時短勤務(短時間勤務制度)とはどんな働き方?対象者やメリットについて徹底解説

時短勤務(短時間勤務制度)とはどんな働き方?対象者やメリットについて徹底解説

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共働き世帯の増加もあり、子育てや介護と仕事の両立に悩む家庭は少なくありません。今の働き方に限界を感じているのなら、時短勤務の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事では、時短勤務とはどのような働き方なのか、制度の概要とメリット・デメリットなどについて解説します。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

時短勤務(短時間勤務制度)とは

時短勤務(短時間勤務制度)とは、1日の労働時間を短縮し、通常よりも短時間の勤務を認める制度です。

育児や介護のためにフルタイム勤務が難しくなった方などをサポートする制度であり、事業主(会社)には短時間勤務制度の導入が法律で義務付けられています。

1.時短勤務の対象者

育児・介護休業法で定められている時短勤務の対象者は、「3歳に満たない子どもを養育する従業員」(子育て)と「常時介護を要する家族を介護する従業員」(介護)です。

育児・介護休業法では、原則として以下の要件を満たす方が時短勤務(1日原則6時間)の対象になります。[参考1]

【子育てを理由とする時短勤務の場合】

  • 3歳に満たない子どもを養育している
  • 1日の所定労働時間が6時間超
  • 日々雇用される従業員でない
  • 時短勤務制度が適用される期間に現に育児休業(産後パパ育休を含む)をしていない

【介護を理由とする時短勤務の場合】

  • 対象家族を介護している(※)
  • 日々雇用される従業員でない

※対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫

要件を満たしていれば、契約社員やパート・アルバイトなどの方も原則として時短勤務の対象です。

法律上の時短勤務の対象者は上記の通りですが、企業独自でにより対象者が異なる場合もあるので、就業規則を読んだり、上司や総務などに確認してみたりしましょう。

参考1:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」p.12

2.時短勤務の対象外

時短勤務は法律で導入が義務付けられている制度です。しかし、以下の要件に該当する労働者は利用できません。[参考1]

【子育てを理由とする時短勤務の場合】

  • 1日の所定労働時間が6時間未満
  • 日々雇用される従業員

【介護を理由とする時短勤務の場合】

  • 日々雇用される従業員

ただし、一定の条件に当てはまる方のうち、労使協定で定められた労働者は対象外です。例えば、就業から1年未満や週2日以下の労働者は時短勤務を利用できない可能性があります。労使協定は就業規則等に書かれているため、確認してみましょう。

3.時短勤務の期間はいつまで?

育児・介護休業法によると、育児のための時短勤務は、希望すれば子どもが3歳になるまで利用できるとしています。

子どもが3歳以降の時短勤務は事業主の努力義務であり、利用できるかどうかは勤務先によります。

なお2024年5月31日に改正育児・介護休業法が公布され、事業主は子どもが3歳から小学校に入学するまでの期間において、柔軟な働き方を実現するための措置を講ずることが義務付けられました(施行日は2024年5月31日から起算して1年6ヵ月以内において政令で定める日)。[参考2]

今回の改正により、事業主は以下から2つ以上の制度を導入することが義務付けられ、従業員は導入された制度の中から1つを選んで利用できるようになります。

  • 始業時刻等の変更
  • テレワーク等(月に10日)
  • 保育施設の設置・運営
  • 新たな休暇の付与(年に10日)
  • 短期間勤務制度

参考2:厚生労働省「育児・介護休業法が改正されました ~令和7年4月1日から段階的に施行~

フレックスタイム制度との違い

フレックスタイム制度と時短勤務制度の大きな違いは、始業・終業時刻や1日あたりの労働時間が固定されているかどうかです。

フレックスタイム制度では、月、週など一定期間(=精算期間)ごとにあらかじめ定められた総労働時間の範囲で、従業員が始業・終業時刻や1日の労働時間をある程度自由に決められます。勤務しなければならない時間帯(コアタイム)を設けない場合には、働く日も自由に決めることが可能です。
一方、時短勤務制度は1日の労働時間が短縮される制度であり、始業・終業時刻や1日の労働時間は原則固定です。

