「投資は余剰資金で」とよく言われますが、自分にとっての余剰資金がいくらなのか分からず、お悩みの方も多いかもしれません。生活費や近い将来使う予定のお金まで投資に回してしまうと、いざというときに困る可能性があります。
この記事では、余剰資金の意味や目安の計算方法を分かりやすく解説します。
自分に合った金額を把握し、安心して資産形成を始めるための参考にしてください。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
そもそも「余剰資金(よじょうしきん)」とは
まずは余剰資金の正しい意味と、万一に備える生活防衛資金との違いを明確にしましょう。あわせて、投資を余剰資金でおこなうべき理由も解説します。
1. 余剰資金の正しい意味と定義
余剰資金とは「当面使う予定がなく、万一失っても生活に支障が出ないお金」を指します。
例えば、毎月の食費や家賃、光熱費などの生活に必要なお金は含まれません。また、1年後の海外旅行の費用や、2年後に購入する車の頭金など、使い道が決まっているお金も余剰資金には含まれません。
つまり、生活費や将来使う予定のお金を確保した上で、資産運用に回しても問題のないお金を余剰資金と呼びます。
2. 生活防衛資金との違い
余剰資金と混同されやすい言葉に「生活防衛資金」があります。これは、病気やケガ、失業といった予期せぬトラブルで収入が途絶えた場合に備えるお金です。すぐに使えるよう、現金や預貯金で確保しておくのが基本です。
生活防衛資金が「万一の際に生活を守るためのお金」であるのに対し、余剰資金は「当面使う予定がなく、資産運用に回せるお金」という点で役割が異なります。
資産形成を考える際は、まず生活防衛資金を準備し、その上で残ったお金を余剰資金として活用するのが正しい順番です。
生活防衛資金についてより詳しく知りたい方は「生活防衛資金とは?金額の目安や貯め方のポイントを紹介」もご覧ください。
3. なぜ「投資は余剰資金で」と言われるの?
株式や投資信託などの金融商品には価格変動があり、元本割れのリスクがともないます。生活に必要なお金を投資に回してしまうと、相場が下落した際に次のような事態に陥る可能性があります。
- 精神的に余裕がなくなり、慌てて売却するなど冷静な判断ができなくなる
- 急な出費でお金が必要になった際に、損失が出ている状態で売却せざるを得なくなる
このような事態を避けるには、生活に必要なお金と投資に回すお金を分けて考える必要があります。長期的な視点で資産形成を続けるためにも、投資は必ず余剰資金の範囲でおこないましょう。
自分の余剰資金はいくら?目安と計算方法

自分の余剰資金がいくらになるのか、計算する方法を4つのステップに分けて解説します。
1. ステップ1:現在の「現金と預貯金」を把握する
まずは、投資に回せる可能性があるお金がどのくらいあるのか、確認してみましょう。
対象となるのは、次のような現金や預貯金です。
- 手元の現金
- 普通預金
- 定期預金
これらを合計した金額が、余剰資金を計算する基準となります。
2. ステップ2:「生活防衛資金」を差し引く
次に、ステップ1で算出した合計額から、病気や失業といった不測の事態に備えるための「生活防衛資金」を取り分けます。生活を守るためのお金なので、投資には回さずにいつでも引き出せる状態で手元に残しておきましょう。
生活防衛資金の一般的な目安は、会社員の方なら生活費の3〜6ヵ月分、自営業やフリーランスなど収入が変動しやすい方は1年分程度と言われています。
例えば、毎月の生活費が25万円の会社員の方なら、75万円〜150万円程度を非常時のために確保しておくとよいでしょう。
3. ステップ3:「近い将来使う予定のお金」を差し引く
生活防衛資金とは別に、数年以内に使うことが決まっているお金もあらかじめ確保しておきます。ライフイベントにかかる費用を投資に回してしまうと、必要なタイミングで資金が足りなくなる可能性があるためです。
具体的には、3〜5年以内に予定している結婚や出産、車の購入、住宅の頭金、子どもの教育費などが該当します。これらのライフイベントにかかる費用をリストアップし、総額を計算して差し引いてください。
まだ具体的な金額が決まっていない場合は、おおよその費用を見積もって計算すると良いでしょう。
4. ステップ4:残った金額が「余剰資金」
ここまでのステップを経て残った金額が、当面使う予定がなく、万一失っても生活に影響が出にくい「余剰資金」です。この範囲で投資すれば、落ち着いて運用できます。
これまでの計算を式にまとめると、以下のようになります。
- 現金と預貯金 - 生活防衛資金 - 近い将来使う予定のお金 = 余剰資金
まずはこの計算式に沿って、自分の余剰資金がいくらあるのかを把握してみてください。
余剰資金がない場合はどうする?作り方のコツを紹介
ここでは、できるだけ生活に負担をかけずに、余剰資金を生み出すためのコツを3つお伝えします。
1. まずは家計の「固定費」を見直してみる
余剰資金を生み出すために、まず取り組みたいのが固定費の見直しです。固定費は一度見直すだけで節約効果が続くため、食費などを切り詰めるよりもストレスなく支出を減らせます。
例えば、次のような項目を見直してみましょう。
- スマートフォンの料金プランを格安SIMに変更する
- 利用頻度の低いサブスクリプションサービスを解約する
- 保険の保障内容を見直し、不要な特約を外す
これらを見直すだけでも、年間で考えると大きな節約につながる可能性があります。
2. 先取り貯蓄を毎月の習慣にする
なかなかお金が貯まらない方は「先取り貯蓄」を習慣にしてみましょう。先取り貯蓄とは、給与が振り込まれたタイミングで、貯蓄や投資に回す金額を先に別の口座へ移してしまう方法です。
「月末にお金が余ったら貯蓄しよう」と思っていても、なかなか思い通りに貯まりません。しかし、あらかじめ貯める分を分けておけば、残ったお金の範囲内でやりくりする習慣が自然と身につきます。
