純金融資産は、預貯金や株式などの金融資産から、住宅ローンなどの負債を差し引いた金額です。金融資産や総資産と混同されやすいものの、家計の実質的な余力を把握する上で重要な指標といえます。本記事では、純金融資産の定義や計算方法、階層区分、増やすための方法について解説します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
純金融資産とは?金融資産・総資産との違いについて
純金融資産とは、預貯金や株式、投資信託などの金融資産から、負債を差し引いた金額です。金融資産や総資産と似た言葉ですが、それぞれ意味は異なります。純金融資産を正しく理解することで、家計の実質的な余力や資産形成の把握がしやすくなります。
ここでは、純金融資産の定義と、金融資産・総資産との違いについて解説します。
| 純資産 | 金融資産から、住宅ローンやカードローンなどの負債を差し引いた金額 |
| 金融資産 | 現金・預貯金・株式・投資信託・債券・生命保険など、比較的現金化しやすい資産の合計額 |
| 総資産 | 不動産や車を含む家計の全財産 |
1.純金融資産の定義
純金融資産とは、金融資産から、住宅ローンやカードローンなどの負債を差し引いた金額を指します。
単に「いくら資産を持っているか」ではなく、借入金を差し引いた後にどれだけの金融資産が残るかを把握できる点が純金融資産の特徴です。
例えば、金融資産が1,000万円あっても、ローン残高が700万円あれば、純金融資産は300万円となります。
つまり純金融資産は、家計の実質的な資金余力を把握するための指標といえます。
2.金融資産との違い
金融資産と純金融資産の違いは、負債を差し引くかどうかにあります。金融資産とは、現金・預貯金・株式・投資信託・債券・生命保険など、比較的現金化しやすい資産の合計額を指します。流動性が高く、必要に応じて売却や換金をしやすい点が特徴です。
一方、資産には金融資産のほかに「実物資産」もあります。実物資産とは、不動産や金・銀などの貴金属、宝石、芸術品など、それ自体に価値がある資産のことです。これらは資産として評価されるものの、金融資産には含まれません。
そのため、金融資産を把握する際は、不動産などの実物資産と区別して考える必要があります。
3.総資産との違い
総資産とは、不動産や車を含む家計の全財産を指します。一方、金融資産には「実物資産」は含みません。
純金融資産は金融資産から負債を差し引いた金額であり、あえて換金性の高い資産に限定することで、即時の支払い能力や投資に回せる余力をより正確に評価することが可能です。
つまり、家計の規模を知るのが総資産であり、自由に動かせる「実質的なお金」を測るのが純金融資産であることに注意しましょう。
ライフプラン設計に純金融資産の把握が重要な理由
将来のライフプランを設計するにあたって、純金融資産を把握することが重要です。その理由として、次の4点があります。
- 「本当に使えるお金」がわかるようになる
- 老後資金(リタイアメント)の正確な計算に直結する
- 投資のリスク許容度を正しく判定できるようになる
- 家計の健康状態を定点観測できるようになる
以下では、それぞれについて深掘りしていきます。
1.「本当に使えるお金」がわかるようになる
ライフプランを考える上で、純金融資産を把握することが重要な理由として、家計のなかで「本当に使えるお金」がどれだけあるかを確認できる点があります。
総資産には自宅や土地など、すぐに現金化しにくい資産も含まれ、金融資産が多く見えても住宅ローンや借入金が残っていれば、自由に使える金額は限られます。
教育資金や住宅修繕費や医療費など、急な出費に備えるには、負債を差し引いたうえで、実際に使える手元資金がいくらあるのかを正確に把握する必要があります。
そのため、実際に使える資金を把握するためには、純金融資産の把握が重要です。
2.老後資金(リタイアメント)の正確な計算に直結する

老後資金を考える際にも、純金融資産の把握は欠かせません。なぜなら、老後の生活費は、マイホームなどの実物資産ではなく、現金化しやすい金融資産を取り崩してまかなう場面が多いためです。
退職時点で預貯金や投資信託を保有していても、住宅ローンやその他の借入が残っていれば、老後資金として実際に使える金額はその分少なくなります。具体的には、金融資産が2,500万円あっても、ローン残高が800万円あれば、実質的な余力は1,700万円となります。
年金収入に加え、生活費や医療費および介護費などを見込んで老後資金を考えるには、額面上の金融資産額ではなく、負債を差し引いた純金融資産を基準にすることが重要です。
つまり、正確な老後設計をおこなうためにも、まずは純金融資産を確認しておく必要があります。
3.投資のリスク許容度を正しく判定できるようになる
