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よく「高齢出産」という言葉を耳にしますが、何歳からが高齢出産にあたるのか、よくわからないという方も多いかもしれません。
また、高齢出産はリスクをはじめとしたデメリットばかりが注目されますが、メリットもあります。
この記事では、高齢出産とされる年齢や高齢出産のメリット・デメリット、高齢ママが考えておきたい備えなど、出産と年齢に関する気になる情報について解説します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。 法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
高齢出産と言われるのは何歳から?
厚生労働省では、高齢出産は何歳から、と具体的な年齢を定めていません。しかし、日本産婦人科医会が35歳以上で初めて妊娠・出産する人を高年初産と定義していることもあり、一般的には35歳を過ぎての出産は高齢出産と言われています。[参考1]
参考1: 日本産婦人科医会「「高年初産」について教えてください。」
結婚や出産の平均年齢
かつての日本では、20代前半に結婚・出産する人が多数でした。
そのため、20代後半に差し掛かると、「妊娠しにくくなるのでは…」と不安になる方も多いようです。
しかし、近年は男性・女性ともに晩婚化が進んでいます。
内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」によると、2020年の平均初婚年齢は、夫が31.0歳、妻が29.4歳です。2000年と比較すると、夫で0.5歳、妻で0.6歳、平均初婚年齢が上昇しています。[参考2]
このような晩婚化の影響によって、平均出産年齢も自然と高くなり、第1子を出産したときの母親の平均年齢は30.7歳、第2子は32.8歳、第3子は33.9歳と、いずれも30歳を超えています。平均出産年齢も2000年と比較すると第1子で0.8歳、第2子で1歳、第3子で0.7歳上昇しています。[参考2]
さらに「女性の年齢別出生率」を見ると、35歳時点の出生率が2005年では0.06なのに対して、2020年には0.08と増加しています。2005年は36歳で出生率が0,05になる一方、2020年は38歳で0.05になることからも、高齢出産の割合が増加していることがわかります。[参考2]
結婚や出産の平均年齢が高くなっている理由は複数考えられますが、働く女性の増加や、結婚・出産に対する価値観の変化などが主な理由に挙げられています。
また、有名人や著名人が高齢出産したニュースが多数報道されていることも、高齢出産へのハードルが下がる要因となっているようです。
参考2:内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」p13,p9
妊娠の適齢期はいつまで?
高齢出産がめずらしくない時代にはなりましたが、年齢と出産リスクは決して無関係ではなく、出産リスクの低い「妊娠適齢期」が存在すると考えられています。
厚生労働省「第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会 2019年3月15日 妊産婦の診療の現状と課題」に、次のような記載があります。
『母体の高齢化が進み、高齢妊産婦では、周産期死亡率、妊産婦死亡率が高い。』
厚生労働省「 第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会 2019年3月15日 妊産婦の診療の現状と課題 」
男性の場合、思春期以降は毎日、1日数千万個の精子が作られると言われています。
しかし女性の場合、持って生まれた卵子以外、新たに作られることはありません。卵子は女性の出生時に約200万個あると言われていますが、思春期には10分の1にあたる20万個~30万個にまで減少し、閉経時には限りなくゼロに近い数になるとされています。
また、加齢とともに数だけでなく質も低下してしまいます。
日本産科婦人科学会「妊産婦の診療の現状と課題」によると、加齢により死産率や妊産婦の死亡率が上がり、45歳以上の死産率は20代の3倍以上、40歳以上の妊産婦の死亡率は20代前半の4.7倍です。
また、一般社団法人日本生殖医学会の発表によれば、以下のとおり年齢が高くなるほど不妊の可能性が高まる傾向にあることがわかります。[参考3]
- 25歳~29歳:8.9%
- 30~34歳:14.6%
- 35~39歳:21.9%
- 40~44歳:28.9%
以上のことから、妊娠の適齢期は20歳~30歳前後と言えそうです。
