育児中に受け取れる手当のすべて

育児中に受け取れる手当のすべて

働いている人自身またはパートナーの出産にともなって産前産後休業や育児休業を取得した場合、休業中は原則として給与が支給されません。

収入が途絶えてしまうと育児に専念できなくなってしまいますが、国が設けている育児中の手当金等を受給すれば、産休中・育休中でも一定の収入を得ることができます。

ただ、育児中の手当金を受け取るにはいくつかの条件がありますので、自分が受給資格を保有しているかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。

この記事では、育児中に受け取れる手当の種類や受給の条件について解説します。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

育児中に受け取れる手当はどんなものがある?

育児中に受け取ることができる手当のうち、最も代表的なものが「育児休業給付金」です。

名前の通り、育児休業を取得している人を対象とした公的な制度で、所定の要件を満たした方には休業期間を通じて給付金が支給されます。

育児休業給付金の受給条件や支給額について、詳しくは後述しますので、そちらを参考にしてください。

なお、育児休業中は健康保険や厚生年金といった社会保険料や、雇用保険料の納付が免除されます。[注1] [注2]

ただし、公的な育児休業とは別に、会社側が独自に設けた育児休暇制度により会社から賃金や手当金が支払われた場合は、たとえ育休中であっても雇用保険料を負担しなければならないので要注意です。

育児休暇は会社の義務ではなく、会社によって任意で制定されるものですので、勤め先に育児休暇があるかどうかわからない場合は、あらかじめ就業規則をチェックしておきましょう。

公的な育児休業については、「育児休業を取りたい!給付金額や期間、申請方法をまるっと解説」でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

[注1]日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業を取得・延長したときの手続き
[注2]厚生労働省「産休と育休(お金のこと)

育児休業給付金の受給条件と計算方法

育児休業給付金を受給するには、育児休業を取得しており、かつ育児休業を開始した日より前2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上あることが条件となります。[注3]

ただし、例外として被保険者期間が12ヵ月以上ない場合でも、期間中に第1子の育児休業や本人の疾病等がある場合は受給要件が満たすとみなされる場合もあります。

なお、ここで言う「12ヵ月」とは、育児休業開始日の前日から1ヵ月ごとに区切った期間の就業日数が11日以上ある月が12ヵ月以上あることを意味します。

正社員なら高確率で条件を満たしますが、パートや契約社員の場合、働き方によっては条件を満たさない可能性がありますので、育児休業給付金の申し出を行う前に、自分の労働状況をあらかじめ確認しておきましょう。

また、上記の条件を満たしていても、育休中に企業から1ヵ月当たりの賃金の8割以上が支給されている場合は、育児休業給付金を受け取ることができません。

会社によっては独自の育児休暇制度により、育休中に一定の賃金を支払う制度を定めているところもありますので、育児休暇制度のある会社に勤めている場合は、その内容をチェックしておく必要があります。

そのほかにも、育休中の1ヵ月当たりの就業日数が10日を超えた場合、育児休業給付金の支給対象外となりますので要注意です。

[注3]厚生労働省「Q&A~育児休業給付~

育児休業給付金の支給が延長されるケースもある

育児休業給付金は、1歳(両親が取得する場合は1歳2ヵ月)未満の子を持つ親が育児休業を取得した場合に支払われるものなので、通常であれば子が1歳になったと同時に支給は打ち切られます。[注4]

ただし、以下2つの要件を満たしている場合は、育児休業が最大2回・最長2年まで延長されます。

①子の保育所への入所が叶わず、1歳になった後も保育所に入所できる見込みがない場合

②子が1歳になった後の養育を行う予定だった配偶者が死亡、負傷、疾病等になった場合

1回目は1歳6ヵ月まで延長、それでも問題が解消されない場合は最長2歳まで休業期間が延長されます。

その場合、育児休業給付金の支給期間も延長されますので、延長前と同じ条件で休業期間を過ごすことが可能です。

ただ、延長するにあたっては、要件を満たしていることを証明する書類を用意する必要があります。

上記①の場合は市町村が発行した保育所等の入所保留の通知書など、②の場合は世帯全員について記載された住民票の写し及び母子健康手帳などを添付し、育児休業給付金申請書に必要事項を記載して申請します。

[注4]日本年金機構「育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します

育児休業給付金の計算方法

育児休業給付金は、休業開始時の賃金日額に支給日数を掛け、所定の給付率を乗じて計算します。

給付率は、育児休業開始から6ヵ月(180日間)までは67%、6ヵ月が経過した後(181日目以降)は50%になります。[注5]

たとえば休業開始時の賃金日額が13,000円だった場合、育児休業給付金の月額は以下のように計算します。

180日目まで:13,000円×30日間×67%=261,300円

181日目以降:13,000円×30日間×50%=195,000円

なお、ベースとなる休業開始時の賃金日額は、育児休業を開始する前6ヵ月間の賃金を180で割って求めた金額が適用されます。

一方、会社独自の育児休暇制度によって休暇中に会社から賃金が支払われている場合、支給額が休業開始時の賃金月額に対してどのくらいの割合を占めているかによって異なります。

支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の30%以下の場合の支給率は50%、休業開始時の賃金月額の30%超~80%未満の場合の支給率は80%となります。[注6]

