仕事や休日の過ごし方を見直すなかで、二拠点生活に関心を持つ人が増えています。一方、移動の負担や手続き・制度面など、始める前に不安を感じる点も少なくありません。本記事では、そうした不安や疑問を解消しながら、二拠点生活を安心して始めるヒントを紹介します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
二拠点生活(デュアルライフ)とは
二拠点生活(デュアルライフ)とは、生活の拠点を2ヵ所持ち、仕事や休日、季節などに合わせて行き来する暮らし方です。平日は都市部で働き、休日は地方で過ごす形が代表的です。
完全に移住するのではなく、現在の生活基盤を残しながら別の地域で暮らせる点が特徴です。テレワークの普及などを背景に注目されており、仕事を続けながら別の地域で暮らしたり、家族と過ごす場所を増やしたりするなど、目的に応じてさまざまな形を選べます。
二拠点生活をするメリット
二拠点生活のメリットは、都市部の生活基盤を残しながら、地方ならではの環境や暮らしを取り入れられることです。過ごす場所が増えることで、休日の過ごし方や人とのつながりなど、暮らしの選択肢も広がります。ここでは、二拠点生活をするメリットを見ていきましょう。
1.異なる環境で心身をリフレッシュできる
異なる環境を行き来することで、日常から気持ちを切り替えやすくなります。二拠点生活には、平日は都市部・休日は自然豊かな地方で過ごすパターンのほか、東京・大阪のように都会同士を行き来するパターンがあります。前者の場合、自然豊かな環境に身を置くことで都会の喧騒から離れ、心身の健康維持につながります。後者の場合、利便性を保ちながら、街ごとに異なる文化や人との出会い、楽しみ方に触れられる点が魅力です。いずれのスタイルでも、異なる環境で心身をリフレッシュできるでしょう。
2.暮らしにメリハリが生まれる
平日と休日で過ごす場所を切り替えることで、仕事とプライベートのメリハリをつけやすくなります。例えば、平日は仕事に便利な都市部の拠点で過ごし、休日は地方の拠点で趣味や家族との時間を楽しむと、場所の移動そのものがオンとオフを切り替える合図になります。気持ちを切り替えやすくなることで、仕事へのモチベーション向上にもつながるでしょう。
3.新しい趣味や体験を楽しめる

地方に第二の拠点を持つと、その地域ならではの趣味や体験に挑戦しやすくなります。農業やDIY、釣り、登山など、都市部での生活では取り入れにくい活動を身近に楽しめる点が魅力です。
これまで経験したことのない趣味に出会うことで、休日の楽しみが増えたり、新たな生きがいが見つかったりすることもあるでしょう。二拠点生活は、単に生活する場所を増やすだけでなく、新しい経験を重ねながら、これからの人生をより豊かにする選択肢にもなります。
4.新しい人とのつながりが生まれる
二拠点生活を始めると、これまで接点のなかった人とつながる機会が生まれます。近隣住民や地域の活動に参加する人、同じように二拠点生活をしている人と交流することで、普段の生活圏とは異なる新しいコミュニティを築けます。
また、将来的にその地域への移住を考えている場合は、二拠点生活を通じてあらかじめ人間関係を築いておくことが、移住後の暮らしを始めやすくすることにもつながります。
5.移住のお試しができる
将来的に地方移住を考えていても、いきなり生活の拠点や環境を大きく変えることに不安を感じる人もいるでしょう。二拠点生活なら、都市部の現在の住まいを残したまま、地方などで新しい暮らしを体験できます。
現在の生活基盤を維持しながら、地方などの新しい拠点の気候や交通、買い物環境、人との関わり方などを実際に確かめられるため、移住後の生活を具体的にイメージしやすくなります。完全に移住する前に自分や家族に合う地域かどうかを確認できる点は、二拠点生活のメリットの一つです。
二拠点生活をする際に知っておきたいデメリット
二拠点生活は暮らしの幅が広がる一方で、住まいや移動に関する負担も増えます。始めた後に想定外の負担を感じないよう、主なデメリットを確認しておきましょう。
1.生活費や維持費の負担が増える
二拠点生活では、2つの拠点を持つために、新たな支出が発生します。第二の拠点で生活を始める際には、賃貸・持ち家を問わず、家具・家電や日用品をそろえる初期費用がかかります。その上で、滞在日数が少なくても、電気・ガス・水道、通信回線などの費用が毎月発生するため、あらかじめ見込んでおく必要があります。さらに、賃貸物件を利用する場合は、家賃が毎月の新たな負担となります。一方、持ち家(分譲)を購入する場合は、住宅ローンの返済が毎月の大きな負担となるほか、固定資産税や修繕費、火災保険料などの維持費もかかります。
