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アーリーリタイア(早期退職)に興味を持ちながらも「自分の収入で実現できるのか」と不安を感じている人は多いでしょう。
アーリーリタイアには自由な時間の獲得やストレスからの解放といった魅力がある一方で、年金受給額の減額や社会保険料の負担増など、事前に把握しておきたいリスクも存在します。
この記事では、アーリーリタイアのメリット・デメリットから資金計画の立て方まで幅広く解説します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
アーリーリタイア(早期退職)とは
アーリーリタイアとは、定年を迎える前に仕事を辞め、自分らしい自由な時間を手に入れる生き方で「早期リタイア」とも呼ばれています。現役のうちに準備した貯蓄や資産をもとに、仕事中心の毎日から離れて生活するライフプランを指す言葉です。
仕事に縛られず、趣味や学び直しなど本当にやりたかったことに時間を使える点に魅力を感じ、関心を寄せる方が増えています。ただし、思い描いた生活を実現するためには、将来を見据えた入念な資金計画を立てておく必要があるでしょう。
比較・混同される代表的な言葉
アーリーリタイアには、意味が似ていて混同されやすい言葉があります。ここでは代表的な3つの言葉を取り上げ、その違いを説明します。
1.FIRE
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の略で、「経済的自立と早期リタイア」と訳されます。資産運用による収入で生活費をまかない、働かなくても暮らせる状態を目指すライフスタイルを意味します。
アーリーリタイアが「いつ仕事を辞めるか」というタイミングに着目した言葉であるのに対し、FIREは「辞めた後、どうやって生活していくか」という方法論を指す言葉です。
つまり、FIREはアーリーリタイアを実現するための具体的な手段のひとつといえます。
2.セミリタイア
セミリタイアは、完全に仕事を辞めるのではなく、労働時間を減らして働き続ける生活スタイルのことをいいます。
アーリーリタイアは貯蓄や資産収入で生活するのに対し、セミリタイアでは生活費の一部を労働でまかないます。完全に仕事から離れるアーリーリタイアと比べると、少ない資金でも実現しやすい点が特徴です。
3.定年退職
定年退職とは、会社が就業規則で定めた年齢に達したときに退職する制度のことです。一方、アーリーリタイアは、自分の意思と計画によって退職時期を決めます。
退職のタイミングが「会社のルールで決まるか」「自分で決めるか」が、両者の大きな違いといえるでしょう。
アーリーリタイア(早期退職)のメリット
アーリーリタイアを実現すると、時間や心に大きなゆとりが生まれます。どのようなメリットがあるのか、順に見ていきましょう。
1.自由な時間ができる

アーリーリタイアの最大の魅力は、24時間すべてを自分の意思でコントロールできる点です。会社の勤務時間や通勤といった拘束から解放され、自分のペースで一日を過ごせるようになります。
例えば、旅行は混雑を避けて平日に出かけたり、趣味や自己投資に好きなだけ時間を使ったりと、時間の使い方の選択肢が大きく広がります。
2.ストレスから解放される
仕事にまつわるさまざまなストレスから解放される点も、アーリーリタイアの大きなメリットです。
例えば、毎朝の満員電車での通勤や職場の人間関係、成果を求められるプレッシャーといったストレス源そのものがなくなります。その結果、心に余裕が生まれ、心身ともにすこやかな暮らしを取り戻せるでしょう。
3.大切な人たちと時間を共有できる
アーリーリタイアをすると、家族や友人など大切な人との時間を最優先にできます。仕事の都合で調整が難しかった平日の学校行事に参加したり、パートナーと長期の旅行に出かけたりすることも可能です。
また、親の介護が必要になった際にも、時間に縛られずに寄り添えます。これまで仕事のために犠牲にしがちだった「人との繋がり」を、自分のペースでじっくり深めていける点は、大きな喜びとなるでしょう。
4.新しいことに挑戦できる
「生活のために稼ぐ」という制約から解放され、新しい挑戦に時間とエネルギーを注げるようになります。これまで時間がなくて諦めていた趣味に没頭したり、興味のあった分野を学び直したりすることも可能です。
