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夫を亡くしたときに定められた条件を満たしていれば、その妻は「寡婦年金」を受給できます。では、寡婦年金はいくらもらえて、受給要件や手続き方法はどのようになっているのでしょうか。
この記事では、寡婦年金に関する疑問を解決します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
寡婦年金とは
寡婦年金は、夫が死亡したときに、一定の要件を満たす妻に対して支給される年金です。夫が死亡したとき、遺族基礎年金を受給できない妻の場合、60歳から65歳までの収入が途絶えてしまう恐れがあるため、このような制度が設けられています。
死亡一時金や遺族年金との違い
寡婦年金と死亡一時金・遺族年金は、死亡した夫の妻に対する支援制度である点では同様です。しかし、支給期間や対象などに違いがあります。これから、寡婦年金と死亡一時金・遺族年金との違いについて紹介します。
死亡一時金との違い
寡婦年金と死亡一時金との違いは、支給期間です。寡婦年金は一定期間支給されるのに対して、死亡一時金はその名のとおり一度のみ支給されます。[参考1][参考2]
また寡婦年金を受給できるのは妻のみであるのに対し、死亡一時金は亡くなった方と生計が同じだった子や父母、孫、祖父母なども受給の対象です。[参考3]
参考1:日本年金機構「寡婦年金」
参考2:岡山市「死亡一時金」
参考3:日本年金機構「死亡一時金を受けるとき」
遺族年金との違い
遺族年金も寡婦年金と同様に、国民年金の被保険者が死亡したときに、その家族に対し支給されるものです。
しかし、寡婦年金の支給対象は妻であるのに対し、遺族年金は「子のある配偶者」または「子」が対象となります。[参考4][参考5]
参考4:日本年金機構「寡婦年金」
参考5:日本年金機構「遺族年金」
寡婦年金の受給条件や金額はどれくらい?
寡婦年金が受け取れるかどうかは、死亡した夫の保険料納付期間や、その妻と婚姻関係にあった期間によって決まります。
以下では、寡婦年金の受給条件や対象者などの詳細を説明します。
受給できる条件や対象者
寡婦年金を受け取るときの要件は以下のとおりです。[参考6]
遺族の要件(以下のすべてを満たす方) | 亡くなった方の要件 (以下のいずれにも該当していない方) |
● 夫が死亡した当時、夫により生計を維持していた ● 夫が死亡した当時、65歳未満で、夫と10年以上継続した婚姻関係(事実婚を含む)があった ● 老齢基礎年金を繰上げ受給していない | 障害基礎年金を受け取るための要件を満たしていたことがある(※1) 老齢基礎年金を受け取った(※2)ことがある |
(※1)亡くなった方が障害基礎年金を請求していなかった場合も含みます。
この場合、亡くなった方の障害基礎年金について、妻は未支給年金として請求することが可能です。
(※2)生前ご本人が年金を受け取ってなかった場合でも、遺族に未支給年金を受け取る権利が発生している場合は「受け取った」とみなされます。
ただし、生前ご本人が老齢基礎年金の繰下げ受給を予定していた場合は除きます。
参考6:厚生労働省「死亡一時金、寡婦年金お手続きガイド」
受け取れる金額
寡婦年金の金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額です。[参考7]
例えば、夫が20歳から60歳まで40年間漏れなく年金保険料を納付してから死亡した場合、令和5年4月分からの老齢基礎年金額は満額の79万5,000円となります。[参考8]この場合、寡婦年金の金額は79万5,000円の4分の3である59万6,250円です。
※上記は67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ)の金額です。
※68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ)の老齢基礎年金額の満額は、79万2,600円、寡婦年金の金額は59万4,450円となります。
実際に受け取れる金額は、年金保険料の納付期間によって変動するため確認しましょう。
参考7:日本年金機構「寡婦年金」
参考8:日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
受給できる期間
寡婦年金受給期間は、受給要件を満たした妻が60歳から65歳になるまでです。[参考9]
また、妻が夫の死亡時点で60歳に達しているかどうかで、受給開始月が以下のように変わってきます。[参考10]
- 夫の死亡時点で妻が60歳未満:妻が60歳に達した月の翌月から受給開始
- 夫の死亡時点で妻が60歳を超えていた:夫が死亡した月の翌月から受給開始
参考9:日本年金機構「寡婦年金」
参考10:厚生労働省「死亡一時金、寡婦年金お手続きガイド」
受給資格がなくなる条件
夫を亡くした妻が寡婦年金の受給資格がなくなる条件は、以下のとおりです。[参考11]
- 65歳に達したとき(誕生日の前日)
- 死亡したとき
- 婚姻をしたとき(事実婚を含む)
- 直系血族、直系姻族以外の者の養子になったとき
- 老齢基礎年金の繰り上げ請求をしたとき
これらの条件に該当した場合、妻は翌月から寡婦年金を受け取れなくなります。
