会社員でもできる節税対策7選!注意するべきポイントもあわせて解説

会社員でもできる節税対策7選!注意するべきポイントもあわせて解説

「節税」というと、自営業や個人事業主がやるものというイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、実際には企業に属する会社員もさまざまな税金が天引きされており、給与に少なからず影響を与えています。

会社員の方も節税すれば手元に残るお金が増えますので、自分に合った方法で税金の節約に取り組んでみましょう。

この記事では、会社員でもできるおすすめの節税対策と、節税するときの注意点について解説します。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

そもそも会社員は給与から何が引かれている?

会社員でもできる節税対策をチェックする前に、まずは会社員の給与からどんな項目が天引きされているのか確認してみましょう。

給与から天引きされる項目は給与明細に記載されており、代表的なものは以下の5つです。

1. 所得税

最も代表的なものが所得税です。所得税とは、毎月の給与から源泉徴収(天引き)される税金のひとつで、名前の通り、所得に対して課税されます。

所得税の計算では、まず給与の収入金額(年収)から給与所得控除額を差し引いて給与所得の金額を算出します。給与所得控除額は以下の通りです。

給与所得控除額(令和3年分)

収入金額(年収)給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで年収×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで年収×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで年収×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで年収×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円

※実際に収入金額が660万円までの場合、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で給与所得の金額を計算するため、上記の計算とは若干異なる場合があります。
参考:国税庁「給与所得者と税

例えば、年収500万円の場合、
給与所得控除額=年収500万円×20%+44万円=144万円
給与所得の金額=給与の収入金額500万円-給与所得控除額144万円=356万円
となります。

次に、給与所得の金額から所得控除額を差し引いて課税所得金額を算出します。所得控除には扶養控除や配偶者控除など全15種類あります。

例えば、先ほどの年収500万円の人が受けられる所得控除額が
社会保険料控除60万円+生命保険料控除10万円+配偶者控除38万円+扶養控除76万円+基礎控除48万円=232万円
だとすると、
課税所得金額=給与所得の金額356万円-所得控除の合計額232万円=124万円
となります。

最後に、課税所得金額に所得税の税率を掛け、所得税額を算出します。

税率は課税所得に応じて以下のように6つに区分されています。

令和3年分所得税の税額表

課税所得額所得税率控除額
1,000円~1,949,000円5%0円
1,950,000円~3,299,000円10%97,500円
3,300,000円~ 6,949,000円20%427,500円
6,950,000円~8,999,000円23%636,000円
9,000,000円~17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円~39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円~45%4,796,000円

参考:国税庁「所得税の税率

そのため、
所得税額=課税所得金額124万円×所得税の税率5%=6万2,000円
となります。

また現状は、所得税額から税額控除(住宅ローン控除など)を差し引いた後の金額と、その金額に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税額を合計し、所得税及び復興特別所得税の額を計算します。

そのため、
最終的な所得税額=所得税額6万2,000円+復興特別所得税額(6万2,000円×2.1%)=6万3,300円
となります。

2. 住民税

住民税とは「市町村民税」と「道府県民税」(東京都は「特別区民税」と「都民税」)を合わせた総称で、1月1日の時点で住んでいる地域の自治体によって課税されます。

住民税には、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、定額で課税される「均等割」があり、前者の標準税率は市町村民税(特別区民税)が6%、道府県民税(都民税)が4%の計10%、後者の標準税率は市町村民税(特別区民税)が3,500円、道府県民税(都民税)が1,500円となっています。

一般的に、特別な理由がない限りは標準税率が採用されるため、会社員の方は前年の給与所得×10%+5,000円の住民税を納めることになります。

参考:財務省「住民税を知ろう

3. 雇用保険料

雇用保険料とは、雇用保険に対する掛金のことです。

事業主と従業員が折半して支払う仕組みになっており、賃金総額(各種手当や賞与を含めた、賃金の総額)に雇用保険料率を掛けて求めます。

雇用保険料率は、毎年厚生労働省から発表されます。

たとえば、令和3年度における一般の事業の雇用保険料率は、労働者負担が3/1,000、事業主負担が6/1,000となっています。

参考:厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率について

4. 厚生年金保険料

厚生年金保険料とは、公的年金保険に対する掛金のことです。

雇用保険料と同じく労使折半となっており、保険料率18.3%のうち、従業員はその半分の9.15%を負担します。

参考:日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)

