ヒートショックはどう対策する?起こる原因や今からできる対策・予防法

ヒートショックはどう対策する?起こる原因や今からできる対策・予防法

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寒い日の温かいお風呂は至福のひとときですが、そこには「ヒートショック」という危険が潜んでいます。しかし、正しい対策を知っていれば、そのリスクは大きく減らせます。この記事では、ヒートショックが起こる仕組みから、今日からできる7つの具体的な予防法まで、わかりやすく解説します

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

ヒートショックとは

「ヒートショック」とは、暖かいリビングから寒い浴室へ移動するといった、急激な温度の変化で血圧が大きく上下する現象です。この血圧の急激な変動がめまいや失神、さらには心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる事態を引き起こす原因となることもあります。

このヒートショックは誰にでも起こりえますが、特に高齢者でリスクが高まる傾向にあり、注意が必要です。2023年に公表された厚生労働省の調査によると、一年間に浴槽での不慮の事故(溺死・溺水)で亡くなった65歳以上の方は6,541人にのぼり、これは同年代の交通事故による死亡者数(2,116人)の約3倍にもなります。[参考1]背景には、ヒートショックが関係しているケースも少なくないと考えられています。ヒートショックの危険性を正しく理解し、予防することが非常に大切です。

参考1:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計 表番号上巻5-31不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(特定階級)別死亡数

ヒートショックが起こりやすい時期や場所

ヒートショックは、一年の中でも特に気温が低くなる冬場に起こりやすくなります。11月から4月にかけて入浴中の事故が最も多くなるとされており、この時期は特に警戒が必要です。

特に、ご家庭の中では以下のような場所で注意が必要といわれています

  • 浴室
  • 脱衣所
  • トイレ

最も注意が必要なのは「浴室」です。暖かいリビングから移動した際に、暖房が効いていない寒い脱衣所で服を脱ぎ、さらに冷え切った浴室へ入るという一連の行動は、体に大きな温度差を与えます。

また、深夜や早朝に利用することが多い「トイレ」も、ヒートショックが起こりやすい場所の一つです。暖かい布団から出て冷え切った廊下を歩き、暖房のないトイレに入ると血圧が上昇しやすくなります。このように、ヒートショックは「家の中の温度差」がある場所であればどこでも起こりうる、ということを意識しておくことが大切です。

ヒートショックが起こりやすい人の特徴

ヒートショックは誰にでも起こりうるものですが、特にリスクが高まりやすい方の特徴がいくつかあります

  • 65歳以上の方
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病がある方

一般的に、高齢になると体温を調整する機能が低下し、血圧の変動に対応しにくくなります。また、高血圧などの持病は動脈硬化を進行させやすく、血圧の急な変化が体に大きな負担をかけます。

これらの特徴に当てはまる方はもちろん、今は健康に自信があるという方も、冬場の暮らしではヒートショックへの備えを意識することが大切です。

入浴時のヒートショック対策や予防法について

ヒートショックは入浴時に最も起こりやすいため、日々の入浴習慣を見直すことが最大の予防になります。ご自身とご家族の安全を守るために、今日からできる対策を始めてみましょう

1.入浴する前に脱衣所や浴室の温度を温めておく

ヒートショックを防ぐ最も重要な対策は、暖かい部屋と寒い場所との「温度差」をできるだけなくすことです。入浴前には、脱衣所や浴室をあらかじめ暖めておきましょう。手軽な方法として、脱衣所に小型の暖房器具を置いたり、入浴前に浴槽のふたを開けて蒸気で浴室を暖めたりするのが効果的です。

2.お湯の温度を低めに設定する・長風呂をしない

熱いお湯は心臓に負担をかけるため、お湯の温度は41℃以下、湯船に浸かる時間は10分程度を目安にしましょう。少しぬるいと感じるくらいの温度でも、体を芯から温めることは十分に可能です。長時間の入浴は避け、体を温めたい時は半身浴などを活用するのもおすすめです。

3.体をお湯に慣らしてから入る

湯船に浸かる前には、必ず「かけ湯」をして体をお湯の温度に慣らしましょう。心臓から遠い足先や手先から始め、徐々に体の中心に向かってお湯をかけていきます。この一手間が、血圧の急上昇を和らげ、体を温度変化から守ります。特に寒い日には、この「かけ湯」をいつもより丁寧におこなうことを意識してみましょう。

4.お風呂からでる時はゆっくりと

浴槽から出る際は、急に立ち上がらないようにしましょう。温まった状態から勢いよく立ち上がると、血圧が急に下がり、めまいや立ちくらみを起こして転倒する危険があります。手すりや浴槽のへりを掴み、一呼吸おいてからゆっくりと立ち上がりましょう。

5.食べた後・お酒を飲んだ後は時間を置く

食事の直後や飲酒後の入浴は血圧が変動しやすく、ヒートショックのリスクが高いため、避けましょう。食後は少なくとも30分以上、飲酒した場合は酔いが覚めるまで(目安として2時間以上)は入浴を控えるか、ぬるめのシャワーで済ませましょう。

6.入浴前と後に水分を摂る

入浴前後の水分補給も重要なヒートショック対策の一つです。入浴中は意外と多くの汗をかくため、脱水症状を防ぐことが大切です。体内の水分が不足すると、血液がドロドロになり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。入浴の前と後にコップ一杯程度の水や麦茶を飲む習慣をつけましょう。脱衣所にあらかじめ飲み物を用意しておくなど、忘れずに水分を摂る工夫をしましょう。

7.入浴時の声かけも重要

同居するご家族がいる場合は、入浴前に「お風呂に入ってくるね」と一声かけることを習慣にしましょう。簡単な声かけをするだけで、家族は入浴している人の様子を自然と気にかけることができ、万が一、中で倒れてしまった場合に発見が遅れるのを防ぎます。日頃のコミュニケーションが、家族の命を守ることにつながります。

ヒートショックは入浴時以外も注意が必要

ヒートショックの原因となる「急激な温度差」は、入浴時以外にも潜んでいます。例えば、暖かいリビングから暖房のない廊下やトイレに行く際も注意が必要です。

まずは手軽にできる対策として、廊下やトイレに小型のヒーターを置いたり、便座に暖かいシートを使ったり、床にマットを敷いたりするだけでも体感温度は大きく変わります。より根本的に家の中の温度差を小さくするには、断熱性を高めるリフォームなどを検討してみるのも一つの方法です。

また、ゴミ出しなど少しの時間であっても、冬場に外へ出る際は油断できません。マフラーや手袋、暖かい靴下などを着用し、体を冷えから守ることが大切です。暮らしのあらゆる場面で体を急な温度変化にさらさない工夫が、ヒートショックの予防につながります。

まとめ

ヒートショックは、急激な温度差が引き起こす血圧の変動が原因です。特に冬場の入浴時はリスクが高まりますが、日々の少しの工夫でその危険は大きく減らせます。脱衣所や浴室を暖めて温度差を小さくし、41℃以下のぬるめのお湯に短時間浸かるなど、安全な入浴を心がけましょう。こうした日々の少しの工夫が、ご自身と大切なご家族を守ります。まずは一つでも実践できそうなことから、始めてみませんか。

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

佐藤 静香(さとう しずか)
FPライター。損害保険会社に20年勤務後、Webライターとして活動中。保険会社での経験とFPとしての専門知識、また子育て中の母である目線を活かし、難しいお金の話を分かりやすく解説することを得意としている。金融系メディアを中心に、保険、資産形成、家計管理などの記事執筆を担当。2級FP技能士

記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