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早期退職、希望退職、選択定年、リストラ…どれも似たように聞こえますが、実はそれぞれ異なる制度です。違いが分からず、漠然と「早期退職」を考えていませんか?
本記事では、早期退職制度を中心に、それぞれの制度の違いを分かりやすく解説。メリット・デメリットはもちろん、気になる優遇措置や退職金についても詳しく説明しますので、早期退職を検討している方はぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
早期退職制度とは
早期退職制度とは、一定の年齢・勤続年数を超える社員に対して、自主的に退職できるよう企業が恒常的に募集をかける制度です。人員構成の見直しや経営合理化を目的に導入されることが多く、通常は退職金の上乗せや再就職支援などの優遇措置が設けられています。従業員にとっては、転職や独立など新たなキャリアを築くきっかけとなる一方、企業にとっては人件費の削減や若返りの促進といった効果が期待できます。
早期退職制度の特徴は、強制ではなくあくまで希望者を募る点です。整理解雇とは一線を画し、企業と従業員双方の合意に基づき進められるのが基本です。
類似する制度との違い
早期退職制度とよく似た退職制度として、以下のものがあるので、違いを解説します。
1.希望退職との違い

希望退職制度は、企業の業績悪化や事業縮小にともない、期間を定めて退職者を募集する一時的な人員削減策です。
早期退職制度との違いは、希望退職が企業主導の臨時的な人員整理であるのに対し、早期退職制度は多様な働き方やキャリア選択を支援する恒常的な人事制度である点です。
希望退職は特定の期間内に対象者を限定して実施される緊急的な措置であり、早期退職制度のように常時利用可能な制度ではありません。希望退職では通常、退職金の特別加算や再就職支援などの優遇措置が提供されます。また、企業の経営上の都合による退職のため会社都合扱いとなり、失業保険の給付開始が早く給付日数も長くなる場合があります。
2.選択定年制との違い
選択定年制は、従業員が主に60歳から65歳の範囲内で企業が提示する複数の年齢選択肢から定年年齢を自由に選択できる制度で、個人のライフプランに応じた退職時期の決定が可能です。
早期退職制度との違いは、選択定年制が法定定年年齢の範囲内での選択肢を提供するのに対し、早期退職制度は法定定年よりも早い時期での退職を前提としている点です。
選択定年制は定年制度の柔軟化を図る仕組みであり、従業員の多様な働き方に対応した制度として位置づけられます。選択定年制でも退職金の優遇措置が一般的に設けられています。ただし選択定年制は従業員の自発的な選択による退職のため自己都合扱いとなり、失業保険の給付に3ヵ月の制限期間が設けられる場合があります。
3.リストラとの違い
リストラは、経営不振を理由に会社が従業員を強制的に解雇する人員削減措置で、解雇の4要件(人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、解雇手続きの妥当性)を満たす必要があります。
早期退職制度との違いは、リストラが会社による一方的で強制的な解雇であるのに対し、早期退職制度は従業員の自由意思による任意退職である点です。
つまりリストラでは従業員に選択権がなく拒否できませんが、早期退職制度では応募するかどうかを従業員が自由に決められるということです。リストラは会社の一方的な都合による解雇のため会社都合扱いとなり、失業保険の給付開始が早く給付期間も長いですが、転職時に採用企業に説明が必要となる可能性があります。
早期退職制度のメリット
早期退職制度を利用する場合、どのようなメリットがあるのかについて、「企業側」「従業員側」それぞれについて見ていきましょう。
1.企業側
早期退職制度の導入は、企業にとって単なる人員削減にとどまらず、中長期的な経営戦略の一環として多くのメリットをもたらします。主な企業側のメリットとして、以下の点があります。
- 人件費が削減できる
給与水準の高い中高年層が退職することで、固定費である人件費の圧縮が可能です。浮いた資金で、新規事業やDX投資、人材育成に回すなど、資源配分の最適化が図れます。 - 若手の登用による組織の新陳代謝が図れる