また、収益を第一に考えず、ボランティア活動や地域貢献、自分のペースでスモールビジネスを始めるなど、純粋に「やりたい」と感じる活動に打ち込めます。心に余裕が生まれ、日々の暮らしそのものを楽しめるようになるでしょう。
アーリーリタイア(早期退職)のデメリット
魅力的なアーリーリタイアですが、決断する前に知っておきたいデメリットもあります。どのような点に注意すべきか、ここで確認しておきましょう。
1.税金・社会保険料の負担が重くなる
アーリーリタイアをすると、金銭的な負担が大きく感じられる可能性があります。
会社員の間は健康保険料や厚生年金保険料を会社と折半していますが、退職後は国民健康保険や国民年金に切り替わり、保険料は原則として全額自己負担となるためです。
また、見落としがちなのが住民税の支払いです。住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職して収入がなくなった翌年にも、前年分の税金を納める必要があります。
収入がないなかで支払いが発生するため、あらかじめ備えておかないと資金繰りに影響が出る恐れがあります。
2.将来もらえる年金額が減少する
早期退職を選ぶと、将来受け取れる年金額は、定年まで働いた場合より少なくなります。
日本の公的年金は、国民年金に厚生年金が上乗せされる2階建て構造になっています。このうち厚生年金の受給額は、加入期間の長さと現役時代の収入に応じて決定される仕組みです。
そのため、退職が早いほど厚生年金の加入期間は短くなり、本来積み上げられるはずだった年金額も減ってしまいます。
年金受給額についてより詳しく知りたい方は「老後にもらえる年金はいくら?年収別・職業別で見る年金受給額の目安を紹介」もご覧ください。
3.ローンやカードの審査が通りにくくなる
アーリーリタイアをすると、ローンやクレジットカードの審査が通りにくくなる可能性があります。なぜなら、金融機関は申込者の返済能力を判断する際に「安定した収入」を重視するためです。
会社員という社会的信用(属性)がなくなると、収入が不安定だと見なされやすくなります。その結果、住宅ローンを組んだり、新しいクレジットカードを作成したり、賃貸物件を契約したりする際に、思いがけず審査の壁に直面することもあるでしょう。
4.社会との繋がりが薄れ、孤独を感じやすい
アーリーリタイアによって社会との接点が減り、孤独を感じやすくなるという精神的な側面もあります。これは「リタイア・ブルー」とも呼ばれ、退職を機に気持ちが落ち込んでしまう状態を指します。
会社というコミュニティを離れると、同僚との会話や仕事で担っていた役割がなくなり、自分の居場所を見失ったように感じてしまう人もいるでしょう。毎日が自由になる反面、人との繋がりが薄れ、かえって孤立感が深まる可能性も考えられます。
疎外感についてより詳しく知りたい方は「疎外感とは?言葉の意味や感じやすい人の特徴、対処法について紹介」もご覧ください。
5.インフレや急な出費で資金が底をつく恐れがある
インフレや予期せぬ出費によって、資金計画が狂う恐れがある点にも注意が必要です。物価が上昇すると現金の価値は目減りし、生活費が当初の想定を上回る可能性があります。
さらに、自分や家族の病気、親の介護といった想定外の大きな出費が発生すれば、リタイアプランを根本から揺るがしかねません。時間をかけて準備した計画であっても、こうした突発的な出来事には弱い側面があります。
アーリーリタイア(早期退職)で必要となる資金の目安
アーリーリタイアに必要な資金は、「何歳まで生きるか」を基準に逆算するとイメージしやすくなります。リタイア後にかかる生活費の総額から、すでにある資産や将来受け取るお金を差し引いて見積もります。
計算の考え方は次のとおりです。
必要な貯蓄額 =(リタイア後の総支出※)-(退職金や保有資産など)
※リタイア後の総支出は「年金受給前」と「受給後」に分けて計算する
例えば、50歳でリタイアし、90歳まで生きるケースで見てみましょう。今回は、以下の条件を前提として計算します。
- 生活費:月約25万円
- 年金:月約15万円(65歳から)
- 退職金:約1,000万円
計算の手順は以下のとおりです。
- 年金受給前の支出:年金を受け取る65歳までの15年間は収入がないため、生活費の全額を貯蓄からまかなう必要があります。25万円×12ヵ月×15年で、約4,500万円です。
