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日本では「国民皆保険制度」により、国民全員が何かしらの健康保険に加入することが義務づけられています。
自営業も例外ではありませんが、いわゆるサラリーマンが加入する健康保険とは種類や保障内容に違いがありますので注意が必要です。
この記事では、自営業が加入できる健康保険の種類や、会社員が加入する健康保険との違い、健康保険への加入方法、自営業になったときの注意点について解説します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
自営業が加入できる社会保険は3種類
自営業者が加入できる社会保険の種類は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、被保険者が病気やケガで治療した場合、その費用の一部を負担してもらえる「公的医療保険」です。
会社員の場合は、健康保険組合や協会けんぽに代表される被用者保険に加入しますが、自営業者の場合は後述する国民健康保険に加入することになります。
2つ目は、被保険者が高齢になったときや、障がいによって働けなくなったとき、あるいは家族を残して死亡したときなどに、年金や一時金が支給される「年金保険」です。
世代間扶養という概念のもと、現役世代が保険料を出し合うことで運用されています。
会社員が加入する国民年金と厚生年金は、保険料を事業主と折半して支払う仕組みになっており、受け取る年金額は所得と加入期間によって異なります。一方、自営業者が加入する国民年金は、保険料は全額負担で、受け取る金額は加入期間によって変動します。
3つ目は、65歳以上の被保険者が要支援・要介護状態と認定された際、さまざまな支援を受けられる「介護保険」です。
65歳未満(40~64歳)でも、脳血管疾患や末期がんなどの特定疾病によって要介護状態と認定された場合、支援を受けることができます。
保険料は年金保険同様、会社員は事業主と折半、自営業者は公的医療保険・年金保険に上乗せする形でそれぞれ支払います。
社会保険については「自営業の社会保険は何がある?リスクと対策をおさえよう」でも解説しています。
自営業が加入できる健康保険
自営業者が病気・ケガをしたときに備えて加入できる健康保険は「国民健康保険」です。
国民健康保険の加入対象となるのは自営業者のほか、農業者や退職者、無職者およびその家族で、都道府県や市区町村、各種国民健康保険組合によって運営されています。
国民健康保険に加入していると、法律によって給付されることが定められている「法定給付」と、市区町村の条例や各種国民健康保険組合の規約によって給付される「任意給付」をそれぞれ受給することができます。
法定給付はさらに、保険者(運営者)が必ず給付しなければならない「絶対的必要給付」と、保険者に特別な理由(保険財政上の理由など)がある場合は給付しなくてもよい「相対的必要給付」の2種類に分かれています。
前者は病気・ケガによって療養を受けた場合に支給されるもので、治療費や入院費、高額療養費などがこれに該当します。
後者の相対的必要給付には、出産育児一時金や葬祭費の支給などが挙げられます。
会社員が加入する健康保険(被用者保険)との違い
会社員が加入する健康保険(被用者保険)と、自営業者が加入する国民健康保険の違いは、保険料の負担と保障内容、扶養の有無にあります。
被用者保険の場合、保険料は事業主と折半しますが、自営業者は全額自己負担となります。
また、被用者保険では、病気やケガで働けない場合に傷病手当金の支給を受けられますが、自営業の場合はありません。
さらに、被用者保険には「扶養」の概念があり、一定の要件を満たす三親等の親族を被保険者が加入する健康保険に加入させることができます。
健康保険の保険料は扶養の有無や扶養者の数に左右されないため、被扶養者になった親族は保険料を負担する必要がありません。
一方、国民健康保険には扶養の概念がないため、自営業者に配偶者や子どもがいたとしても、それぞれが単体で国民健康保険に加入する必要があります。 ただし、三親等の親族にあたる両親や配偶者が会社員として健康保険に加入している場合、一定の要件を満たしていれば、自営業者であっても被用者保険の扶養に入ることが可能です。
会社員を辞めた場合、任意継続という手段もある
会社員から自営業者になった場合、後述する加入手続を行って国民健康保険に加入する必要があります。