早期退職によって空いたポストは、若手や中堅社員の抜擢や登用の機会となります。世代交代が進むことで、組織の新陳代謝が図られ、新たな発想や挑戦が生まれやすい職場環境づくりにもつながるでしょう。 - 社会的批判を回避しやすい
整理解雇と異なり、自主的な応募を前提とする早期退職制度は、従業員との摩擦を最小限に抑えると同時に、外部からのネガティブな評価を回避できます。円満退職という形をとることで、企業ブランドや株主からの信頼維持にも効果があります。
2.従業員側
従業員にとって、早期退職制度は、単なる「退職」ではなく、人生の新しい選択肢や価値をもたらす転機となる可能性があります。従業員が早期退職をおこなうメリットは主に以下の3点です。
- 割増退職金が支給される
従業員が早期退職を選択するメリットのひとつは、通常より割増の退職金が支給される点です。退職後の生活資金や次のキャリアに向けた備えとなります。まとまった資金を確保できることで、セカンドキャリアの選択肢が広げられることが期待できるでしょう。 - 再就職支援とキャリアの再構築が期待できる
多くの企業では、早期退職者向けにキャリアカウンセリングや転職支援を用意しています。これにより、年齢に関係なく、従業員は新たな職場や職種への挑戦が可能となります。専門性や経験を活かした第二のキャリア形成が現実的となるでしょう。 - 自主的な選択により心理的な安心感
リストラのような強制退職ではなく、自身の意思で選ぶ希望退職であるため、精神的な負担が少なく、ポジティブに将来設計を進めることが可能です。自ら選ぶという主体的な姿勢が尊重される点も大きなメリットです。
早期退職制度のデメリット
一方で、早期退職制度には企業側・従業員側の双方にとってデメリットも存在するため、その導入や利用にあたっては慎重な判断が求められます。
1.企業側
早期退職制度は人員整理の手段として有効ですが、企業にとっては以下のようなリスクや負担も伴います。
- 代替できず生産性の低下の恐れがある
早期退職者の業務をすぐに代替できない場合、現場の混乱や業務効率の低下を招く恐れがあります。特に業務の中核を担っていたり、専門スキルを持っていたりする従業員が多数退職した場合、その穴を埋めるには時間とコストが必要です。そのため、生産性が大きく損なわれる恐れがあります。 - 退職金の割増による費用の増加
費用の増加も、企業側のデメリットのひとつです。早期退職者に対して企業は、通常の退職金に加えて特別加算がおこなわれることが多く、企業側は一時的に多額の費用の増加が発生します。計画的な資金準備ができていないと、キャッシュフローのひっ迫や、他の投資資金への影響が出る恐れがあるかもしれません。 - ノウハウや組織文化の喪失
長年企業で働いてきた従業員が大量に退職すると、現場に蓄積されたノウハウや顧客との信頼関係などが一気に失われるリスクがあります。このような目に見えない資産の喪失は、数字には表れにくいものの、企業の中長期的な競争力に影響を与えかねません。
2.従業員側
従業員にとって早期退職は、自由なキャリア選択のきっかけにもなる一方で、以下のデメリットがあります。
- 再就職の困難さと収入の不安が残る
特に50代以上では、再就職の難易度が高くなります。年齢的な制約に加え、前職での経験がそのまま通用しないこともあり、希望通りの職種や待遇に就くことは容易ではありません。結果として、収入の大幅な減少や長期的な生活不安に直結するケースもあります。 - 退職金が目減りする
一時的に多額の退職金を受け取っても、その資金で今後の生活を支えるには十分でない場合があります。今後の支出を計画的に行わなければ、将来の生活資金が不足し、また投資や起業に失敗すれば金銭的に大きなダメージを負うリスクがあるので注意が必要です。 - キャリアの成長が止まる恐れがある
早期退職することで、従業員としての成長の機会が断たれてしまう恐れがあります。本来であれば、新たなポジションやプロジェクトを通じて得られる経験やスキル向上のチャンスがあったかもしれません。早期退職後に明確な目標やキャリアプランがない場合、次のステップが描けず、結果としてキャリアが停滞してしまう恐れがある点には注意が必要です。
退職金はどれくらいもらえるの?