投資を始める際は、純金融資産をもとにリスク許容度を判断することが大切です。リスク許容度とは、資産価格が下落した場合にどの程度の損失までなら受け入れられるかを示す考え方です。金融資産の総額だけを見て投資額を決めてしまうと、負債や生活費を十分に考慮できず、過度なリスクを取ってしまう恐れがあるためです。
例えば、預貯金や投資信託を一定額保有していても、住宅ローンや教育ローンの返済負担が大きい場合、値動きの大きい投資に回せる余力は限られます。一方で、負債が少なく純金融資産に余裕があれば、短期的な値動きに左右されにくく、長期投資にも取り組みやすくなります。
このように、投資判断では金融資産の多さだけでなく、負債を差し引いた純金融資産を基準にすることが重要です。
4.家計の健康状態を定点観測できるようになる
純金融資産は、家計の健康状態を定点観測する指標としても役立ちます。金融資産と負債の両方を反映するため、家計が改善しているのか、それとも悪化しているのかを把握しやすいからです。
毎月または半年に一度、金融資産とローン残高を確認すれば、貯蓄や投資によって純金融資産が増えているのか、借入や支出の増加によって減っているのかが見えてきます。
収入が増えていても、負債がそれ以上に増えていれば、家計が健全な状態にあるとはいえません。
つまり、純金融資産を継続的に確認することで、ライフプランの見直しや支出改善および借入返済のタイミングを判断しやすくなります。
純金融資産の計算方法

「純金融資産を計算するって難しそう」「金融知識が必要なのでは」と思われる方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。計算方法はとてもシンプルで、難しい金融知識がなくても計算できます。
ここでは、具体的な純金融資産の計算方法を示すとともに、計算するにあたっての注意点について解説します。
1.具体的な計算例
計算式は以下の通りです。
- 純金融資産=金融資産-負債
それでは、具体的な数字を用いて説明します。
(具体例)
預金:1,000万円
投資信託:600万円
自動車ローン:300万円
純金融資産は金融資産から負債を差し引いて算出できるので、純金融資産は以下のようになります。
1,600万円 (金融資産)− 300万円(負債) = 1,300万円(純金融資産)
2.計算する際の注意点
純金融資産を計算する際は、持ち家や車などを金融資産に含めないよう注意が必要です。これらは「実物資産」に該当し、純金融資産の計算対象となる金融資産とは区別して考える必要があります。
実物資産を金融資産に含めない理由は、大きく2つあります。
1つ目は、すぐに現金化しにくい点です。持ち家や車はそれ自体に価値がありますが、預貯金や株式、投資信託のように必要なときにすぐ換金できるとは限りません。売却までに時間がかかる場合もあり、生活費や急な支出にそのまま充てにくい資産といえます。
2つ目は、資産価値が変動しやすい点です。例えば、持ち家は不動産市況や立地条件によって評価額が変わります。車も年数の経過とともに資産価値が下がるのが一般的です。
このように、実物資産は換金性や価格変動の面で金融資産とは性質が異なります。純金融資産を計算する際は、持ち家や車などを含めず、預貯金や株式、投資信託などの金融資産を対象にすることが重要です。
純金融資産の階層区分
日本の家計の階層区分を把握する上で、ここでは野村総合研究所(NRI)が定義するデータを引用します。純金融資産額による「5つの階層(ピラミッド)」に分けて全体像を把握してみましょう。
2025年2月に発表された最新の調査(2023年推計値)によると、日本の世帯における純金融資産階層の5つの階層、および世帯数・割合保有額は以下の通りです。[参考1]
【5つの階層および世帯数・割合】
| 階層名 | 純金融資産額 | 世帯数 | 全体に対する割合 |
| 超富裕層 | 5億円以上 | 11.8万世帯 | 全体の約0.2% |
| 富裕層 | 1億円以上〜5億円未満 | 153.5万世帯 | 全体の約2.8% |
| 準富裕層 | 5,000万円以上〜1億円未満 | 403.9万世帯 | 全体の約7.3% |
| アッパーマス層 | 3,000万円以上〜5,000万円未満 | 576.5万世帯 | 全体の約10.3% |
| マス層 | 3,000万円未満 | 4,424.7万世帯 | 全体の約79.4% |
参考1:野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計
純金融資産の階層区分を知ることは、自分が日本全体のなかでどの位置にいるのかを客観的に把握する手がかりになります。
NRIの推計によると、2023年時点で純金融資産1億円以上5億円未満の「富裕層」と5億円以上の「超富裕層」は合計165.3万世帯に達しました。
2021年の148.5万世帯から17.3万世帯も増えており、純金融資産総額も364兆円から469兆円へ拡大しています。富裕層は一部の特別な人だけではなく、資産形成の積み重ねによって到達し得る階層になりつつあります。
