「退職金に税金はかからないは本当?」税金の計算方法や受け取り方、確定申告について

「退職金に税金はかからないは本当?」税金の計算方法や受け取り方、確定申告について

「退職金には税金がかからない」と聞いて、本当なのだろうかと疑問に感じる人もいるでしょう。長年働いたあかしである退職金から、たくさんの税金が引かれるのは避けたいものです。

実は、退職金には大きな控除があり、税金の負担が軽くなる仕組みがあります。

この記事では、退職金の具体的な計算方法やシミュレーション、さらに税金がかからないケースについてもわかりやすく解説します。また、受け取り後に必要な実務面として、一時金と年金による違いや確定申告が必要になるケースも紹介します。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

退職金に税金がかからないケースとは

退職金は、受け取る金額や条件によって税金がかからないことがあります。どのようなケースで税金がかからなくなるのか、その仕組みをわかりやすく解説します。

1.退職所得控除額の範囲内なら税金はかからない

退職金は、受け取る金額が退職所得控除額の範囲内であれば、所得税や住民税はかかりません。そのため、「退職金には税金がかからない」といわれるケースの多くは、この退職所得控除が関係しています。

退職所得控除とは、退職金に設けられている特別な控除です。控除とは、税金を計算する前に一定の金額を差し引くことをいいます。

退職金は、退職所得控除を差し引いた残りの金額をもとに税金を計算します。そのため、受け取る退職金が退職所得控除額以下であれば、税金の計算対象はゼロになり、所得税や住民税はかかりません。例えば、退職所得控除額が800万円の人なら、受け取る退職金が800万円以下であれば税負担は0円となります。

退職所得控除は、長年の勤務に対する功労に報いる目的で設けられた制度です。この制度があることが「退職金には税金がかからない」といわれる理由の一つです。

2.退職所得控除額は勤続年数によって決まる

退職所得控除額は一律ではなく、勤続年数に応じて決まります。勤続年数が長いほど控除額が大きくなり、税金がかかりにくくなる仕組みです。

具体的には、勤続年数「20年」を境に以下の計算式で算出されます。

  • 勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数(※最低80万円)
  • 勤続年数20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)

自分の勤続年数では退職所得控除額がいくらになるのか、以下の早見表で目安を確認してみましょう。

勤続年数退職所得控除額(非課税枠)
5年200万円
10年400万円
15年600万円
20年800万円
25年1,150万円
30年1,500万円
35年1,850万円
40年2,200万円
45年2,550万円

例えば勤続年数が30年の場合、退職所得控除額は以下のように計算します。

  • 退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(30年 - 20年)= 1,500万円

そのため、退職金が1,500万円以下であれば、所得税や住民税はかかりません。

なお、表に記載のない勤続年数の場合や「勤続年数に1年未満の端数がある場合」の正しい処理方法などについては、後述の「退職金にかかる税金の計算方法」で詳しく解説します。

退職金にはどのような税金がかかる?

退職金は、退職所得控除額を超えた部分に対して、住民税と所得税がかかります。ただし、税負担が大きくなりすぎないよう、さまざまな配慮が設けられています。

1.住民税

住民税は、お住まいの都道府県や市区町村に納める地方税です。

退職金にかかる住民税は、退職金の支払い時に会社が税額を計算して天引き(特別徴収)し、本人に代わって市区町村へ納付します。そのため、原則として自分で納付手続きをする必要はありません。

住民税には、次のような特徴があります。

【合算されて税率が上がることはない(分離課税)】
給与や年金など他の所得とは合算せず、退職金だけで税額を計算します。一時金として受け取った場合は他の所得と分離して計算されるため、翌年の住民税が高くなることはありません。

【税率は一律10%】
課税対象となる退職所得に対して、市区町村民税と都道府県民税を合わせて一律10%が課されます。

2.所得税

所得税は、個人の所得に対してかかる国の税金(国税)です。退職金にかかる所得税も、住民税と同様に、通常は会社が支払い時に天引き(源泉徴収)して国へ納付します。

退職金にかかる所得税には、次のような特徴があります。

【合算されて税率が上がることはない(分離課税)】
給与など他の所得とは合算せず、退職金だけで税額を計算します。そのため、給与などと合算されて高い税率が適用されることはありません。

【税負担を抑えられる(退職所得控除・2分の1課税)】
課税対象となる退職所得の金額が大きくなるほど税率は高くなりますが(累進課税)、退職金の税負担は大きく軽減される仕組みになっています。まず、勤続年数に応じた「退職所得控除」により、退職金から一定額を差し引いた残りの部分だけが課税対象となるため、対象額自体が小さくなります。さらに、その課税対象額はそのままではなく2分の1にした金額に税率がかかるため、実際に課税される金額はいっそう小さくなり、結果として税負担は大きく抑えられます。