参考11:厚生労働省「死亡一時金、寡婦年金お手続きガイド」
寡婦年金を受給するときの注意点
寡婦年金を受給するときの注意点としては、必ず受給できるものではないと言うことです。受給するには、遺族と亡くなった方の両方の要件を満たす必要があります。
また、寡婦年金は老齢基礎年金など他の年金との同時受給はできません。 これまで老齢基礎年金を受け取っていたことがある場合も寡婦年金を受給することはできません。
寡婦年金を受給するときは、最低限上記の点には注意しましょう。
寡婦年金の手続き方法や流れを紹介
続いて、寡婦年金の手続き方法や流れ、必要書類について解説します。
受給要件の確認
まずは受給要件を確認し、自身がすべて満たしているか確認します。受給要件を満たしているかどうかが曖昧な場合は、自宅所在地を管轄する年金事務所に問い合わせましょう。
必要な書類を揃える
寡婦年金の手続きに必要な書類、およびそれぞれの確認事項を確認しておきましょう。[参考12]
■すべての方
書類名 | 確認事項 |
基礎年金番号通知書または年金手帳などの基礎年金番号を明らかにすることができる書類 | 提出できないときは、その理由書が必要 |
戸籍謄本(記載事項証明書) | 死亡者との続柄および請求者の氏名・生年月日の確認 受給権発生日以降で提出日から6ヵ月以内に交付されたもの |
世帯全員の住民票の写し (マイナンバーの記入によって添付は省略可) | 死亡者との生計維持関係確認のため 受給権発生日以降で提出日から6ヵ月以内に交付されたもの |
死亡者の住民票の除票 | 世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要 |
請求者の収入が確認できる書類 (マイナンバーの記入によって添付は省略可) | 生計維持認定のため 所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票 など |
受取先金融機関の通帳など(本人名義) | カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載された部分を含む預金通帳またはキャッシュカード(コピー可) など ※請求書に金融機関の証明を受けた場合は添付不要 ※公金受取口座を利用する方は、請求書の「金融機関の証明」欄の証明および受取先金融機関の通帳などのコピーの添付は不要 公金受取口座の登録口座を変更したとしても、年金の受取口座は変更されないため、年金受取口座の変更を希望する場合は「年金受給権者 受取機関変更届」の届出が必要。 ※インターネット専業銀行での年金の受け取りについては、こちらを参照 |
年金証書 | 公的年金から年金を受けているとき |
■死亡の原因が第三者行為の場合に必要な書類
書類名 | 確認事項 |
第三者行為事故状況届 | 所定の様式あり(詳しくは年金事務所へ問合せ) |
交通事故証明または事故が確認できる書類 | 事故証明がとれない場合は、事故内容がわかる新聞のコピー など |
確認書 | 所定の様式あり(詳しくは年金事務所へ問合せ) |
被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類 | 源泉徴収票、健康保険証のコピー※、学生証のコピーなど ※保険者番号および記号・番号などを判別、復元できないようマスキング(黒塗りなど)したもの |
損害賠償金の算定書 | すでに決定済みの場合。示談書など受領額がわかるもの |
損害保険会社などへの照会にかかる「同意書」 | 所定の様式あり(詳しくは年金事務所へ問合せ) |
すべての書類を用意しないと寡婦年金を受給できないため、漏れなく揃えましょう。 難しい場合は、寡婦年金手続き代行サービス(有料)を利用するのも選択肢のひとつです。
参考12:日本年金機構「寡婦年金を受けるとき」
請求書を提出する
寡婦年金を受給するときは、年金請求書も提出する必要があります。年金請求書では、夫の死亡日や死因などの必要事項を記入します。
年金請求書のフォーマットおよび記入例は、日本年金機構の「寡婦年金を受けるとき」から閲覧およびダウンロードできます。
年金請求書の提出先は、住所地の市区町村役場の窓口です。また、自宅所在地を管轄する年金事務所や、街角の年金相談センターでも手続きできます。[参考13]
参考13:日本年金機構「全国の相談・手続き窓口」
万が一を考え保険で備えておくことも大切
寡婦年金を受け取るためには受給要件を満たす必要があるため、受給できない可能性もあります。また受給開始後も、さまざまな要因によって受給資格を失うことがあります。
そのため、万が一の事態に備えて保険への加入を検討することも大切です。
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まとめ
寡婦年金は、夫が亡くなった妻を対象とした給付金制度です。受給資格や金額、期間を確認し、注意点を把握して手続きを進めましょう。
なお、寡婦年金の受給要件を満たしていても、受給できる期間は限られています。万が一の場合に備えて保険への加入を検討するのもおすすめです。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