例えば、銀行の自動積立定期預金を活用すると毎月自動で積み立てられるため、手間がかからず続けやすいでしょう。
3. 少額から投資をはじめて、まずは経験を積む
固定費の見直しや先取り貯蓄を続けながら、少額から資産運用に挑戦してみるのも一つの方法です。
投資と聞くと大きな元手が必要なイメージがあるかもしれませんが、まとまった余剰資金ができるまで待つ必要はありません。最近は、投資信託の積立投資なら月々100円や数千円といった少額から利用できるサービスも増えています。
また、買い物で貯まったポイントを活用できる「ポイント投資」を利用すれば、現金を使わずに始めることも可能です。少額でも投資を体験してみると、「値動き」の感覚をつかみやすくなり、経済への関心も高まります。
まずは無理のない範囲でスタートして、少しずつ投資に慣れていきましょう。
余剰資金の活用方法
余剰資金があれば、お金を増やすだけでなく、自分自身の成長やかけがえのない経験のためにも使えます。人生をより充実させるために、代表的な3つの使い道を見ていきましょう。
1. 将来に備えてNISAやiDeCoで運用
余剰資金の活用方法としてまず考えたいのが、将来に向けた資産運用です。税制面でメリットのあるNISAやiDeCoは、資産形成を後押しする制度として多くの人に利用されています。
それぞれの制度の特徴は以下のとおりです。[参考1]
- NISA
・投資で得た利益が非課税になる制度
・年間投資枠は最大360万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円
・非課税保有期間に制限がなく、必要に応じて資産を引き出せる - iDeCo
・老後資金づくりを目的とした私的年金制度(自分で掛金を積み立てて運用)
・掛金は全額所得控除の対象となり、運用益も非課税
・原則60歳まで資産を引き出せない
初心者が投資をする場合は「長期・分散・積立」を意識すると、価格変動の影響を抑えやすくなります。具体的には、長期間にわたって投資先を分散しながら積立投資を続ける方法です。
NISAやiDeCoで投資信託を積み立てれば、税制上のメリットを受けながら「長期・分散・積立」を実践できます。
あくまで余剰資金の範囲内で、無理のない金額から始めて長く続けましょう。
参考1:金融庁「NISAを知る」
国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」
2. スキルや健康など自分への投資
余剰資金は資産運用だけでなく、自分自身に投資するのもおすすめです。知識や能力、健康にお金を使うことは、将来の収入アップや充実した生活につながる可能性があります。
例えば、次のような使い道が考えられます。
- 語学やプログラミングなど、新しい知識やスキルを身につけるための学習
- 仕事に役立つ資格の取得やセミナーへの参加
- 書籍の購入やオンライン講座受講による知識の習得
- フィットネスジムやスポーツ教室に通い、運動習慣を身につける
- 人間ドックや健康診断を受け、病気の予防や早期発見に役立てる
すぐに成果が表れるとは限りませんが、自分自身の知識や能力、健康にお金を使うことは、将来に役立つ価値ある投資といえるでしょう。
3. 旅行や趣味など非日常の体験・思い出作り

将来への備えや自己投資とあわせて考えたいのが、人生の満足度を高める「経験への投資」です。今しかできない体験にお金を使うことも、余剰資金の有意義な活用方法です。
具体的には、次のような使い方が考えられます。
- 家族や友人との旅行で、新しい景色や文化に触れる
- 少し贅沢なレストランでの食事や、普段は買わない食材で料理を楽しむ
- 趣味の道具を新調したり、新しい趣味を始めたりする
- 音楽ライブや観劇、スポーツ観戦などで非日常を味わう
洋服や家電などの「モノ」から得られる満足感もありますが、楽しい思い出や新しい発見といった「経験」は、時間が経っても心に残り続けます。
将来のための資産形成と、今の生活を楽しむことのバランスを取りながら、余剰資金を自分に合った形で活用していきましょう。
まとめ
この記事では、余剰資金の意味や生活防衛資金との違い、具体的な計算方法について解説しました。余剰資金とは、日々の生活費や万一の備え、近い将来に使う予定のお金を除いた、当面使うあてのないお金のことです。
資産形成を始める際には、まず自分の余剰資金がいくらあるのかを把握しましょう。投資に回せる金額の目安が分かれば、生活に必要なお金を取り崩すリスクを抑えながら、長期的な視点で資産形成に取り組めます。
また、余剰資金の使い道は投資だけではありません。自分の成長や思い出作りに使うことで、人生がより充実したものになります。この記事を参考に、自分に合った余剰資金の使い方を考えてみてください。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
田辺 容子(たなべ ようこ)
FPライター。証券会社にて個人向け資産運用のアドバイス業務に約10年間従事。現在は、実務経験と金融資格、自身の投資経験を活かし、金融分野に特化したライターとして活動中。メガバンクのコンテンツ制作や大手金融メディアでの記事執筆など、信頼性が重視される案件を多数手がけている。2級FP技能士、証券外務員一種。
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ
~47Life編集部より~
投資に興味があっても、「減ったらどうしよう」「自分にできるかな?」と不安に思う方もいるでしょう。まずは「余剰資金」を計算して、ご自身が無理なく活用できるお金を把握することから始めてみてください。
生活に必要なお金や将来の予定を整理してみることで、安心して資産形成に取り組むためのヒントが見つかるかもしれません。