なお、所得税と合わせて「復興特別所得税」も徴収されます。これは、東日本大震災からの復興財源を確保するための税金で、基準となる所得税額の2.1%が加算されます。

※2027年分以降は、防衛特別所得税(1.0%)と復興特別所得税(1.1%)に分かれますが、所得税額に加算される割合の合計は2.1%のままです。

退職金にかかる税金の計算方法

退職金にかかる税金は、次の3ステップで計算します。

  1. 退職所得控除額(税金がかからない金額)を計算する
  2. 課税退職所得金額(税金の対象となる金額)を計算する
  3. 所得税・住民税(実際に納める税額)を計算する

順に見ていきましょう。

1.退職所得控除額を計算する

退職所得控除額とは、退職金に税金がかからない非課税枠のことです。勤続年数に応じて、以下のように計算します。

  • 勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
    ※計算した金額が80万円未満の場合は80万円
  • 勤続年数が20年超の場合:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

なお、勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1日でも1年として切り上げて計算します。例えば、勤続年数が19年と1日でも、計算上は20年として扱われます。

退職金は、長年の勤務に対する報酬であり、退職後の生活資金としての性格も持つことから、給与などと比べて税負担が軽くなるよう配慮された制度です。
そのため、勤続20年を境に1年あたりの控除額が40万円から70万円へと増額され、長く勤めるほど税負担が軽くなるよう優遇されています。

2.課税退職所得金額を計算する

退職金は長年の勤労に対する対価であり、老後の生活を支える大切な資金です。そのため、給与と同じ基準で課税すると、その年だけ税負担が急増してしまいます。この負担を和らげ、退職後の生活資金を確保しやすくするため、退職金には税負担を軽減する仕組みが設けられています。

具体的には、退職金から退職所得控除額を差し引き、その金額をさらに2分の1にして課税退職所得金額を計算する仕組みです。

この優遇措置は一般的に「2分の1課税」と呼ばれています。控除額で非課税枠を確保した上で、残額をさらに半分にすることで、退職金への課税を給与所得などに比べて大きく抑える二段構えの仕組みになっています。

計算式は以下のとおりです。

  • 課税退職所得金額 =(退職金の額面 - 退職所得控除額)× 1/2

ただし、この2分の1課税には注意点があり、以下の制限が設けられています。

  • 勤続年数5年以下の役員等:2分の1課税は一切適用されない
  • 勤続年数5年以下の一般従業員:退職所得控除を引いた後の金額のうち、300万円を超える部分には2分の1課税が適用されない

これらは、短期間の勤続で高額な退職金を受け取ることによる過度な節税を防ぐために設けられたルールです。

3.所得税・住民税を計算する

最後に、課税退職所得金額をもとに、所得税と住民税を計算します。それぞれの計算方法は以下のとおりです。

  • 所得税:課税退職所得金額に応じて5~45%の税率(累進課税)を適用し、所定の控除額を差し引いて計算。さらに、算出した所得税額に2.1%の復興特別所得税が加算される

  • 住民税:課税退職所得金額に対して一律10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%)を適用

所得税は、金額が大きくなるほど税率が高くなる仕組みです。実際の税額は、国税庁の「退職所得の源泉徴収税額の速算表」で確認できます。

一方、住民税は所得金額にかかわらず一律10%のため、比較的シンプルに計算できます。

退職金にかかる税金のシミュレーション

ここからは、具体的なモデルケースを用いて、退職金にかかる税金をシミュレーションします。勤続年数や退職金額によって税負担がどのように変わるのか、2つのケースで見てみましょう。

1.勤続20年で退職金1,000万円の場合

まずは、勤続20年で1,000万円の退職金を受け取るケースです。

計算の流れは以下のとおりです。

  • 退職所得控除額:40万円 × 20年 = 800万円
  • 課税退職所得金額:(1,000万円 – 800万円)× 1/2 = 100万円

退職金1,000万円のうち、税金がかかるのは100万円です。この金額をもとに、所得税・復興特別所得税・住民税を計算します。

  • 所得税:100万円 × 5% = 5万円
  • 復興特別所得税:5万円 × 2.1% = 1,050円
  • 住民税:100万円 × 10% = 10万円

税額の合計は約15万円です。退職所得控除が適用されることで、税負担が大きく抑えられることがわかります。

2.勤続35年で退職金2,000万円の場合

続いて、勤続35年で2,000万円の退職金を受け取るケースを見てみましょう。

この場合は、以下の流れで計算します。

  • 退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(35年 – 20年)= 1,850万円
  • 課税退職所得金額:(2,000万円 – 1,850万円)× 1/2 = 75万円