その象徴といえるのが、NRIが「いつの間にか富裕層」と呼ぶ層です。株式相場の上昇を背景に、従業員持株会や確定拠出年金、NISAなどで運用していた資産が増え、一般の会社員でも純金融資産1億円以上に達するケースが見られています。
つまり、給与収入だけでなく、長期的に金融資産を保有し続けることが、階層を押し上げる要因になっているといえるでしょう。
また、都市部に住む世帯年収3,000万円以上の大企業共働き世帯に代表される、いわゆる「スーパーパワーファミリー」も今後増加が見込まれています。
NRIによると、スーパーパワーファミリーでは、20~30歳代の間は子育て費用や住宅ローンの支払いがあるものの、昇格や昇給で世帯年収2,000万円を超える40歳前後から金融資産の積み上げが加速し、50歳前後で富裕層に到達する可能性があるとしています。地方部でも、生活コストの低さを踏まえれば、世帯年収1,000万円以上の大企業共働き世帯が60歳前後に富裕層となる可能性があるとしています。
このようなデータは、単に富裕層の増加を示すものではありません。投資を実践している人にとっては、自分の純金融資産が現在どの階層にあり、次にどの水準を目指すのかを考える基準になります。
純金融資産の階層を確認することで、貯蓄や投資、収入アップの目標をより具体的に設定しやすくなるでしょう。
純金融資産がマイナスになる理由とは?
純金融資産は、金融資産から負債を差し引いた金額を指します。そのため、負債の金額が金融資産を上回る場合、純金融資産はマイナスになります。これは、ライフステージによっては珍しいことではありません。
大切なのは、マイナスであること自体を過度に不安視するのではなく、その理由や返済の見通しを把握することです。以下では、純金融資産がマイナスになる主なケースについて解説します。
1.住宅ローンなどの大きな負債があるケース
純金融資産がマイナスになる代表的なケースは、住宅ローンなどの大きな負債を抱えている場合です。
純金融資産は、預貯金や株式、投資信託などの金融資産から、住宅ローンやカードローンなどの金融負債を差し引いて計算します。そのため、預貯金を一定額保有していても、住宅ローン残高がそれを上回れば、純金融資産はマイナスになることがあります。具体的には、金融資産が500万円、住宅ローン残高が2,000万円の場合、純金融資産はマイナス1,500万円です。
ただし、住宅ローンがあるからといって、直ちに家計が危険な状態にあるとは限りません。持ち家は純金融資産の計算には原則含めませんが、実物資産としての価値を持ちます。立地や不動産市況によっては、資産価値の維持や上昇が期待できる場合もあります。
また、住宅ローンでは、万一の際に備えて団体信用生命保険(団信)に加入するのが一般的です。契約内容にもよりますが、債務者が死亡または所定の高度障害状態等になった場合、保険によって住宅ローン残高が返済され、家族に負債のない住まいを残せます。
このように、住宅ローンによって純金融資産が計算上マイナスになることはありますが、その背景には実物資産の保有という側面もあります。返済計画に無理がなく、家計全体として管理できているのであれば、過度に不安になる必要はないでしょう。
2.奨学金やカードローン・リボ払いの影響
奨学金やカードローン、リボ払いなどの返済が残っている場合も、純金融資産を押し下げる要因です。
これらは毎月の返済額が小さく見えるため、家計への影響を見落としがちです。しかし、残高が積み上がれば金融負債として扱われ、純金融資産から差し引かれます。預貯金や投資信託を保有していても、同時に借入が残っていれば、実質的な家計余力はその分小さくなります。
特に注意したいのが、カードローンやリボ払いです。これらは金利負担が大きくなりやすく、返済が長期化すると、利息の支払いが増えて資産形成の妨げになる可能性があります。
純金融資産を改善するには、資産を増やすだけでなく、負債を減らす視点も欠かせません。
とりわけ高金利の借入がある場合は、貯蓄や投資よりも早期返済を優先するなど、家計全体で返済計画を見直すことが重要です。
純金融資産を増やして上の階層を目指す方法
純金融資産を増やして、現在の階層からステップアップするためには、どうしたらよいでしょうか。
以下の、ステップアップが見込まれる4つのアクションプラン(支出を減らす・収入を増やす・運用する)の実践により、着実に資産増加へつなげていきましょう。
- 家計の収支を把握し、無駄な支出を見直す
- 本業での年収アップを目指す・副業を検討する
- NISAやiDeCoを活用する
- ふるさと納税をする
1.家計の収支を把握し、無駄な支出を見直す
純金融資産を増やすには、まず家計の収支を正確に把握することが大切です。収入が多くても、支出が膨らんでいれば手元にお金は残りにくく、金融資産も増えにくいからです。