参考3:一般社団法人 日本生殖医学会「女性の加齢は不妊症にどんな影響を与えるのですか?」
高齢出産のメリット
高齢出産は妊娠高血圧症候群をはじめとしたリスクが懸念される一方、年齢を重ねた分、経済的・精神的なゆとりがある方が多いといったメリットもあるため、以下で詳しく解説します。
仕事の専門性やキャリアを磨いておける
仕事の専門性やキャリアを若いうちに磨いておけるのがメリットの一つです。子どもができてもバリバリ働きたい!と思っても、現実的にはお子さまの体調不良や保育園・幼稚園の行事など、独身の頃のようにいかないことが多くなります。また、経験を積んでからの方が、仕事が分かっているので復職がスムーズにいきやすくなる傾向にあるでしょう。
精神的にも経済的にもある程度の余裕がある
高齢出産は、出産までに経済的なゆとりが生まれている可能性があります。勤続数年で出産するより、勤続年数が多い状態での出産の方が、業務経験や役職がある方が多く、賃金が高い可能性が高いでしょう。少なくとも就職したばかりの頃より、貯蓄が十分にある方が多いのではないでしょうか。
また、そのような経済的な余裕から精神的なゆとりが生まれることも期待できます。加えて、年齢を重ねたことで経験や人脈が豊富になり、出産や育児についての問題を自分で解決したり、誰かに相談したりといった方法で解消できるなど、落ち着いた状態で出産、育児に臨める方もいるでしょう。
自分の人生を楽しんでから出産できる
妊娠するまでの期間、自分の趣味やキャリア形成、2人だけの新婚生活などを楽しんだ方が多いのではないでしょうか。お子さまがいても自分の人生を楽しめますが、出産前に自分のやりたいことをやりきったというのは強みであり糧でもあるため、育児にも全力で取り組めるでしょう。
高齢出産のデメリット
高齢出産にはメリットがある一方で合併症が起こる可能性をはじめとした、デメリットも考えられます。
ここでは高齢出産のデメリットを解説します。
合併症が起こる可能性が高くなる
高齢の妊娠中は切迫流産や切迫早産以外にも、合併症が起こる可能性も高くなります。高齢出産で注意すべき合併症として挙げられるのが、前置胎盤、胎盤早期剥離、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群です。それぞれの症状は次のとおりです。
合併症名 | 概要 |
前置胎盤 | 胎盤が子宮の出口の一部もしくは全部を覆ってしまっている状態。 帝王切開になることが一般的です。 |
胎盤早期剥離 | 胎盤が子宮壁から剝がれてしまう状態。 大量出血につながってしまう恐れがあります。 |
妊娠糖尿病 | 妊娠によって血糖値が上がってしまう状態。 妊娠高血圧症候群をはじめとした合併症を引き起こす可能性があります。 |
妊娠高血圧症候群 | 妊娠によって高血圧の症状が出てしまう状態。 約20人に1人の割合で発症するとされています。[参考4] |
これらの合併症は赤ちゃんだけではなく、母体にも影響を及ぼしてしまうため、注意が必要です。
参考4:公益社団法人 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
難産や流産、帝王切開になる可能性がある
高齢で初産の場合、産道や子宮口が固くなってしまっているために難産になりやすいとされています。そのため、帝王切開での分娩となる可能性も高まります。また、流産の可能性も高まってしまいます。一般社団法人日本生殖医学会によれば、流産の可能性は加齢とともに上昇して、40歳以上では妊娠の約半数が流産してしまうとされています。[参考5]
参考5:一般社団法人 日本生殖医学会「Q23.女性の加齢は流産にどんな影響を与えるのですか?」
若い頃に比べて体力が低下している
出産は時間がかかればかかるほど、体力を消耗します。高齢出産は難産になりやすい上に、若い頃よりも体力が低下しているため、体力の消耗が激しいことが予想されます。体力の低下は、産後の回復にも影響を及ぼす可能性も考えられます。
また、出産での体力消耗以外にも、体力が低下していることで育児の疲れを感じやすくなってしまうことも懸念されます。
所得制限で子育てに関する手当がもらえない可能性がある
キャリアや専門性を磨いてからの出産なら、経済的余裕をもって迎えやすいというメリットがある一方、子育てに関する手当の所得制限の対象から外れてしまう可能性もあります。例えば、子育てについての手当のなかでも、0歳から15歳(15歳到達から最初の3月31日)まで支給される児童手当は、2022年10月支給分より、扶養親族の数に応じた所得制限を超えていると支給されなくなっています。[参考6]
参考6:内閣府「児童手当制度のご案内」
高齢出産の費用はどれくらいになる?