5. 健康保険料(社会保険料)

健康保険料とは、協会けんぽなどの健康保険(社会保険)に対する掛金のことです。

健康保険料も労使折半で、保険料率は加入している保険組合や都道府県によって異なります。

会社員でもできるおすすめ節税対策7選

会社員の給与から天引きされる項目のうち、雇用保険料や厚生年金保険料、健康保険料などは標準報酬月額をもとに算出されるため、節約することはできません。

しかし、所得税や住民税は所得に一定の税率を乗じて計算するため、課税所得額を抑えることで節税することが可能です。

節税の方法はいろいろありますが、ここでは会社員でもできるおすすめの節税対策を7つご紹介します。

1. iDeCo(イデコ)

iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金の愛称で、毎月一定額を積み立てながら運用し、60歳以降にその運用の成果を受け取ることができる制度です。

一定額を積み立てて運用するという点は一般的な積立投資と似ていますが、iDeCo(イデコ)の場合、掛金のすべてが所得控除の対象となるほか、運用によって生じた利益も非課税で再投資することが可能です。

さらに、iDeCo(イデコ)の給付金は公的年金等控除または退職所得控除の対象となるため、運用するときも受け取るときも税金を節約できます。

参考:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)のイイコト

2. 生命保険料控除・地震保険料控除

個人で生命保険や地震保険に加入し、それぞれの保険料を支払った場合、年間の支払保険料に応じて一定額が控除されます。

生命保険料の控除額の計算方法は、平成23年12月31日以前に締結した保険(旧契約)と、それ以降に締結した保険(新契約)によって異なるものの、最高12万円の控除を受けられます。

あまり知られていませんが、学資保険も生命保険料控除の対象になります。学資保険も控除対象になる理由や生命保険料控除による節税額を詳しく知りたい方は「学資保険は生命保険料控除の対象!気になる控除の金額は?」もあわせて読んでみてください。

また、フコク生命の「生命保険料控除計算サポートツール」では、5つのステップに沿って数字を入力するだけで簡単に年末調整時に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」への記入ができるようになります。フコク生命以外の保険商品に加入の場合でも利用可能ですので、ぜひ活用してみてください。

一方の地震保険料も、現行の地震保険と、平成18年12月31日までに締結した一定の長期損害保険契約等にかかる保険料(旧長期損害委保険料)によって控除額の計算方法が異なり、最高5万円が控除されます。

参考:国税庁「保険と税

3. ふるさと納税

ふるさと納税とは、全国の自治体に任意で寄付できる制度のことです。

寄付金のうち、2,000円を超える部分については所得税の還付や住民税の控除が受けられるため、税金の節約につながります。

また、ふるさと納税を行うと、寄付した自治体から返礼品として地域の名産品などのお礼品も受け取ることができます。

参考:国税庁「ふるさと納税(寄附金控除)

47アンケートページの「【確定申告終了】ふるさと納税した?いくら寄付して何をもらった?」では、47都道府県の平均寄付金額ランキングなどを紹介していますので、あわせて読んでみてくださいね。

4. 住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得、増改築などを行い、かつ一定の要件を満たすときに所得控除を受けられる制度です。

取得した住宅の床面積や所得制限など、一定の要件を満たす必要はありますが、条件に該当すれば、住宅の取得等にかかる住宅ローン等の年末残高の合計額をもとに計算した金額を所得税額から控除できます。

控除期間は入居した時期によって異なります。たとえば、令和3年度税制改正後の住宅ローン控除は13年間です。

参考:国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ

5. 医療費控除

医療費控除とは、1年(1月1日~12月31日)の間に世帯で支払った医療費が一定額を超えた場合に所得控除を受けられる制度です。

医療費控除の金額は、実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円(その年の総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%の金額)で、最高で200万円までが控除されます。

