専業主婦(主夫)に保険はいらない?みんなの加入状況や保障額から解説

専業主婦(主夫)に保険はいらない?みんなの加入状況や保障額から解説

生命保険や医療保険は「生計を支える人にもしものことがあった場合に備えるもの」というイメージがあるせいか、専業主婦(主夫)には不要と考える人も多いようです。

しかし、収入面への影響だけを考えて「専業主婦(主夫)に保険はいらない」と判断すると、万が一のことが発生した場合のリスクに備えられなくなる可能性があります。

この記事では、専業主婦(主夫)に保険は本当に不要なのか検証すると共に、専業主婦(主夫)の保険の加入状況や、将来考えられるリスク、専業主婦(主夫)に必要な保険について解説します。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

専業主婦 (主夫) には保険はいらないって本当?

収入のない専業主婦(主夫)に保険が必要か否かは、家庭の状況やニーズによって異なります。

そもそも生命保険や医療保険は、被保険者に万一のことがあった場合の遺族の生活保障や、病気・ケガになった場合の治療費・生活費の補填等を目的としたものです。

そのため、専業主婦(主夫)であるパートナーが死亡または病気・ケガをしても、貯蓄と公的保障だけで生計が成り立つようなら、保険は不要といえます。

一方、専業主婦(主夫)のパートナーが死亡または病気・ケガで入院した際、代わりに家事や育児を担う人手を外注しなければならない場合や、公的保障だけで治療費をまかなえない場合は、保険で不足分をカバーする必要があります。

専業主婦(主夫)に万一のことがあっても収入に直接影響はないかもしれませんが、治療費や家事・育児の代行費といった出費が大きくかさむ可能性がありますので、専業主婦(主夫)に保険は不要と断言することはできないでしょう。

実際、フコク生命が実施した意識調査でも、64%が「専業主婦(夫)にも就業不能保険は必要」と回答しています。[参考1]

参考1:フコク生命「フコク生命、人生100年時代を生きる全国の20~60代を対象に『70歳までの就労意識』をテーマとした調査を実施」p5

専業主婦 (主夫) の保険加入状況は?

専業主婦(主夫)に保険が必要かどうかは家庭や貯蓄の状況によると説明しましたが、実際に専業主婦(主夫)で保険に加入している人はどのくらいいるのでしょうか?

公益財団法人 生命保険文化センターが実施した2021年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、専業主婦(主夫)の生命保険加入率は、78.3%に上っています。(配偶者が無職で、世帯主・配偶者ともに加入および配偶者のみ保険に加入している世帯の割合)[参考2]

世帯主のみ加入、あるいは世帯主・配偶者ともに未加入の世帯は合計で2割ほどに留まっており、配偶者が専業主婦(主夫)でも何らかの生命保険に加入している世帯が圧倒的多数を占めることがうかがえます。

参考2:公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度『生命保険に関する全国実態調査』 夫婦の生命保険への加入形態 全生保

専業主婦(主夫)の死亡保険金額

次に、専業主婦(主夫)に万一のことがあった場合に支払われる死亡保険金についてチェックしてみましょう。

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、専業主婦(主夫)が死亡した場合に受け取れる死亡保険金額の平均は559.7万円という結果でした。[参考3]

内訳(不明を除く)を見ると、「200~500万円未満」が最多で25.4%、次いで「200万円未満」が17.2%、「500~1,000万円未満」が16.1%と、1,000万円未満に設定している世帯が約6割を占めています。

働いている配偶者の死亡保険金の平均額が777.8万円であることを考えると、やや少なめの金額に設定されていますが、専業主婦(主夫)のパートナーが死亡した場合に発生する費用負担を考慮し、ある程度まとまった金額を受け取れるようにしている家庭が多いようです。

参考3:公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度『生命保険に関する全国実態調査』配偶者の普通死亡保険金 全生保

専業主婦(主夫)の入院給付金額

専業主婦(主夫)が入院したときに支払われる「入院給付金額」について見ていきましょう。

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、専業主婦(主夫)の入院給付金の平均額は7,600円です。[参考4]

内訳(不明を除く)を見ると、「5,000円〜7,000円未満」が最多で36.3%、次いで「10,000円〜15,000円未満」が18.6%、「3,000円〜5,000円未満」が8.7%となっています。

同センターが実施した令和元年度「生活保障に関する調査」によると、過去5年間に入院した経験がある人のうち、半数以上の人は自己負担費用が15,000円未満に収まっているため、実際に必要となる費用負担に即した入院給付金額といえるでしょう。[参考5]

参考4:公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度『生命保険に関する全国実態調査』配偶者の疾病入院給付金 全生保
参考5:公益財団法人 生命保険文化センター「令和元年度『生活保障に関する調査」p45

専業主婦(主夫)に考えられる将来のリスクは?