例えば通常の総労働時間が週40時間と定められている場合、フレックスタイム制度では月曜日に4時間、火曜日と水曜日は各10時間、木曜日と金曜日は各8時間働くというように、労働者が働く時間を自由に配分できます。
一方、時短勤務制度では、終業時刻を2時間繰り上げるなどの形で、1日8時間(週40時間)勤務が1日6時間勤務に短縮されます。

時短勤務のメリット

時短勤務を利用することで、以下のようなメリットが期待できます。

1.子育て・介護と仕事の両立が可能になる

労働時間が短縮されることで、子育てや介護と仕事を両立しやすくなります。

小さな子供がいる方や家族の介護が必要な方にとって、通常のフルタイム勤務は大きな負担です。時短勤務を活用すれば、職場での責務を果たしながら、育児や介護の時間を確保できます。時間に余裕ができれば心身の負担が軽減され、生活の質の向上も期待できるでしょう。

2.継続的なキャリア形成が可能になる

時短勤務制度を利用すれば、業務スキルを維持しながら、無理がない範囲で仕事を続けやすくなります。また一度職場を離れてしまうと、キャリアにギャップが生じ、再就職が難しくなるケースも少なくありません。

時短勤務によって仕事を続けることができれば、ライフイベントのために自身のキャリアを犠牲にすることなく、長期的なキャリア形成が可能になります。さらにキャリアの中断による収入ダウンを抑えられれば、経済的な面でも大きなプラスです。

3.モチベーション維持につながる

時短勤務制度を利用することで、生活スタイルに合わせて無理なく働けるようになり、仕事のモチベーションを維持しやすくなります。

時間的な余裕が生まれることで、私生活と職場でのストレスを軽減する効果も期待できるでしょう。さらに自分のペースで仕事に取り組むことができ、業務の成果に対する達成感も高まります。

4.離職防止につながる

事業主(会社)にとっては、育児や介護による従業員の離職を防ぐ効果が期待できます。優秀な人材の流出を防ぎ、組織力を強化できる点は大きなメリットといえるでしょう。

一方、従業員にとっては、時短勤務の選択肢があることで大きな安心感を得られ、会社への忠誠心も向上します。

さらにワークライフバランスを重視し従業員を大切にする企業として、対外的な評価が高まる効果も期待できます。

時短勤務のデメリット

時短勤務には次のようなデメリットもあります。

1.フルタイムよりも給与は少なくなる

時短勤務を選択すると、労働時間に応じて給与が減額されるため、フルタイムの社員と比較して収入が少なくなります。

生活費や住宅ローンなどの固定費を支払う必要がある場合、時短勤務による収入減少が家計に大きな影響を与える可能性があります。また、将来的な貯蓄や投資にも影響が出るかもしれません。

2.コミュニケーション不足につながるおそれもある

時短勤務により職場にいる時間が短くなると、同僚や上司とのコミュニケーションが不足する恐れがあります。

特に、重要な会議などに参加できない場合、組織内での意思疎通がスムーズにおこなえず、情報の欠如や誤解が生じる可能性があります。このコミュニケーション不足は、プロジェクトの進行や自身の業務遂行に支障をきたし、場合によっては業務成果に悪影響を及ぼすことも考えられます。またチームの一員としての意識が希薄になる危険性も潜んでいます。

時短勤務を申請する方法

時短勤務は本人の希望により利用できる制度であり、勤務先へ申請が必要です。ここでは、時短勤務を申請する方法を確認しておきましょう。

1.就業規則を確認する

そもそも時短勤務を利用できるのか、就業規則でご自身が要件を満たしているかを確認しましょう。よくわからない場合には、人事、総務など担当部署に確認してください。

2.上司・人事に相談する

時短勤務を始める1〜2ヵ月前には、上司や人事に相談しておきましょう。
時短勤務は対象となる従業員に認められている権利ですが、時短勤務によって業務に支障が出ることもあります。早めに相談しておけば、業務内容の調整などの対応が必要な場合も余裕を持っておこなうことができ、時短勤務への移行もスムーズになります。

