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住民税は地方自治体の重要な財源であり、特別徴収と普通徴収の2つの方法で納税されます。そのうち、給与から天引きされるのは特別徴収です。退職や転職する際は、時期によって住民税の扱いが異なります。
今回は住民税の仕組みや天引きのタイミング、計算方法について解説します。また、節税する6つの方法についても解説しますので、住民税節税の参考にしてください。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
住民税とは?
住民税は、私たちの身近な暮らしを支える税金で、住民や会社が納める地方税の1種です。ここでは、住民税の仕組みや所得税との違いなどについてわかりやすく解説します。
1.住民税の仕組み
住民税には、都道府県民税と市町村民税の2種類があり、まとめて住民税と呼ばれています。均等割と所得割から成り立ち、均等割は一律の金額、所得割は前年の所得に応じて決まります。[参考1]
集められた住民税は、地域の公共施設の運営やインフラ整備、教育などの行政サービスに使われ、住民の生活を支えています。[参考2]
参考1:国税庁「税の学習コーナー 税の種類と分類」
参考2:総務省「個人住民税」
2.所得税との違い
住民税と所得税は、どちらも所得に対して課される税金ですが、納める先や課税対象となる所得期間、課税方式が異なります。
住民税は、都道府県や市区町村に納める地方税であり、前年の所得に対して課税されます。一方、所得税は国に納める国税であり、その年の所得に対して課税されます。[参考3]
また、税金の決定方法も異なり、住民税は自治体から通知される賦課課税方式ですが、所得税は自ら所得を申告する申告課税方式です。[参考4]
参考3:財務省「身近な税 Q&A~身近な税について調べる~」
参考4:国税庁「申告納税制度」
3.納付対象者
住民税の納付対象者は、毎年1月1日時点で、市区町村や都道府県に住所がある人です。ただし、所得が低いなど、一定の条件を満たす人は、住民税が課税されません。これを非課税制度といいます。
非課税となるかどうかの判断は、その人が扶養している(養っている)家族の数や所得金額などの条件によって決定されます。[参考5]
参考5:総務省「個人住民税 納税義務者」
住民税はいつから天引きされる?
住民税の支払方法には、多くの会社員があてはまる「特別徴収」と個人事業主などが当てはまる「普通徴収」があります。それぞれの徴収方法の具体的な開始時期を見てみましょう。
1.特別徴収の場合(主に会社員など)
特別徴収とは、会社員などが毎月受け取る給与から、会社が住民税をあらかじめ差し引いて、代わりに市区町村へ納税する方法です。[参考6]
例えば、会社員のAさんが働いている会社には、市区町村から「特別徴収税額通知」が届きます。会社はこの通知に基づき、Aさんの毎月の給与から住民税を天引きし、Aさんに代わって市区町村に納税します。つまり、会社が従業員に代わって住民税を納めるのが特別徴収なのです。[参考6]
参考6:総務省「個人住民税 納付の方法」
2.普通徴収の場合(主に個人事業主など)
普通徴収とは、個人が直接市区町村に住民税を支払う方法です。まず市区町村が納税者の所得を確認し、支払うべき税額を計算します。そして、市区町村から納税者に対して「納税通知書」という書類が送られてきます。納税者はこの通知書に記載された金額を支払います。[参考7]
例えば、自営業でレストランを経営している方や、フリーランスとして活躍している方、個人で農業を営んでいる方などは、この普通徴収で住民税を納めます。納税の際には、銀行やコンビニエンスストア、スマートフォン決済アプリなどを利用して、市区町村に税金を納めます。[参考7]
参考7:総務省「個人住民税 納付の方法」
退職・転職している場合はどうなる?
退職や転職のタイミングによって、住民税の納付方法や手続きが変わってきます。特に退職時期が、年度の前半か後半かで大きな違いが生じるため注意が必要です。また、次の就職先が決まっているかどうかによっても対応が異なってきます。ここでは、それぞれのケース別に詳しく説明していきましょう。
1.退職した時期が1月〜5月の場合
1月から5月に退職する社員の住民税の支払いについては、会社側が特別徴収という形で一括処理をおこないます。具体的には、退職する月の最後の給与または退職金から、残りの期間分をまとめて差し引きます。[参考8]
例えば、2月末に退職する場合、通常であれば2月から5月までの4ヵ月分の住民税を納める必要がありますが、これらを2月の最後の給与から一括で天引きされることになります。
参考8:金融広報中央委員会 知るぽると「税金の手続き」
2.退職した時期が6月〜12月の場合
6月から12月の間に退職した場合、住民税の支払いは、市区町村から送付される納税通知書に基づいて、自分で納付する普通徴収が基本です。[参考9]
例えば、9月に退職した場合、10月以降に前年の所得に対する住民税の納付書が届き、自分で金融機関やコンビニエンスストアなどで支払います。
ただし、退職時に希望すれば、退職金や最後の給与から住民税をまとめて徴収してもらう「特別徴収」を選択することも可能です。
参考9:金融広報中央委員会 知るぽると「税金の手続き」
3.転職が決まっている場合
転職先が決まっている場合は、転職前の会社から「給与所得異動届出書」を発行してもらいます。4月末で退職し、5月から新しい会社で働く場合、4月中に前の会社から書類を受け取ります。転職先に書類を提出することで、転職後もこれまで通り、給与から住民税が天引きされる特別徴収を継続できます。
4.転職が決まっていない場合
転職先が決まっていない状態の場合、住民税の支払い方法は普通徴収となります。この場合、市区町村から納税通知書が自宅に郵送されてきます。納税者はこの通知書に記載された金額と期限に従って、自身で納付する必要があります。
