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働き方が多様化するなか、自身の知識や経験を活かして自営業者として開業する主婦(主夫)の人も増えています。
そんな自営業者でも配偶者の扶養に入ることができれば、事業コストを抑えることが可能です。
この記事では、自営業者でも配偶者の扶養に入る条件や、自営業者と扶養の関係について解説します。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
そもそも「扶養に入る」ってどういうこと?
よく「夫(妻)の扶養に入る」、「夫(妻)の扶養の範囲内で働く」という話題を耳にしますが、そもそも「扶養」とはどういう制度なのでしょうか?
「扶養に入る」ことによって、どういったメリットが受けられるのかを解説します。
扶養とは家族や親族から経済的な援助を受けること
扶養とは、婚姻関係にある人や、高齢者や若年者、心身の障害をお持ちの人など、自分一人の力で生活をするのが難しい人が、家族や親族から経済的な援助を受けることをいいます。
扶養を受けている人のことを「被扶養者」、扶養をする義務のある人を「扶養義務者」といい、被扶養者が扶養義務者に扶養されることを「扶養に入る」と表現します。
2種類の扶養とそれぞれのメリット
ここでは妻が夫の扶養に入るケースについて解説します。
扶養には「1.税務上の扶養」と「2.社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれにメリットがあります。
1.税務上の扶養のメリット
税務上の扶養とは、所得税や住民税などの控除に関係します。
例えば、夫の年間所得合計が1,000万円以下で、扶養に入っている妻の年間所得合計が48万円以下であれば配偶者控除が、133万円以下であれば段階的に配偶者特別控除が適用され、夫の所得税の負担を下げることができます。
2.社会保険上の扶養のメリット
社会保険上の扶養とは、健康保険や年金の保険料負担に関係します。
健康保険では、例えば扶養に入っている妻は別途保険料を負担することなく、夫の健康保険から医療費などの給付が受けられます。
年金も、扶養に入ることで妻は国民年金の第3号被保険者となり、保険料を負担することなく将来年金を受給することができます。
自営業を始めたら扶養から外れる?
これまで扶養に入っていた主婦(主夫)の人が開業して自営業を始めた場合、夫(妻)の扶養から外れなければならないのでしょうか。
扶養に入ることで得られるメリットは大きいので、可能であれば事業が軌道に乗るまでは、扶養に入ったまま働きたいものです。
必要な条件を満たせば自営業者も扶養に入れる
結論からいえば、自営業者でも扶養に入ることは可能です。自営業者が被扶養者になるための条件は、以下の通りです。
1.税法上の扶養の条件
扶養されている自営業者の所得が48万円以下であれば配偶者控除が、133万円以下であれば段階的に配偶者特別控除が適用されます。
2.社会保険上の扶養の条件
扶養されている自営業者の所得が130万円未満であれば、社会保険上の扶養に入ることができます。ただし、「協会けんぽ」や「共済組合」など、加入する組合によって扶養の条件は異なるので、開業前に健康保険組合に確認するのがよいでしょう。
自営業者の所得と給与所得との違いに注意
自営業者の所得とは「事業所得」や「不動産所得」であり、会社員やパート勤務の「給与所得」との違いに注意しなくてはなりません。
事業所得や不動産所得の必要経費には制限があります。
事業所得の計算方法は、以下の通りです。
- 事業所得の金額=総収入金額-必要経費
自営業者が被扶養者となる場合、この必要経費と認められるものに制限があります。
例えば売上原価や人件費などは認められますが、広告宣伝費や接待交際費・旅費交通費などの費用は経費として認められないケースがあります。
収入から経費を差し引いた金額が一定額を超えると税制上のメリットが受けられないため、注意が必要です。
パートナーの扶養内で働くメリット・デメリット
扶養に入ることで受けられるメリットもあれば、デメリットもあります。