3.短時間勤務申出書をもらって記入し、提出する

時短勤務をすることが決まったら、勤務先から「短時間勤務申出書」をもらい、希望する時短勤務開始日や期間、勤務時間などを勤務先の申出書のフォーマットの通りに記入して提出します。提出期限が定められている場合はその期限までに、定められていない場合は、時短勤務開始日の1ヵ月前には提出するようにしましょう。

4.会社から「短時間勤務取扱通知書」をもらう

時短勤務の申出をおこなうと、勤務先からその取り扱いを通知する「短時間勤務取扱通知書※」が発行されます。時短勤務が認められた場合は、通知書に記載されている時短勤務の期間や労働条件(始業・終業時刻、休憩時間、賃金など)を確認しましょう。通知された内容に異議やわからないことがあれば、すぐ人事に相談してください。

※会社によって名称は異なる場合があります。

5.周りへの周知や引き継ぎをおこなう

同僚や取引先の担当者など、仕事で関わりのある人には時短勤務になることを事前に周知しておきましょう。時短勤務であることが周知されていないと、就業時間内だと思っていたのに連絡が取れず業務に支障が出たり、時間外に連絡がきて対応せざるを得なくなったりするおそれがあります。時短勤務によって対応できなくなる業務が生じる場合には、引き継ぎを十分におこない、業務に支障が出ないようにしておきましょう。

時短勤務に関するQ&A

時短勤務中の有給休暇や残業、社会保険料、ボーナスがどうなるのか気になる方もいるのではないでしょうか。ここでは時短勤務に関してよくある疑問に回答します。

1.有給休暇はもらえる?

時短勤務であっても有給休暇(年次有給休暇)はもらえます。[参考3]

ただし、時短勤務によって「週の所定労働時間が30時間未満かつ週の契約労働日数が週4日以下」または「年間の所定労働日数が216日以下」となる場合は、通常よりも付与日数が少なくなります。

そもそも有給休暇とは、6ヵ月以上継続して雇用され、その間の全労働日の8割以上を出勤した従業員に付与される休暇です。付与される日数は、勤続6ヵ月で原則年10日です。付与日数は継続勤務年数に応じて増えていき、勤続6年6ヵ月以上で上限の年20日になります。勤続年数の計算では、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間は出勤したものとみなされます。また、付与された有給休暇の有効期間は、権利の発生日から2年間です。

有給休暇に対する賃金は、原則として以下のいずれかの金額を支払うこととされており、どれを選択するかは就業規則などに明記されています。

  1. 労働基準法で定める平均賃金
  2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  3. 健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額

なお、2.における通常の賃金は、有給休暇取得時の所定労働時間数をもとに計算されます。そのため、時短勤務で所定労働時間が短くなっていれば、その分だけ支払われる賃金も少なくなります。

参考3:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています

2.時短勤務期間中でも残業はある?

時短勤務制度は所定労働時間を短縮する制度であり、所定労働時間を超える勤務、いわゆる残業が発生する場合もあります。

ただし、3歳未満の子どもを養育する従業員(※)が事業主に対して「所定外労働の制限(残業免除)」を請求している場合には、事業の正常な運営を妨げる場合を除き残業をさせてはならないと法律で定められています(育児・介護休業法第16条の8第1項)。この請求をしておけば原則として残業を強制されることはありません。[参考4]

※日々雇用される従業員、労使協定により対象外とされた者(継続雇用期間が1年未満の従業員、週の所定労働日数が2日以下の従業員)を除く

参考4:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」p.77

3.社会保険料はどうなる?