2.2つの住まいを管理する手間がかかる
二拠点生活では、住まいが2つになる分、管理にかかる手間も増えます。長期間不在にする拠点でも、換気や掃除、郵便物の確認、庭の手入れなどが必要です。また、不在時の戸締まりや防犯対策にも気を配らなければなりません。
水漏れや設備の故障などが起きた場合、すぐに現地へ行けないこともあります。一拠点で生活する場合と比べて、住まいの状態を確認・管理する時間や労力が増える点はデメリットです。
3.移動時間や交通費が負担になることがある
二拠点生活では、拠点間を行き来するたびに移動時間や交通費がかかります。新幹線や飛行機を利用する距離であれば、往復するだけでも大きな出費になります。車で移動する場合も、ガソリン代や高速道路料金、駐車場代などが必要です。移動頻度が高いほど費用が積み重なるほか、長時間の移動によって疲れを感じることもあるでしょう。
4.地域になじむまで時間がかかる場合がある
二拠点生活では、地域の人間関係や生活上のルールになじむまで時間がかかる場合があります。地域によっては、自治会活動やごみ出し、地域行事など、都市部での生活とは異なる決まりや慣習があります。さらに、こうした決まりや慣習に加え、滞在日数が限られる二拠点生活では、地域住民と接する機会が少なく、周囲との関係を築くまでに時間を要することもあるでしょう。
二拠点生活を始めるためのステップ
ここからは、二拠点生活を始めるためのステップを説明します。
1.目的と予算を明確にする
二拠点生活を始める前に、なぜ二拠点生活をしたいのかという目的と、かけられる予算の上限を明確にしましょう。都市部での仕事や生活を続けながら休日を自然のなかで過ごしたい、将来の地方移住を試したいなど、目的によって適した場所や住まいの種類は異なります。また、家賃や交通費などの負担が継続的に発生するため、無理なく続けられる予算を決めておくことも重要です。想定外のことに備えて予備費も準備しておくと良いでしょう。
家族と一緒に二拠点生活をする場合は、決めた目的や予算について家族間でも話し合い、認識をすり合わせておきましょう。お互いの価値観を共有しておくことで、二拠点生活を始めた後のトラブルを防ぎやすくなります。
2.エリアと予算をシミュレーションする
希望するライフスタイルに合わせて、第二の拠点にするエリアの候補を絞りましょう。休日に自然を楽しんで過ごすためなのか、将来の移住先として考えているのかなど、二拠点生活に求める目的によって、適した地域は異なるためです。候補地が決まったら、家賃や物件の初期費用、拠点間の交通費などを計算しましょう。
毎月の支出があらかじめ決めた予算内に収まるかを確認することで、二拠点生活を無理なく続けられるか判断しやすくなります。希望だけで場所を決めるのではなく、実際にかかる費用までシミュレーションし、現実的な計画を立てることが大切です。
3.お試し移住で短期滞在してみる
いきなり地方の物件を契約するのではなく、まずは候補地で短期滞在し、実際の暮らしを体験してみましょう。自治体のお試し住宅や短期賃貸、ホテルなどを利用すれば、気候や交通の利便性、買い物環境、地域の雰囲気などを確かめられます。
観光で訪れるだけでは分かりにくい朝晩の過ごしやすさや平日の生活環境も確認できるでしょう。一定期間滞在して、候補地での暮らしを肌で感じることで、自分や家族に合う地域かどうかを判断しやすくなります。
4.賃貸で小さな拠点を契約する
地方で本格的に二拠点生活を始める際は、最初から物件を購入せず、コンパクトな賃貸物件からスタートするのも選択肢の一つです。
賃貸であれば、地域や暮らし方が合わなかったときに拠点を変更しやすく、購入に比べて初期費用や修繕の負担も抑えられます。利用人数や滞在日数に合う広さを選び、無理のない規模から始めることが、二拠点生活を続けやすくするポイントです。
5.最小限の家具・家電で生活をスタートさせる
第二の拠点では、最初からすべての家具・家電を揃える必要はありません。どれくらい続けるか分からない段階で多くの家具・家電を購入すると、使わなくなった場合に無駄な出費になるからです。
まずは冷蔵庫や寝具、照明など必要最低限のものだけを用意し、実際に暮らしながら不足するものを追加していくと良いでしょう。家具・家電付き物件を選んだり、レンタルやサブスクリプションサービスを活用したりすれば、初期費用を抑えながら身軽に二拠点生活を始められます。