しかし、退職して被用者保険の資格を喪失してから20日以内に申請すれば、最長2年まで被用者保険を継続する、任意継続という手段をとることが可能です。
事業主はいないので保険料は全額自己負担となりますが、任意継続保険料には上限額が設定されているため、所得によっては保険料が安くなる可能性があります。
また、任意継続では扶養の概念も引き続き適用されるため、被扶養者がいる場合、ひとり分の保険料で家族全員の健康保険を確保できるのもメリットのひとつです。
自営業者の健康保険の加入方法
会社員を辞めて自営業者になる場合は、自ら国民健康保険の加入手続を行う必要があります。
退職後14日以内に、お住まいの市区町村の役場か、各種国民健康保険組合の窓口にて、必要書類を添えて手続を行います。
必要書類は国民健康保険に加入する理由によって異なりますが、会社員から自営業者になった場合は、以下の書類を用意します。
1.職場の健康保険をやめた証明書(資格喪失証明書)
2.印鑑
3.世帯主と、国民健康保険に加入する方全員分のマイナンバーがわかるもの
4.窓口に行く方の本人確認ができるもの
5.保険料口座振替用のキャッシュカードまたは通帳・金融機関の届出印
3はマイナンバーカードや個人番号通知書および通知カード、4は免許証やパスポート、マイナンバーカードなどが該当します。
なお、3でマイナンバーカードを提出する場合は、4の本人確認書類は不要です。
国民健康保険の加入手続に必要な書類は、保険者(自治体や国民健康保険組合)によって異なりますので、事前に問い合わせておくと安心です。
自営業者になった際に気を付けるべきポイントは?
会社員から自営業者になったときに気を付けたいポイントを2つ紹介します。
自営業者になるときに必要な手続きについては「自営業をやりたい!始め方とメリット・デメリットを解説」で紹介していますので、あわせて確認してみてください。
1. 将来への備えに対する自助努力が必要
自営業者が加入する社会保険は、会社員が加入する社会保険に比べて保障が手薄になります。
例えば、病気やケガをして仕事に就けないときに傷病手当金が給付されませんし、国民年金に厚生年金が上乗せされる会社員に比べると、国民年金のみの自営業者は支給額が大幅に減少してしまいます。
そのため、会社員から自営業者になるときは、社会保険だけでなく、プラスアルファの保障を確保する必要があります。
具体的には、払い込んだ保険料額に応じて年金の支給を受けられる「個人年金保険」や、積立金の運用に応じて年金を受け取れる「iDeCo(イデコ)」、働けなくなったときに給付を受けられる「就業不能保険」などに加入しておくと、もしものときに充実した保障を受けられます。
自営業者におすすめの就業不能保険について、くわしくは「独立・起業した自営業者や個人事業主が考えるべき、経済リスクと就業不能保険のすすめ」を参考にしてください。
2. 節税を心がける
自営業者の場合、稼げば稼ぐほど年収がアップしますが、所得が増えると納めるべき税金も増加します。
自営業者は1月1日~12月31日までの事業所得について確定申告しなければなりません。しかし、その際に加入している社会保険や、民家の生命保険の保険料を申告すれば、課税される所得から控除することができ、節税に繋がります。ここで言う生命保険とは、死亡保険や医療保険だけでなく、働けなくなったときの就業不能保険も対象です。
また、個人年金保険も一定の要件を満たせば所得控除の対象となるほか、iDeCo(イデコ)や小規模企業共済は掛金の全額が控除されるので、大きな節税効果が期待できます。故郷や応援したい自治体に寄付をすると、寄付金の2,000円を超えた額に応じて所得税や住民税の負担が軽減されるふるさと納税の活用もおすすめです。
※いくつかの制度を併用すると、節税効果が薄れる場合があります。
まとめ
自営業者の方は、国民健康保険、国民年金、介護保険に加入することができます。
ただ、国民健康保険と国民年金は、会社員が加入する健康保険や厚生年金に比べて保障が手薄なので、もしもの場合に備えるためには、プラスアルファの保障を自分で用意する必要があります。
働けなくなったときの就業不能保険や、払込保険料に応じて年金を受け取れる個人年金などに加入し、もしものときや老後の備えをしっかり確保しましょう。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
記事提供元:株式会社ぱむ