- 年金受給後の不足分:65歳以降は年金収入がありますが、生活費25万円に対して毎月10万円不足します。この不足分を90歳までの25年間で計算すると、10万円×12ヵ月×25年で約3,000万円となります。
- リタイア後に自分で準備する生活費:2つの期間を合計すると、年金以外に必要となる生活費は約7,500万円です。
- 必要な資金額:7,500万円から退職金の1,000万円を差し引くと、このモデルケースではリタイア時点で約6,500万円の準備が必要になります。
ただし、この計算はあくまで目安です。資産運用による増減やインフレによる物価上昇は考慮していないため、実際の必要額とは差が生じる可能性があります。
また、実際は万一のけがや病気、要介護状態への備えに加え、子どもがいる場合は大学進学などの教育費も見込んでおく必要があります。
将来に向けた備えを考える際には、将来かかるお金をシミュレーションできるフコク生命の「ライフコンパス」が役立ちます。
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アーリーリタイア(早期退職)する際のポイントや注意点
アーリーリタイアは魅力的な選択肢ですが、計画が甘いと後悔につながる可能性があります。ここでは、退職を決断する前に必ず確認しておきたいポイントや注意点を解説します。
1.資金は足りているかシミュレーションをしておく

アーリーリタイアを計画する際は、退職後の資金が本当に足りるのかを具体的に試算しておきましょう。現在の貯蓄額だけでなく、リタイア後の生活費や平均寿命などを考慮し、資金が底をつかないかをシミュレーションします。
例えば「毎月25万円で生活し、95歳まで生きる」といった具体的な条件を設定することで、漠然とした不安を和らげ、計画の現実味を確かめられます。
2.「退職金」と「年金」の受取額の変化を確認しておく
退職金と年金受給額は、想定していた金額よりも少なくなる可能性を念頭に置いておきましょう。自己都合による早期退職は、会社の規定によって退職金が減額される場合があるためです。
また、厚生年金の加入期間が短くなる分、将来受け取れる年金額も少なくなります。「これくらいもらえるはず」という思い込みは避け、会社の規定や「ねんきん定期便」で正確な金額を確認しておきましょう。
3.退職初年度にかかる「社会保険料」や「住民税」を準備しておく
退職した年や翌年は、社会保険料や住民税の支払いに注意が必要です。これまで会社が半額を負担していた健康保険料は、退職後は国民健康保険への切り替えなどにより、原則として全額自己負担となります。また、年金は厚生年金から国民年金に切り替わり、保険料を自分で納めなければなりません。
さらに、住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職して収入が減った後でも高額な請求が届くことになります。これらの支払いは、あらかじめ初年度の支出として確保しておきましょう。
4.「インフレ」や「予期せぬ出費」に備えて予備費を確保しておく
作成した資金計画は、あくまで現時点での試算であり、将来の物価上昇までは考慮されていません。インフレが起こればお金の価値は目減りし、生活費は想定よりも膨らんでしまいます。
また、親の介護や自身の病気、家の修繕といった「計画表にはない突発的な出費」が発生する可能性もあります。ギリギリの資金計画ではなく、こうした事態に備えるための予備費も忘れずに確保しておきましょう。
不測の事態に備える予備費についてより詳しく知りたい方は「生活防衛資金とは?金額の目安や貯め方のポイントを紹介」もご覧ください。
5.生活スタイルが変わる可能性を考慮しておく
アーリーリタイア後の生活では、当初の計画から変化が生まれることも想定しておきましょう。例えば、自由な時間が増えたことで趣味や旅行にお金をかけるようになったり、新たな交友関係が生まれて交際費が増えたりと、支出のバランスが変わることも考えられます。
当初の計画に固執しすぎず、価値観の変化に合わせて生活設計を柔軟に見直せるよう、資金計画にもゆとりを持たせておきましょう。
6.万一の備えが十分かどうかも確認する