退職金2,000万円のうち、税金がかかるのは75万円です。この金額をもとに税額を計算すると、以下のようになります。

  • 所得税:75万円 × 5% = 3万7,500円
  • 復興特別所得税:3万7,500円 × 2.1% = 787円
  • 住民税:75万円 × 10% = 7万5,000円

税額の合計は約11万円です。勤続年数が長くなるほど退職所得控除額が大きくなるため、税負担を軽減しやすくなります。

退職金の平均金額について詳しく知りたい方は「退職金の平均金額・相場はどれくらいになる?企業や勤続年数別に紹介」をご覧ください。

退職金の受け取り方による税金の違い

退職金の受け取り方には、一度に全額を受け取る「一時金」と、分割して受け取る「年金」の2種類があります。それぞれ税金の仕組みが異なるため、自分に合った受け取り方を検討しましょう。

1.一時金として受け取る場合

退職金を一時金として一度に受け取る方法は、税負担をもっとも抑えやすい受け取り方です。退職金は他の所得と分けて税額を計算する「分離課税」の対象で、「退職所得控除」が適用されます。さらに、控除後の金額を2分の1にして課税する仕組みがあるため、税額が大きく軽減されます。

一時金として受け取る場合の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリットデメリット
・税負担を抑えやすい
・まとまった資金を住宅ローンの返済や投資などに活用できる
・計画的に管理・運用しないと老後資金が不足するリスクがある  

退職金を一時金として受け取るのは、税負担をできるだけ抑えたい人や、まとまった資金を計画的に管理・運用できる人に向いています。

2.年金として受け取る場合

退職金を年金で分割して受け取る方法は、定期的に収入を確保できる受け取り方です。会社によっては、未払い分の退職金を運用しながら支給するため、利息(予定利率)が上乗せされ、一時金よりも額面の受け取り総額が増えるケースがあります。

一方で、受け取った年金は「雑所得(公的年金等控除の対象)」となり、一時金のような大きな税制優遇はありません。税負担が重くなりやすく、国民健康保険料などの社会保険料も増えるため、額面が増えても「手取り総額」は一時金より減ってしまう可能性がある点に注意が必要です。

年金として受け取る場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリットデメリット
・定期的な収入源となり、生活設計を立てやすい
・会社の運用により、額面の受け取り総額が増えるケースがある
・税負担が一時金より重くなる場合がある
・国民健康保険料などの社会保険料が増える可能性がある

退職金を年金で受け取る方法は、税金や社会保険料の負担増を踏まえた上で、毎月安定した収入を確保したい人に向いています。

退職金を受け取ったら確定申告は必要?

退職金を受け取った後、確定申告が必要かどうかは状況によって異なります。ここでは、確定申告が必要になるケースと不要なケースをそれぞれ解説します。

1.確定申告が必要になるケース

退職金を受け取った際に確定申告をしたほうが良いのは、会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないケースです。

この申告書を提出し忘れると、退職所得控除が適用されず、退職金の金額にかかわらず一律20.42%の税率で所得税が源泉徴収(天引き)されてしまいます。この場合、本来納めるべき税額より多く徴収される可能性が高くなります。

法律上の確定申告の義務はありませんが、払いすぎた税金を取り戻すには、ご自身で確定申告(還付申告)をおこなうと良いでしょう。

2.確定申告が不要なケース

一方、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出している場合は、原則として確定申告は不要です。

この申告書を提出すると、会社側で退職所得控除などを適用した正しい税額を計算してくれます。その税額が退職金から天引きされる形で納税が完了するため、自分で確定申告をする必要はありません。

まとめ

この記事では、退職金にかかる税金の仕組みや計算方法を解説しました。

退職金には、長年の勤務に対する配慮から「退職所得控除」という大きな非課税枠が設けられています。勤続年数が長いほど控除額は増え、退職金の額によっては税金が全くかからないケースも珍しくありません。

また、退職金を一時金で受け取るか、年金で分割して受け取るかによっても、かかる税金の種類や金額が変わります。

自分の税額を把握し、最適な受け取り方を選択することが、大切な退職金を守ることにつながります。この記事を参考に、将来の資金計画をじっくりと検討してみてください。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ

田辺 容子(たなべ ようこ)
FPライター。証券会社にて個人向け資産運用のアドバイス業務に約10年間従事。現在は、実務経験と金融資格、自身の投資経験を活かし、金融分野に特化したライターとして活動中。メガバンクのコンテンツ制作や大手金融メディアでの記事執筆など、信頼性が重視される案件を多数手がけている。2級FP技能士、証券外務員一種。