将来考えられるリスクは、大きく分けて5つあります。

  • 病気・ケガのリスク
  • 就業不能のリスク
  • 身体障がいのリスク
  • 万一のリスク
  • 老後の生活資金のリスク

これらは専業主婦(主夫)以外の人にも想定されるリスクですので、将来の保障を考える際の参考にしてみてください。

病気・ケガのリスク

病気やケガなどで入院すると、入院費や手術費・通院費などの治療費が発生します。

具体的な治療費は病気の種類や症状などによって異なりますが、生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、1回あたりの入院にかかる費用の平均額は約20万円でした。治療費・食事代・差額ベッド代だけでなく、交通費や衣類、日用品なども含めた金額です。[参考6]

特にがんなどの重大疾病に罹患した場合、長期入院や大がかりな手術が必要になるケースが多く、費用負担が大きくなることが予想されます。投薬治療や通院もある程度必要になるでしょう。

厚生労働省が公表している「全国がん登録 罹患数・率」によると、全がんの罹患数は男性・女性ともに40代から急増しますが、20代後半でもがんにかかる人は少なからず存在します。

特に女性疾病に含まれる乳がんは、20代前半までの人口10万対罹患率はほぼ0に等しい数値ですが、30代後半には67.5へと急増しており[参考7]、早いうちから備える必要があります。

病気やケガの治療は公的医療保険である程度カバーすることが可能ですが、健康保険の対象外である先進医療の費用や、差額ベッド代、通院・家族の付き添い等のための交通費などは全額自己負担しなければなりません。

参考6:公益財団法人 生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」p44
参考7:厚生労働省「平成30年全国がん登録 罹患数・率 報告」p29、30

就業不能のリスク

専業主婦(主夫)の方は会社勤めこそしていないものの、家庭で家事・育児全般を行うという大切な仕事を担っています。

病気・ケガなどで思うように動けなくなってしまった場合、代わりにパートナーが動かざるを得ません。子どもの学校や保育園などへの送迎のためにパートナーが遅刻・早退をしたり、仕事のあとに夜遅くまで掃除や洗濯などをしたり、時にはパートナーの治療や子どもの学校行事等で休みを取らなければならないこともあります。専業主婦(主夫)が働けなくなったら、パートナーの仕事面にも支障をきたすおそれがあるのです。

また、子どもの預け先を探したり、家事を外注したりしなければならない可能性もあります。

経済産業省の調査によると、家事支援を利用している人の家事支援サービス1回の利用金額は「3,000円以上5,000円未満」と答えた人が30.3%で最多でした。20日間(週5日程度)利用する場合、月6万円〜10万円ほど必要です。[参考8]

参考8:経済産業省「平成29年度 商取引適正化・製品安全にかかる事業(家事支援サービス業を取り巻く諸課題に係る調査研究)」 

身体障がいのリスク

病気・ケガなどによって身体障がい状態になった場合、これまでのように家事・育児に取り組めなくなるのはもちろん、専業主婦(主夫)自身の生活もままならなくなります。

障がいの状態が重い場合は、家族だけで介護するのは難しいため、介護サービス等の利用も検討しなければなりません。

要介護認定を受ければ、介護保険制度を利用して、介護サービスの利用費を1~3割負担に抑えることができますが[参考9]、介護保険制度を利用できるのは40歳以降に限定されており、かつ64歳までは要介護、要支援状態が末期がん、関節リウマチ等の加齢に起因する疾病による場合に限定されます。[参考10]

要件に該当しなければ介護保険制度を利用できず、全額自己負担になるため、家計に大きな負担がかかることが予想されます。

参考9:厚生労働省「介護保険制度の概要」p3
参考10:厚生労働省「介護保険制度の概要」p5

万一のリスク

専業主婦(主夫)に万一のことがあった場合、病気・ケガや就業不能時に発生するリスクに加え、葬儀費用の準備も必要になります。

葬儀にかかる費用は地域や規模によって異なりますが、飲食費や返礼品も含めた平均総額は約184万円というデータがあります。[参考11]

葬儀費用はローンを利用して賄うことも可能ですが、業者によっては分割払いに対応していないケースもあるため、死亡した時点である程度まとまった費用を準備しておく必要があります。

参考11:鎌倉新書「第4回お葬式に関する全国調査(2020年)

老後の生活資金のリスク

定年退職を迎えた後は、それまでの蓄えや公的年金で生活することになります。

公益財団法人 生命保険文化センターがまとめた資料では、老後の最低日常生活費の平均は22.1万円、ゆとりある老後生活費の平均は36.1万円とされています(いずれも月額)。[参考12]

対して、厚生労働省がまとめた資料では、専業主婦(主夫)の国民年金の平均受給月額は56,252円で、会社員の夫(厚生年金保険第1号)の平均受給月額である14万4,366円と合わせても、約20万円に留まります。[参考13]

最低日常生活費あるいはゆとりある老後生活費との差額は、それまでに蓄えた貯金か、個人年金保険などでまかなう必要があります。

参考12:公益財団法人 生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査
参考13:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」p9、22

専業主婦 (主夫) に必要な保険はどんなもの?

専業主婦(主夫)が将来のリスクに備えるために加入する保険は、大きく分けると生命保険と医療保険の2種類に分類されます。

両方加入するのがベストですが、一般的には死亡リスクよりも病気・ケガをするリスクの方が高いので、優先度は医療保険の方が上です。

そのため、まずは医療保険で病気・ケガのリスクに備え、家計と相談しながら死亡保険に加入するのが理想です。

ただし、長い目で将来のリスクを考慮すると、死亡保険よりも個人年金保険や介護保険、就業不能保険などへの備えを優先させた方が良い場合もあります。

パートナーの保険の加入状況によって、将来備えるべき保険にも差が出てきますので、今後起こりうるリスクや、現在の家計状況などを考慮しながら、専業主婦(主夫)の加入する保険の種類や保障内容を検討するとよいでしょう。

まとめ

専業主婦(主夫)は家庭の家事や育児を一手に担っていることが多いため、万一のことがあった場合に想定されるパートナーや子ども、家計への負担は決して少なくありません。

十分な収入と貯蓄があり、公的医療保険だけでカバーできるのなら別ですが、そうでない場合は専業主婦(主夫)でも保険に加入し、想定されるリスクに備えておくことをおすすめします。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
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記事提供元:株式会社ぱむ