二拠点生活にかかる費用の目安
二拠点生活には、第二の拠点を用意する際の初期費用と、生活を始めた後に継続してかかるランニングコストがあります。ここでは、東京をメイン拠点、長野県を第二の拠点として、夫婦2人で利用する場合を例に費用の目安を紹介します。
1.二拠点生活の初期費用
賃貸物件の初期費用は、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などを含め、家賃の4.5〜5ヵ月分が目安です。住居費を約6万円として計算すると、賃貸契約の初期費用は27万円〜30万円程度になります。
また、第二の拠点で生活するためには、冷蔵庫や洗濯機、ベッド、テーブルなどの最低限の家具・家電を用意する費用もかかります。二拠点生活の初期費用は以下のとおりです。
| 項目 | 費用の目安 |
| 賃貸契約の初期費用 | 約27万円〜30万円 |
| 家具・家電の購入費用 | 約20万円〜30万円 |
| 合計 | 約47万円〜60万円 |
第二の拠点を賃貸で用意し、家具・家電を新たに揃える場合、初期費用は約47万円〜60万円が目安です。
2.二拠点生活のランニングコスト
二拠点生活を始めた後は、第二の拠点の家賃に加えて、水道光熱費や通信費、拠点間を移動するための交通費などが継続的にかかります。東京をメイン拠点、長野県を第二の拠点として、夫婦2人で月1回往復する場合のランニングコストの目安は以下のとおりです。
| 項目 | 第二の拠点での1ヵ月の費用の目安 |
| 家賃 | 約6万円 |
| 水道光熱費 | 約1万円 |
| 通信費 | 約5,000円 |
| 交通費 | 約3万2,000円 |
| 合計 | 約10万7,000円 |
※交通費は東京駅〜長野駅間を新幹線で夫婦2人が月1回往復した場合を想定しました。
この場合、第二の拠点を維持するためのランニングコストは、月11万円前後が目安です。
実際にかかる金額は、第二の拠点の場所や物件、滞在日数、移動頻度、利用する人数などによって異なります。二拠点生活を始める前に、初期費用と毎月のランニングコストをそれぞれ計算し、無理なく続けられる予算か確認しておきましょう。
二拠点生活を始める前に確認したい注意点
二拠点生活では、住まいを2つ持つことで行政手続きや医療の利用方法にも注意点が生じます。生活を始めてから困らないよう、住民票や税金、医療体制について事前に調べておきましょう。
1.住民票や税金のルールを確認する
二拠点生活を始める際は、住民票をどちらの拠点に置くか確認しておきましょう。住所は「生活の本拠」とされているため、2つの拠点を利用していても、住民票を両方の住所に置くことはできません。基本的には、普段の生活の中心となる拠点に住民票を置くことになります。
ただし、住民票を置いていない自治体に第二の拠点を持つ場合でも、「家屋敷課税(いえやしきかぜい)」として住民税の均等割が課されることがあります。家屋敷課税とは、住所地とは別の自治体に、自分や家族がいつでも住める住宅を持っている場合に課される、住民税のうち均等割部分です。住民税のうち、所得に応じて課される所得割は対象外です。なお、これは住所地で納める住民税の代わりになるものではなく、住所地の住民税に加えて別途発生する追加の負担です。金額は自治体によって異なりますが、年5,000円前後が一つの目安です。
二拠点生活では、住民票を置いていないからといって、その地域の住民税が必ずかからないとは限りません。第二の拠点を決める際は、家屋敷課税の対象になるかを所在地の自治体に確認しておきましょう。
2.医療体制を確認する

地方に第二の拠点を持つ場合は、近隣で利用できる医療機関や救急時の対応について確認しておきましょう。慣れない土地での生活では、急な病気やケガが起きたときに、どこを受診すれば良いか分からないことがあります。また、メイン拠点と第二拠点を行き来する途中で体調を崩したり、事故に遭ったりする可能性もあります。
持病がある人や定期的な通院が必要な人は、近隣に必要な診療科があるか、診療時間はいつかなどを確認しておくことが大切です。夜間や休日に備えて、救急医療機関までの距離や移動手段も調べておけば、第二の拠点で急に受診が必要になったときにも対応しやすくなります。
失敗しない二拠点生活の拠点選びのポイント
ここでは、失敗しない二拠点生活の拠点選びのポイントを解説します。
1.メイン拠点から通いやすい場所を選ぶ