高齢出産の場合、費用は変わるのか、また、どれくらいかかるのか気になる方もいるのではないでしょうか?気になる費用について解説します。
出産費用は病院や出産方法によって変わる
出産費用は病院や出産方法によって大きな差が出ます。厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)」によると、公的病院での平均出産費用は約50万円と、民間病院の約55万円よりも抑えられています。出産方法でみてみると、正常分娩は50万円を超えていて、50万円を下回っている異常分娩よりも平均出産費用が高くなっています。[参考7]
しかし、異常分娩の場合、費用の幅があり、高額帯のバラツキは正常分娩よりも大きくなる傾向にあります。また、同調査からは年齢が高まるにつれて、出産費用も上がることがわかります。30歳~31歳は約40万円なのに対して、33歳になると約60万円になっています。[参考8]このように高齢出産は出産する病院、分娩方法、年齢によっては高額になる可能性が考えられるでしょう。
出産費用については、「出産に保険は使える?費用負担を減らすための方法とは」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
参考7:厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)」P4
参考8:厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)」P5
教育費と老後資産の問題も
子どもを産み育てるための費用は決して安くはありません。
特に大きいのは教育費で、子ども1人あたりの教育費の目安は幼稚園から大学まで国公立まで通った場合は約900万円かかります。しかし、以下の表のとおり、すべて私立に通うと約2,300万円の教育費が必要と考えられます。[参考9][参考10]
幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | 合計 | |
すべて国公立の場合 | 47万2,746円 | 211万2,022円 | 161万6,317円 | 154万3,116円 | 253万6,757円 | 828万958円 |
すべて私立の場合 | 92万4,636円 | 999万9,660円 | 430万3,805円 | 315万6,401円 | 396万9,723円 | 2,235万4,225円 |
子どもの将来の進路に合わせた教育費の準備が必要になります。
40歳以降に出産した場合、子どもが大学を卒業するころには定年退職間近、もしくは定年退職後である可能性もあり、教育費のピークと自分たちの老後の資金づくりが重なる傾向にあります。
また、出産までに十分に貯蓄できていれば問題ありませんが、子どもが生まれてから貯蓄を始めた場合、教育費の工面が難しくなるかもしれません。
出産費用よりも、子育てにかかる費用のほうが何倍も大きいので、計画的にお金を貯めることが大切です。
教育費については、「教育費は平均いくら?幼稚園から大学までに準備するべき総額とは」で詳しく解説していますので、ぜひそちらも参考にしてください。
参考9:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します」P2
参考10:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
高齢ママが考えておきたい備え
以上のように高齢出産にはメリットだけではなく、デメリットも考えられます。
高齢出産による金銭的なリスクを軽減するためには、あらかじめ保険などで備えておきましょう。
とくに民間の学資保険、医療保険を活用するのがおすすめです。
学資保険
学資保険とは、契約時にあらかじめ定めた保険料を払い込むことによって、子どもが一定の年齢(18歳など)に達したとき、まとまった保険金を受け取れる保険商品のことです。
たとえば、フコク生命の学資保険「みらいのつばさ」は「子どもの入園・入学のたびに祝い金を受取りたい」、「負担が大きい大学進学にあわせて満期保険金を受取りたい」など、ご家庭のライフスタイルにあった教育費の準備が可能です。
出産前からの相談が可能な保険会社が多いので、赤ちゃんのお世話が始まる前に一度検討しておくのがおすすめです。
民間の医療保険
民間の医療保険に加入していると、帝王切開などの異常分娩で入院した場合、健康保険が適用される入院で、かつ契約上の必要入院日数を満たしているなど、保険会社ごとの所定の条件を満たせば入院給付金を受けることができます。
これから妊娠・出産を考えている方は、高齢出産への備えが充実した保険への加入を考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
さまざまな価値観、生き方が肯定される現代では、結婚も出産もタイミング次第とはいえ自分がベストだと思う時期にできると良いと考える方が増えています。結婚も出産も平均年齢が年々高くなっていますが、高齢出産には経済的、精神的な余裕をもって出産に臨める、出産前に専門性やキャリアを磨いておけるといったメリットがあります。
一方で、合併症を引き起こす可能性があるなど、妊娠中のトラブルが発生しやすくなりますので、高齢出産になる場合は、通常の妊娠より一層の注意が必要です。
また高齢出産は出産費用が高くなる傾向にある上に、教育費を工面する必要があるため、早い段階から将来への備えを計画しておくことをおすすめします。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。 法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