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、原則として4月から6月の給与に応じた「標準報酬月額」をもとに計算され、その年の9月から翌年8月までの保険料に反映されます。

そのため、時短勤務を始めて途中で給与が減った場合には、時短勤務前の給与水準で計算された高い保険料を支払わなければならないケースも生じます。

ただし、時短勤務によって従業員(被保険者)の報酬が大幅に変動した場合には、定時決定を待たず標準報酬月額が改定され、変更後の報酬を受けた月から数えて4ヵ月目から保険料も下がります。これを「随時改定」といいます。[参考5]

なお、育児休業終了後に時短勤務へ移行する場合、随時改定の要件に該当していなくても、一定の要件を満たしていれば標準報酬月額を改定してもらえます。それには会社を介して日本年金機構へ「育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出が必要で、育児休業終了日翌日が属する月から起算して4ヵ月目から時短勤務開始後の給与で計算された保険料に変更されます。[参考6]

時短勤務にともなって標準報酬月額が下がると、社会保険料が安くなる一方で、将来もらえる年金額が減ってしまう問題もあります。この問題に対しては、3歳未満の子どもを養育している方に限り、会社を介して日本年金機構へ「養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出することで、時短勤務開始前の期間の標準報酬月額に基づいて計算された年金額を受け取れる仕組みが用意されています。[参考7]

毎月支払う保険料が安くなるにもかかわらず、従前と同じ保険料を納めているとみなして年金額を計算してもらえる有利な制度です。利用できる方は積極的に利用しましょう。

参考5:日本年金機構「随時改定(月額変更届)
参考6:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出
参考7:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

4.ボーナスはもらえる?

ボーナス(賞与)の支給は法律による定めがなく、事業主の判断で支給の有無や金額を決めています。

時短勤務を利用した場合のボーナスは、フルタイム正社員と同じ基準で支給するのが基本です。例えば、支給基準のベースが基本給であれば、基本給が労働時間に比例して減額されているので、原則として支給月数などの係数は同じにします。支給基準のベースが業績等の場合も、適用される基準は原則としてフルタイム社員と同じです。[参考8]

実際の取り扱いは勤務先によって異なるため、就業規則などで確認しておきましょう。

参考8:厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト

生活スタイルに合わせて働き方を考えよう

子育てや介護と仕事の両立を図るには、生活スタイルの変化や子どもの成長など、その時々の状況に合わせて働き方を変えていくことも必要です。育児や介護に時間がかかる時期には時短勤務で働く。子どもにあまり手がかからなくなってきたり、介護施設へ入所したりできたらフルタイム勤務に戻る。子育てや介護と仕事の両立に悩んだら、時短勤務という選択肢がとれるかもしれません。どう働くのかを、キャリアや収入なども考慮しながら考えましょう。

共働き家庭では、子どもの小学校入学によって仕事と子育ての両立が難しくなる「小1の壁」も問題となっています。預かり時間が保育園よりも短い学童保育、夏・冬・春の長期休暇、学校行事やPTA活動などの要因が重なり、これまでと同じように働くことが難しくなってしまうのです。特に小学校低学年のうちは一人でできないことも多く、子どもの小学校入学を機に退職や転職をする方も少なくありません。時短勤務はその解決法の一つです。

子育てによる時短勤務は3歳まで、あるいは小学校入学までとしている会社も多いため、必ずしも希望通りの働き方ができるとは限りませんが、期間を延長できるケースもあります。まずは就業規則を確認し、勤務先に相談してみましょう。時短勤務のほか、フレックスタイムや在宅勤務、リモートワークなど、利用できる制度があれば積極的に活用することをおすすめします。

小1の壁について詳しく知りたい方は、「小1の壁とは?起こる理由や原因、親・子どもでできる対処方法をご紹介」もご覧ください。

まとめ

時短勤務は、1日の労働時間を短縮して働ける制度であり、子育てや介護と仕事の両立を図るうえで大きな支えとなります。時短勤務によって不本意な退職や転職を回避できれば、キャリア形成や収入の面でも大きなプラスとなるでしょう。時間の余裕は心のゆとりにもつながります。

時短勤務のほか、フレックスタイム制度や在宅勤務、リモートワークなど、多様な働き方が浸透し、より柔軟に働ける時代。生活スタイルの変化に合わせて働き方を変えていく選択肢を持っておきましょう

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

竹国弘城(たけくに ひろき)
独立系FP、RAPPORT Consulting Office代表。証券会社、生損保代理店での勤務を経て独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自分のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうためのサポートを行う。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®、証券外務員一種、宅地建物取引士

記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