退職によって会社の社会保険や福利厚生といった後ろ盾がなくなるため、万一の事態には自分自身で備える必要があります。例えば、自身が亡くなった後の家族の生活費、大きな病気やケガをした際の高額な医療費、将来必要になるかもしれない介護費用などです。
貯蓄だけで対応することに不安を感じる場合は、民間の保険に加入して備えることも選択肢の一つです。リタイア前に現在の保障内容を確認し、不足分を補っておきましょう。
アーリーリタイア(早期退職)するための具体的な資金計画
アーリーリタイアという憧れを現実にするには、実現可能な資金計画が欠かせません。ここでは、将来の不安を安心に変えるための具体的な計画の立て方を、4つのステップで分かりやすく解説します。
1.リタイア後の支出を書き出す
資金計画を立てるにあたり、まずはリタイア後の支出がどれくらいになるのかを把握します。食費や光熱費といった日々の生活費はもちろん、趣味や旅行などのレジャー費、車の買い替えや家の修繕といった数年単位で発生する特別な出費も含めて、すべてリストアップします。
このように、理想の暮らしを維持するための年間支出を具体的に書き出すことで、必要となる資金の全体像が見えてきます。
2.リタイア後の収入を見積もる
支出額を洗い出したら、次はリタイア後の収入がいくらになるかを見積もります。退職金や企業年金などの私的年金、そして将来受け取る公的年金といった、労働以外の収入源を一つひとつ確認していきましょう。
アーリーリタイアをすると、公的年金の受給が始まるまでの間、収入のない「空白期間」が生まれます。この期間をどう乗り切るかが資金計画のポイントとなるため「いつから・いくら受け取れるのか」を正確に把握しておきましょう。
3.不足分を資産運用で補う
リタイア後の支出が収入を上回る場合、その差額をどう埋めるかが課題となります。貯金を切り崩すだけでなく、NISAやiDeCoなどを活用した資産運用で不足分を補うことも検討してみましょう。
もちろん投資にはリスクがともないますが、長期的な視点で投資先を分散させることで、その影響を和らげることが可能です。また、資産運用は物価上昇(インフレ)によってお金の価値が下がってしまうリスクへの備えにもなります。
4.隠れたコストにも注意が必要
アーリーリタイアの資金計画では、退職直後に発生する「隠れたコスト」にも目を向ける必要があります。
代表的なのが、前年の所得をもとに計算される住民税です。退職して収入が減った翌年に、高額な請求が届くことを想定しておきましょう。
社会保険料の負担も大きく変わります。会社員時代は会社と折半だった健康保険料は、国民健康保険への切り替えなどにより原則として全額自己負担となり、年金も厚生年金から国民年金へ切り替えて自分で納付する必要があります。
これらの見落としがちな出費を計算に入れておかないと、当初の計画が大きく狂う原因になりかねません。
まとめ
アーリーリタイア(早期リタイア)は、ストレスから解放され、自由な時間を手に入れられる魅力的な生き方です。しかし、その実現には年金受給額の減額や社会保険料の負担といった金銭的な課題もともないます。
理想の暮らしを手に入れるためには、退職後の生活を具体的に想像し、入念な資金計画を立てることが欠かせません。本記事で解説したメリット・デメリットや注意点を参考に、ご自身の状況と照らし合わせながら、実現可能かどうかを慎重に検討してみてください。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
田辺 容子(たなべ ようこ)
FPライター。証券会社にて個人向け資産運用のアドバイス業務に約10年間従事。現在は、実務経験と金融資格、自身の投資経験を活かし、金融分野に特化したライターとして活動中。メガバンクのコンテンツ制作や大手金融メディアでの記事執筆など、信頼性が重視される案件を多数手がけている。2級FP技能士、証券外務員一種。
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ
~47Life編集部より~
アーリーリタイアとは、「早く仕事を辞めること」と思われがちですが、本質はこれからの人生をどう過ごしたいかを見つめ直すことにあります。
働き続けることも、少しペースを落とすことも、自分に合ったかたちを選べる時代です。将来の安心と、いまの心地よさ。そのバランスを考えながら、自分らしいライフプランを描いていきましょう。