まずは、家賃や通信費、保険料、サブスクリプションサービスの費用などの固定費に加え、外食費や日用品費、使途不明金などの支出を確認しましょう。家計簿アプリなどを活用して支出内容を見える化すれば、無駄な支出や優先順位の低い支出を把握しやすくなり、生活満足度を大きく損なうことなく家計の見直しにつなげられます。
例えば、月1万円の支出を削減できれば、年間で12万円の資金余力が生まれ、その分を貯蓄や投資あるいは借入返済に回せば、純金融資産の改善につながります。
純金融資産は、金融資産から負債を差し引いた金額です。家計の黒字を増やし、その黒字を着実に積み上げることが、純金融資産を増やす基本といえるでしょう。
2.本業での年収アップを目指す・副業を検討する
純金融資産を増やすには、支出の見直しだけでなく、収入を増やす取り組みも重要です。家計改善には一定の限界があり、より大きな資産形成を目指すには、毎月の収入を上げる必要があるためです。
そこで、本業での昇進や昇給、スキルアップおよび資格取得による待遇改善、あるいは転職による年収アップなどを目指してみましょう。また、本業に支障のない範囲で、副業を検討することも選択肢の一つです。
例えば、月3万円の副収入を継続できれば、年間36万円を貯蓄や投資、借入返済に回せます。収入が増え、家計の黒字幅が広がれば、金融資産を積み上げやすくなり、純金融資産の改善にもつながるでしょう。
3.NISAやiDeCoを活用する
純金融資産を増やす方法として、NISAやiDeCoの活用もよいでしょう。いずれも税制優遇を受けながら、長期的な資産形成に取り組める制度だからです。
NISAでは、一定の投資枠内で得られた運用益が非課税となります。そのため、長期・積立・分散投資をおこなう際に、税負担を抑えながら資産形成を進めやすい点が特徴です。
一方、iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税で再投資できます。老後資金を準備する手段として活用しやすい制度といえるでしょう。
NISAやiDeCoで投資する商品には、運用状況によっては元本を下回る可能性もあります。そのため生活資金を確保した上で、余裕資金の範囲内で無理なく始めることが重要です。
4.ふるさと納税をする
ふるさと納税は、純金融資産を直接増やす制度ではありませんが、家計支出を実質的に抑える手段として活用できます。一定の上限内で自治体に寄付をすると、自己負担2,000円を除いた金額について、所得税や住民税の控除を受けられるためです。
また、寄付先の自治体によっては、返礼品として食品や日用品などを受け取れる場合があります。普段の生活で使うものを返礼品として選べば、日々の支出を抑える効果も期待できます。
ふるさと納税によって抑えられた生活費を、貯蓄や投資、借入返済に回すことができれば、結果として純金融資産の改善にもつながるでしょう。
ふるさと納税を検討している方は、「ふるさと納税をしないほうがいい人の特徴とは?後悔しないための判断基準について」もご覧ください。
まとめ
純金融資産は、預貯金や株式、投資信託などの金融資産から、住宅ローンやカードローンなどの負債を差し引いた金額です。金融資産や総資産と混同されやすいものの、家計の実質的な余力を把握する上で重要な指標といえます。
純金融資産を確認すれば、老後資金の準備状況や投資に回せる余裕資金の有無、家計の健康状態を把握しやすくなります。
一方で、住宅ローンや奨学金、カードローンおよびリボ払いなどの負債が大きい場合、純金融資産がマイナスになることもあります。そのため、純金融資産額だけでなく、資産と負債のバランスや内容も踏まえて判断することが大切です。
純金融資産を増やすには、家計の収支を見直し、無駄な支出を減らすことが基本です。その上で、収入アップや副業、NISA・iDeCoの活用あるいはふるさと納税による家計負担の軽減などを組み合わせることで、将来に向けた資産形成を進めやすくなるでしょう。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
宮本 建一(みやもと けんいち)
マネーライター。銀行・消費者金融・信用組合の勤務を経て独立。融資経験・FPの知見を生かし、各種サイトで主に資金調達、不動産関連記事の執筆を行う。金融専門誌への寄稿、金融機関行職員向けの通信講座教材執筆経験あり。2級ファイナンシャルプランニング技能士、AFP
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ
~47Life編集部からのコメント~
純金融資産は、家計の「通信簿」のようなものです。金額の大小だけに目を向けるのではなく、昨年より増えたか、負債とのバランスはどうかなど、変化を確認することが大切です。まずは、今の家計の状態や将来に向けた準備状況を把握することから始めてみて、無理のない範囲で貯蓄や投資、負債の管理に取り組むことが大切です。