地方などの第二の拠点は、メイン拠点から車や電車などで無理なく通える場所を選ぶことが大切です。移動時間が長すぎたり、乗り換えが多かったりすると、第二の拠点へ行くこと自体が負担になり、次第に訪れる回数が減ってしまいます。電車や車での所要時間だけでなく、乗り換え回数や最終列車の時刻、冬季の道路状況なども確認しておきましょう。
アクセスしやすい場所を選ぶことで、移動の負担を抑えながら第二の拠点を利用できます。二拠点生活を長く楽しむためにも、実際に利用する曜日や時間帯に移動し、無理なく通い続けられる距離かを確かめておくことが重要です。
2.医療機関や買い物環境を確認する
地方の第二の拠点は、自然の豊かさや景観だけでなく、日常生活に必要な施設へのアクセスも確認して選ぶことが大切です。スーパーやコンビニ、ドラッグストアまでの距離に加え、病院やクリニックなどの医療機関が近くにあるかも確認しましょう。車での移動が前提となる地域では、将来運転が難しくなった場合に利用できる公共交通機関や移動手段があるかも重要です。
短期間の滞在では気にならない不便さでも、二拠点生活を長く続けるうちに買い物や通院の負担が大きくなることがあります。将来にわたって安心して過ごせるよう、現在だけでなく今後の生活も想定してエリアを選びましょう。
二拠点生活で活用できる補助金・支援制度
二拠点生活を始める際、自治体の支援制度や空き家情報を活用できる場合があります。ここでは、二拠点生活で活用できる補助金・支援制度を見ていきましょう。
1.自治体の移住支援制度を確認する
地方で二拠点生活を始める際は、候補地となる自治体が設けている移住・定住支援制度を確認しましょう。自治体によっては、お試し住宅の利用や現地までの交通費、住宅の取得・改修費などを支援する制度を設けています。完全な移住だけでなく、二拠点生活者や移住を検討している人が利用できる制度もあります。
特に、お試し居住の支援制度を利用すれば、物件を契約する前にその地域での暮らしを体験できます。二拠点生活の候補地を比較する際にも活用しやすいでしょう。支援内容や対象者、申請時期は自治体によって異なるため、希望するエリアが決まったら、自治体のホームページで利用できる制度を事前に確認しておくことが大切です。
2.空き家バンクなどを活用する
地方で第二の拠点を探す際は、自治体などが運営する空き家バンクを活用する方法があります。空き家バンクは、空き家の売却・賃貸を希望する所有者と、利用を希望する人をつなぐ仕組みです。
自治体によっては、空き家バンクを通じて物件を借りたり購入したりする人を対象に、仲介手数料やリフォーム費用などを補助する制度を設けています。こうした補助金を活用できれば、相場よりも負担を抑えて第二の拠点を確保できます。希望する地域の空き家バンクとあわせて、利用できる補助制度がないか自治体のホームページで確認してみましょう。
まとめ
二拠点生活は、メイン拠点での生活基盤を残しながら地方などにも拠点を持ち、2つの地域を行き来する暮らし方です。自然のなかでリフレッシュしたり、新しい趣味や地域の人とのつながりを楽しんだりできるほか、将来の地方移住を検討している人にとっては、実際の暮らしを試す機会にもなります。
一方で、第二の拠点を持つことで住居費や水道光熱費、交通費などの負担が増え、2つの住まいを管理する手間もかかります。二拠点生活を始める際は、目的と予算を明確にした上で、希望するライフスタイルに合うエリアを選び、お試し居住などを活用して実際の暮らしを確認してみましょう。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
宮崎 千聖(みやざき ちさと)
FPライター。神戸大学経済学部卒業後、銀行の融資課にてローンの相談・手続きを担当した。退職後はライターとして、メガバンクや司法書士法人のオウンドメディアなどで記事を執筆。カードローンやクレジットカード、資産運用、債務整理など幅広いジャンルで執筆している。2級FP技能士、証券外務員一種
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ
~47Life編集部より~
「いつか地方で暮らしてみたい」「自然の近くで過ごす時間を増やしたい」。そんな思いを持つ人に、二拠点生活はおすすめです。理想の暮らしを思い描くだけでなく、費用や生活環境を確認しながら、自分らしいライフプランを考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