[注5][注6]厚生労働省「育児休業給付について

育児休業給付金以外に受け取れる手当と受け取り方法

育児休業給付金以外にも、産休中や育休中に受け取れる手当がいくつかあります。

ここでは、育児休業給付金以外に受給できる手当を3つご紹介します。

1.出産手当金[注7]

出産にともない、仕事を休業している人が受給できる手当金です。

出産日以前42日~出産の翌日以後56日までの間に休業した日数1日につき、標準報酬日額の2/3に相当する額が支給されます。

手当を受給するには、出産手当金支給申請書に所定の事項を記入し、医師(助産師)や会社にも必要事項を記入してもらってから申請する必要があります。

[注7]全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産で会社を休んだとき

2.出産育児一時金[注8]

出産した方に対し、子どもひとり当たり42万円を支給する制度です。

直接支払制度に対応している医療機関で出産した場合は、所定の手続きを行うことにより、健康保険組合から直接医療機関に一時金が支払われます。

もし医療機関に支払う金額が42万円に満たなかった場合、健康保険組合に請求すれば差分を支給してもらえます。

[注8] 全国健康保険協会(協会けんぽ)「子どもが生まれたとき

3.児童手当[注9]

中学校卒業までの児童を養育している保護者に支給される手当です。

3歳未満の子にはひとり当たり月額15,000円、3歳以上小学校修了前の子にはひとり当たり月額10,000円(第3子以降は15,000円)、中学生の子にはひとり当たり月額10,000円がそれぞれ支給されます。

児童手当の支給を受けるには、子どもが生まれた後、現住所の市区町村役場に認定請求書を提出する必要があります。

ただし、以下のように世帯主の所得額に制限がありますので、注意してください(所得と年収の額は異なります。世帯主の所得額がわからない場合は、右側の「年収の目安」欄を参考にしてください)。

扶養親族等の数所得制限限度額年収の目安
0人
(前年末に児童が生まれていない 等)
622万円833.3万円
1人
(児童1人 等)
660万円875.6万円
2人
(児童1人+年収103万円以下の配偶者 等)
698万円917.8万円
3人
(児童2人+年収103万円以下の配偶者 等)
736万円960万円
4人
(児童3人+年収103万円以下の配偶者 等)
774万円1,002万円
5人
(児童4人+年収103万円以下の配偶者 等)
812万円1,040万円

[注9]内閣府「児童手当制度のご案内

ここでご紹介した手当は、いずれも公的なものです。産前産後休業そのものに対しては公的な手当がなく、また産前産後休業中や育児休業中に会社から給与が支給されるかどうかは、その会社の就業規則によります(会社側には給与を支払う義務がないため)。

産休について詳しくは「産休の基本。期間や申請方法は?男性も取得できる?」で解説していますので、あわせて確認してみてください。

ママが育休中に受け取れる手当シミュレーション

ここまでご紹介した育休中の手当に関する情報を参考に、出産したママ(Aさん)がどのくらいの手当金をもらえるかをシミュレーションしてみました。

シミュレーションの条件は以下の通りです。

  • 毎月の額面給与:25万円(標準報酬月額26万円)
  • 出産予定の子ども:1人
  • 出産予定日:2021年4月1日
  • 勤め先の住所:東京都
  • 産前産後休業期間:2021年2月24日~6月1日
  • 育児休業期間:2021年6月2日~2022年4月5日
  • 世帯主(夫)の年収:550万円

上記の例では、Aさんは出産育児一時金42万円のほか、①出産手当金 ②育児休業給付金 ③児童手当の3つの給付金を受け取ることができます。

  • 出産手当金:

Aさんは産前42日、産後56日の産前産後休業を取得していますので、(標準報酬月額26万円÷30日)×2/3×98日間=56万6,440円の出産手当金が支給されます。

※30日で割ったところで、1の位を四捨五入します。
※2/3を掛けたところで、小数点があれば、小数点第1位を四捨五入します。

  • 育児休業給付金:

産後に取得する育児休業給付金は、25万円×6ヵ月÷180日間=8,333円を休業開始時の賃金日額とします。

育児休業給付金の支給日数は原則として30日ですが、育児休業終了日を含む支給単位期間は休業終了日までの日数で計算されます。

最初の6ヵ月間:8,333円×180日間×67%=100万4,959円
6ヵ月目以降:8,333円×125日間×50%=52万812円

以上となり、育児休業給付金の総額は152万5,771円となります。

  • 児童手当:

児童手当では中学校卒業までの毎年、6月、10月、2月に前月分までの手当が支給されます。支給額は児童の年齢によって異なり、3歳未満であれば第何子であっても一律15,000円です。

Aさんの場合、世帯主(夫)の所得が制限額以下のため、児童手当を受け取ることができます。Aさんが育児休業中にもらえる児童手当は、2021年6月〜2022年1月分までですが、子どもの中学卒業までは支給されるため、育児休業明けの2022年6月に、同年2月〜4月分が支給されます。

育児休業期間にもらえる児童手当の合計は、

15,000円×11ヵ月=165,000円

となります。

つまり、Aさんは職場に復帰するまでに総額251万2,211円と、別途児童手当165,000円を受給できることになります。

まとめ

育児中には、育休中に受給できる育児休業給付金をはじめ、出産育児一時金や出産手当などの各種手当を受け取ることができます。

それぞれの手当を受給するには所定の申請が必要ですので、忘れずに手続きを済ませておきましょう。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

記事提供元:株式会社ぱむ