具体的には、医師等による診療等を受けるために支払った通院費や往診時の医師等の送迎費、入院時に支払う部屋代や食事代、助産師による分娩費、かぜの治療のために薬局で買う一般的な医薬品の購入費などが医療費控除の対象となります。

参考:国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)

6. 配偶者控除

配偶者控除とは、合計所得金額が1,000万円以下であり、かつ配偶者のいる納税者に適用される控除制度のことです。

控除の対象となる配偶者は、以下4つの要件を満たしている必要があります。

  1. 民法の規定による配偶者である(内縁関係は不可)
  2. 納税者と生計を一にしている
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下である
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でない

控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額や、配偶者の年齢によって異なり、13万円~48万円が控除されます。

参考:国税庁「配偶者控除

7. 扶養控除

扶養控除とは、納税者に控除対象扶養親族となる人がいる場合に適用される控除制度のことです。

ここでいう「扶養親族」とは、以下4つの要件すべてを満たす人のことを指します。

  1. 配偶者以外の親族(配偶者には配偶者控除を適用)
  2. 納税者と生計を一にしている
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でない

扶養控除額は扶養親族の年齢や同居の有無によって異なり、38~63万円が控除されます。

参考:国税庁「扶養控除

以上、7つの節税対策を紹介しましたが、控除を受けるための手続きは対策方法によって異なります。

1~3および5~7は会社で行う年末調整によって控除を受けられますが、4の住宅ローン控除の初年度に関しては自分で確定申告をしないと控除を受けることができません。

年末調整は会社から交付される各種申告書に必要事項を記載し、勤務先に提出すればOKです。

会社員が確定申告を行う場合に手続きについては、「会社員でも自分で確定申告をする必要がある場合・したほうがトクする場合を解説!」も参考にしてください。

メリットだけではない!?節税対策の注意点

節税対策はメリットが多い一方、いくつか注意しなければならない点があります。

ここでは、節税対策を行う上で知っておきたい注意点を3つご紹介します。

1. iDeCo(イデコ)は原則60歳まで引き出せない

iDeCo(イデコ)はもともと老後の資産形成を目的とした制度で、原則として60歳まで掛金とその運用金を引き出すことはできません。

掛金自体は自分で決められるので家計の負担になる心配は比較的少ないですが、途中でお金が必要になっても掛金と運用金を自由に使うことはできないので、あらかじめ注意が必要です。

参考:iDeCo公式サイト「ご注意いただきたいこと

2. 生命保険・地震保険に節税目的だけで加入するのはNG

生命保険料控除は最大12万円、地震保険料控除は最大5万円と、それぞれ控除額に上限が設けられています。

節税目的だけで加入すると、かえって家計の負担が大きくなってしまうおそれがありますので、生命保険や地震保険については、必要に応じて加入したときに控除を受けるのがおすすめです。

3. ふるさと納税のワンストップ特例申請書の出し忘れに注意

ふるさと納税では、元々確定申告が不要である会社員が、確定申告をせずにふるさと納税の寄附金控除を受けられる「ワンストップ特例申請書」という制度が用意されています。

この制度の適用を受けるには、ふるさと納税をする自治体が5団体以内で、ふるさと納税を行うときに各自治体に「ワンストップ特例申請書」を提出する必要があります。この申請書を出し忘れてしまうと、自分で確定申告を行う必要がありますので注意しましょう。

4. 住宅ローン控除は適用初年度に確定申告が必要

住宅ローン控除は2年目以降になると年末調整で控除を受けられるようになりますが、初年度は確定申告が必要です。

確定申告を行うには、翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告書を作成し、税務署に提出する必要がありますので、忘れずに申告しましょう。

まとめ

会社員は給与から社会保険料や税金が天引きされています。

社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算されるので節約できませんが、所得税や住民税は課税所得をもとに算出されるため、各種控除制度を活用すれば節税することが可能です。

節税対策にはいろいろな種類がありますので、自分の目的やニーズに合った方法を選択することをおすすめします。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

記事提供元:株式会社ぱむ