住民税を節税する方法
住民税は、iDeCoやふるさと納税などの制度を利用したり、各種控除を上手に活用したりすることで、節税が可能です。ここでは、住民税を節税するための6つの方法を解説します。
1.iDeCoに加入する
iDeCoは、積み立てた掛金が全額、小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、住民税の節税効果が期待できます。例えば、毎月2万円をiDeCoで積み立てると、年間24万円の所得が控除の対象となり、翌年の住民税が2万4,000円軽減されます。iDeCoに加入した場合の掛金の所得控除による税控除額[参考10]は、iDeCoの公式サイトでシミュレーションすることが可能です。
他の人がiDeCoの掛け金をどのくらいにしているか詳しく知りたい方は、「【iDeCo】47都道府県、iDeCoを活用しているのはどこ?月々の掛金は?」もご覧ください。
参考10:iDeCo公式サイト「かんたん税制優遇シミュレーション」
2.ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は、自分の故郷や応援したい地域への寄付を通して、住民税を効果的に節約できる制度です。例えば、10万円をふるさと納税で寄付した場合、自己負担額の2,000円を除いた98,000円が所得税と住民税から控除されます。つまり、実質2,000円の負担で、 税金の控除を受けながら返礼品がもらえるお得な制度です。 [参考11]
ふるさと納税について詳しく知りたい方は、「【確定申告終了】ふるさと納税した?いくら寄付して何をもらった?」もご覧ください。
参考11:総務省「ふるさと納税の概要」
3.親を扶養親族に含める
親を扶養親族に含めることでも、住民税を節税できます。扶養控除の額は、70歳未満の一般扶養親族であれば33万円、70歳以上であれば38万円、さらに、70歳以上で同居している場合は45万円となります。[参考12]ただし、扶養控除が認められるのは収入が一定以下の親に限られますので、注意しましょう。
参考12:東京都 主税局「個人住民税」
4.医療費控除を受ける
医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円を超える場合(または所得の5%を超える場合)に、超えた金額を課税所得から差し引くことができる制度です。[参考20]住民税は所得に連動して計算されるため、所得が減れば、その分だけ住民税の負担も軽減されます。
対象となる医療費には、本人や本人と生計を一にする配偶者や親族の通院や入院の費用、薬代、医療器具の購入費などが含まれます。[参考13]医療費控除を受けるには確定申告をする必要があるため、忘れずにおこないましょう。
参考13:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
5.生命保険料控除を受ける
生命保険料控除は、1年で支払った生命保険料の一部を所得から差し引いて税負担を軽減できる制度です。生命保険料だけでなく、介護保険や個人年金保険の保険料も控除の対象となるため、複数の保険に加入することでより大きな控除を受けられます。[参考14]
2012年1月1日以後に締結した契約(新制度)であれば最大で住民税7万円が所得から控除[参考15]されます。生命保険料控除を受けるには、自営業者なら確定申告のときに、会社員であれば年末調整のときに、必要な書類を提出しましょう[参考16]。
確定申告をする際は、該当欄に記入し、支払金額などを証明する書類(電子証明書等の印刷書面を含む)を添付または提示してください。[参考17]
参考14:東京都 主税局「個人住民税」
参考15:生命保険文化センター「新制度と旧制度の控除の種類・控除限度額」
参考16:生命保険文化センター「生命保険料控除の手続き(新・旧両制度共通)」
参考17:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
6.青色申告の青色申告特別控除を適用する
個人事業主の方であれば、青色申告特別控除を利用することで住民税を節税できます。青色申告特別控除は、一定の要件を満たした上で、日々の収入や経費をきちんと帳簿に記録して確定申告することで、最大65万円もの所得を控除できる制度です。[参考18]
ただし、青色申告をおこなうためには、複式簿記など一定のルールに従って帳簿を作成する必要があるため、事前にしっかりと準備しておく必要があります。
参考18:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
まとめ
今回は、住民税の仕組みや天引きされる時期、退職・転職している場合の住民税の扱いについて解説しました。
住民税が天引きされるのは、主に会社員の場合です。毎月受け取る給与から自動的に差し引かれます。一方、個人事業主などは、納税通知書で指定された納期限までに、住民税を自分で納付する必要があります。
また、住民税は、会社に勤めているかどうか、退職・転職した時期がいつなのかによって納税方法に違いがあるため注意しましょう。
なお住民税は、iDeCo、ふるさと納税、扶養控除、医療費控除、生命保険料控除、青色申告特別控除といった制度を上手に活用することで、支払う額を抑えることができます。まず自分が活用できる制度を調べてみることをおすすめします。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
馬場正裕(ばば まさひろ)
FPライター。ファイナンシャル・プランナーとして、各種サイトでマネー記事やコラムの執筆を担当した。消費者金融や外貨預金、家計管理、不動産関連の記事を執筆。FPとしての知識を生かした記事執筆の活動を行っている。2級FP技能士
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