会社を退職する際に支給される退職金ですが、その金額はどれくらいでしょうか。勤務年数や制度の違いによって大きく差が出るため、事前に把握しておくことが重要です。
厚生労働省が発表した「令和5年就労条件総合調査」によると、定年時および早期優遇における平均退職金額(勤続 20 年以上かつ 45 歳以上の退職者)の平均退職金額は以下の通りです。早期優遇の方が、定年時における退職金より多いのがわかります。[参考1]
【退職者1人平均退職給付額(勤続 20 年以上かつ 45 歳以上の退職者)】
学歴等 | 定年 | 早期優遇 |
大学・大学院卒 (管理・事務・技術職) | 1,896万円 | 2,266万円 |
高校卒 (管理・事務・技術職) | 1,682万円 | 2,432万円 |
高校卒 (現業職) | 1,183万円 | 2,146万円 |
参考1:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」
政府は、早期退職優遇制度の退職一時金の割増率の状況についても公表しています。令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)における「早期退職優遇制度の退職一時金の割増率の状況」は以下の通りです。[参考2]
【早期退職優遇制度の退職一時金の割増率の状況】
年齢 | 平均割増率 |
45歳 | 95.0% |
50歳 | 65.7% |
55歳 | 47.9% |
参考2:総務省統計局「統計で見る日本 民間企業の勤務条件制度等調査 / 令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査) / 統計表」
公表されている資料では、45歳では自己都合退職時に支給される退職金一時金の約2倍を早期退職金としてもらえることとなります。
退職時における平均金額や相場に関心のある方は、「退職金の平均金額・相場はどれくらいになる?企業や勤続年数別に紹介」もご覧ください。
早期退職の優遇措置について
早期退職をすれば、従業員は優遇措置が受けられます。以下では、優遇措置が受けられる主な4点について解説します。
1.退職金の割り増し
早期退職制度では、通常の退職金に加えて「割増退職金」が支給されるのが一般的です。これは制度利用を促進するための優遇措置であり、企業によって年齢や勤続年数、役職などに応じて加算額が異なります。
割増金は一時金として支払われ、老後資金や再就職までの生活費に充てることが可能です。企業によっては、退職金規程とは別に特別加算規程を設けて対応する場合もあります。
2.再就職の支援
早期退職制度では、退職後の不安を軽減するために「再就職支援」が用意されていることが一般的です。具体的には、専門のキャリアコンサルタントによる面談、履歴書作成や面接指導、求人情報の提供などが含まれます。
企業が外部の再就職支援会社と連携するケースも多く、年齢や経験に応じたきめ細やかなサポートが受けられます。新たなキャリアに踏み出すうえで心強い制度といえるでしょう。
3.有給休暇の買い上げ
早期退職者の中には、有給休暇を消化しきれなかった人もいるかもしれません。その場合、有給休暇の買い上げが可能です。有給休暇は通常、労働者をリフレッシュさせるために設けられているため、有給休暇の買い上げは原則禁止されています。しかし、退職時に残っている有給休暇は例外的に認められています。
4.特別休暇や勤務免除
早期退職者に対し、通常の有給とは別に特別休暇が与えられたり、勤務が免除されたりするケースがあります。退職前に転職活動や引き継ぎ準備を円滑におこなえるよう配慮されており、精神的余裕を生み出します。制度の内容や休暇日数、給付の有無は企業によって異なりますが、円満退職の後押しとして用意されることが多いです。
まとめ
早期退職制度は、自身の意思で退職時期を選べる制度です。希望退職やリストラなどとの違いを理解したうえで、メリット・デメリットを把握することが大切です。企業によって退職金の割増や再就職支援など優遇措置が異なるため、制度内容をよく確認し、納得のいく選択をしましょう。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
宮本 建一(みやもと けんいち)
マネーライター。銀行・消費者金融・信用組合の勤務を経て独立。融資経験・FPの知見を生かし、各種サイトで主に資金調達、不動産関連記事の執筆を行う。金融専門誌への寄稿、金融機関行職員向けの通信講座教材執筆経験あり。2級ファイナンシャルプランニング技能士、AFP、金融内部監査士
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