯蓄額が決まったら、ただ漠然と貯めるのではなく、お金を「緊急用の備え」や「将来への蓄え」など目的別の項目に分けて整理して管理しましょう。その上で、財形貯蓄や自動積立を活用し、今の暮らしを犠牲にしない金額でスタートすれば長く継続できます。現金(預金)の土台が整ったら、NISAやiDeCoなどの投資商品へステップアップしていくのが安全な道です。
金額の大きさより「途切れずに続けること」が何より大切です。まずは次の給料日から、未来の自分への仕送りを始めてみませんか。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
是枝花名子(これえだ かなこ)
FPライター。大学卒業後、大手生命保険会社にて法人営業を担当。住宅ローンの繰り上げ返済、子どもの教育資金や老後資金作りを極めるため、改めてFP技能士を取得。専門知識と主婦目線を活かした記事執筆が好評を呼び、現在は主にメガバンク、大手不動産サイト等にて保険・不動産・翻訳ライターとして活動中。2級FP技能士、年金アドバイザー3級
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ
~47Life編集部からのコメント~
「今月こそ」と思っていたのに、気づけばお金が残っていない……。そんな経験がある方は、貯める順番を変えてみるのもひとつの方法です。金額よりも大切なのは、無理なく続けること。自動化も上手に取り入れて、頑張りすぎない貯蓄を始めてみましょう。