場合によっては、事業拡大を図るケースもあるでしょう。
事業の拡大によっては、将来的に扶養から外れることも視野に入れ、扶養内・扶養外それぞれの特徴をしっかりと把握しておきましょう。
扶養内で働くメリット
税務上のメリットとして、配偶者控除によってパートナーの税負担を下げられます。
また、社会保険上のメリットとして、自身の社会保険料負担なく健康保険や年金が受給できます。
扶養内で働くデメリット
扶養による恩恵を受けるためには、自営業で得られる収入に限りがあります。
税務上では133万円、社会保険上では130万円が所得の限度となります。
反対に、パートナーの扶養から外れて働くことのメリット・デメリットは以下の通りです。
扶養外で働くメリット
扶養の範囲内を意識することなく、積極的に売上拡大に向けた事業展開を図れる点です。
また、社会保険料の負担は生じますが、将来の受け取れる年金額が増えるなど、扶養内よりも手厚い保障を受けることができます。
扶養外で働くデメリット
扶養による税務上・社会保険上のメリットを受けられない点です。
税務上の扶養においては、年間所得が48万円を超えると配偶者控除が、133万円を超えると配偶者特別控除が受けられなくなるため、扶養から外れるとパートナーの税負担軽減のメリットが受けられません。
また、社会保険上の扶養においては、年間収入が130万円を超えると自身で社会保険料を負担しなければなりません。130万円÷12か月=108,333円なので、月の収入が11万円を超えると社会保険料の支出が発生し、手取りが減ってしまいます。
また、自営業によって得られる収入は安定的でないものが多く、その時々によって多かったり少なかったりすることがあります。収入が少なかった月や年があったとしても、社会保険料や住民税、所得税などは前年の所得に応じて決まり、毎月一定額を支払わなければならないので、支払いが厳しくなるタイミングが発生する可能性があります。
扶養から外れた場合の手続方法は?
最後に、扶養から外れた場合の手続方法について解説します。
事業が堅調に推移すれば、いつかは扶養から外れる必要がありますので、手続きは漏れなく行いましょう。
扶養から外す必要のあるケース
被扶養者が以下のような主なケースに該当する場合は扶養から外す必要があります。
- 就職や別居・死亡、離婚などにより被扶養者として該当しなくなった
- 収入が増えて、被扶養者の認定条件を満たさなくなった
- 仕送りをやめて、生計維持関係がなくなった
扶養義務者は速やかに被扶養者を扶養から外す手続きが必要です。
手続きに必要な書類
扶養から外すときに必要となる書類は、以下の通りです。
- 被扶養者(異動)届[減](健康保険組合から入手)
- 健康保険証
- 高齢受給者証、限度額適用認定証、特定疾病療養受療証(交付されている場合のみ)
- 雇用保険受給資格者証の写し(雇用保険の失業給付受給開始により被扶養者から外す場合のみ)
手続方法と提出先、提出期限
必要書類のうち、被扶養者(異動)届[減]は健康保険組合のホームページから印刷可能です。
必要事項に記入・押印したあと、扶養義務者が勤めている会社へ提出します。
提出期限は、事由発生から5日以内に健康保険組合着となっています。
手続きに不明な点があれば、健康保険組合へ問合わせましょう。
まとめ
この記事のポイントは以下のとおりです。
- 主婦(主夫)が自営業を始めても、配偶者の扶養に入ることは可能
- 自営業者の年間所得が48万円以下であれば配偶者控除が、133万円以下であれば段階的に配偶者特別控除が受けられる
- 自営業者の年間所得が130万円を超えなければ、社会保険上の扶養に入ることができる
扶養に入ることで、税制上や社会保険上のメリットが受けられるため、開業したばかりの事業コストを抑えるうえでは助かります。
ただ、扶養の範囲にとらわれてしまうと、事業拡大のチャンスを逃す可能性もあります。
扶養に入るか否かは、コストとのバランスを考えてベストな選択を検討しましょう。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
記事提供元:株式会社ぱむ